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ローカルな価値を育むための建築と組織

建築学科の卒業制作で肴町を対象に取り組んだ、宮城大学の柴田紗季さんにインタビューさせていただきました。柴田さんは、宮城大学で建築やデザインを学びながら、定禅寺通を中心として屋外で開催されるGREEN LOOP SENDAIにキャストとして参加しています。卒制制作のリサーチや設計から見た肴町は柴田さんの目にどんな街に見えたのでしょうか。

-- 卒業制作で肴町を対象に集合住宅のあり方を提案したきっかけはなんですか?
柴田 建築の卒業制作は建築をテーマに考える場合が多いのですが、私の場合はエリアをまず選んで、そこで何ができるかを考えようと思いました。2019年の夏から『GREEN LOOP SENDAI』(以下GLS)のキャストとして関わっていて、DAYOUTのことは知っていたのですが、直接のきっかけは「肴町デザイン会議」(本冊子前号で紹介)を聞きに行ったことでした。そこで公園の北側にマンションが建つらしいという話を聞いて、エリアの魅力を高める集合住宅を自分なりに考えようと思いました。

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-- 卒業制作のリサーチをする中で、肴町はどういうエリアだと思いましたか?
柴田 私は生まれてからずっと仙台にいるんですけど、DAYOUTに訪れるまでは肴町に入ったことがありませんでした。街中というと、仙台駅前とアーケード商店街と国分町のイメージが強かったのですが、初めてこの辺りを歩いて、意外と小さくて個性的なお店が多くて、仙台にもこんなエリアがあるんだというのが印象的でした。

-- 卒業制作の提案の内容について教えてもらえますか?
柴田 肴町をまず分析した時に、高層マンションや広瀬通のような大きな空間を「A面」、人間のスケールや小さな単位で空間を「B面」と解釈して、その二つの面をどう繋げるかということを考えました。市場の要請であるマンション開発と、DAYOUTのような取り組みを共存させる提案です。具体的な設計としては、マンションのヴォリュームを住居単位で細かく操作したり、マンションの1階部分を街に開いて、街路と一体的に使えるように公共空間も対しても提案をしています。また、こういった取り組みには、まちづくり事業を持続的に行い、地域からも信頼され、ディベロッパーとも協議できる組織が必要で、そういった組織のあり方についても提案しています。

肴町マンションパース2-3

-- 柴田さんが考える街のおもしろさってどんなものですか?
柴田 ローカルなお店が集まるエリアに魅力を感じます。卒業制作に取り組む上で参考にしたのが渋谷のキャットストリートです。渋谷と原宿の間でガチャガチャしていて、そこにしかないお店がたくさんあって、通りを歩いている人も個性的で、キメキメで写真を撮ってて、そういう尖った雰囲気がおもしろいし、かっこいいと思います。

-- 大学でまちづくりの組織論や不動産のことを学ぶ機会は少ないと思いますが、柴田さんの提案はそういう視点が入っているのが印象的です。どういう課題意識があったんですか?
柴田 一つは、ナショナルチェーンが並び、全国どこにいっても同じような街並みになってしまうことへの違和感です。もう一つは、そもそもエリアに空きテナントがないことです。個性的なテナントが入るためには面積が小さく出店しやすいスペースを用意する必要があって、さらに既存の不動産仲介の仕組みに加えて、地元で小さく商売をしている人たちと顔の見える関係で繋がるまちづくり組織が必要だと思いました。

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-- 以前からまちづくりに興味があったんですか?
柴田 まちづくりに関心を持ったのは最近です。大学に入る時はインテリアデザインを学びたいと思っていて、この4月からは東京の内装設計の会社に就職します。まちづくりに興味を持ったのは、大学3年生の時に取り組んだ設計課題がきっかけです。大町を題材にしたその課題では、エリアの魅力を高めるということがテーマで、その手段として設計をしてもいいし、まちづくりの仕組みを考えてもいいという課題でした。空間と運営の仕組みを一緒に考えるのは初めてでしたが、おもしろかったです。

-- GLSのキャストでの活動はどんな経験でしたか?
柴田 GLSには「これがやりたい」という具体的な狙いはなく飛び込んだんですが、会場のマップやお店の紹介をする看板をデザインしたりして、大学で学んだことを活かし、大学の外のコミュニティで、実際の事業の中で実践できたことに手応えを感じました。

-- 卒業制作を振り返って、肴町がどんなエリアになったらいいと思いますか。
柴田 いろんな建築家の話を聞く中でおもしろいと思ったのが、設計者が意図しない魅力が使い手によって発掘されるという話で、街でもそういう関係性が面白いと思います。経済合理性だけで作られるまちづくりに違和感はあるけど、小さなまちづくりだけでは都市の経済に影響を与えることは難しい。肴町でもその二つの側面が共存する仕組みや建築のあり方を模索していくことが大切だと思います。

-- 大きな開発と小さな活動をいかに共存して両立させるか。そして新たな役割を担う組織の必要性を改めて感じました。今日はありがとうございました!

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