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ツアーの移動中も大事な時間です

 ツアーが始まると、自分が力士になったような気がします。その理由は、身体が肥えていくから、ではありません。
力士の受けるインタビューの中に、「今場所の目標は?」というのがよくあります。10勝以上です、なんて答える力士はまずいません。勝負の世界は勝算があるようで無いものだからです。
ガイドのツアーの日々も同じです。今日も明日もどんなトラブルが起こるかわかりません。
お客様が怪我をする、物を無くした、交通機関が動いていない、などなど限りなくトラブルは起こり得ます。
大抵の力士はこういいます。
「一日一日です。」
ガイドのツアーもまさにこの通り。日々ベストを尽くして、気がついたら最後の日になっている、そこに参加者の笑顔があるかどうかで結果が判明するのです。

この一日一日は、団体ツアーであれ個人客であれ同じです。この仕事をして17年になりますが、やってもやっても楽になる事はありません。
ガイドの背中にはいつも、お客様の期待とエージェントさんの期待が重くのしかかっています。その期待以上の働きをしなくては、プロフェッショナルとはいえません。

お客様方は100%、私より大きいので、いつも見下ろされる形で話をします。
一日目、「このガイドはどの程度知識があるのだろう、どの程度の英語を話すのだろう」と眼光鋭く上から睨んでいます。
そこで怯んではいけません。自信がなくても、自信たっぷりの笑顔で微笑み返しましょう。
気の利いたジョークを一つ二つ咬ますくらいの余裕があれば上等です。

 個人客で専用車がある場合です。
朝ツアーをスタートして、まず最初の目的地に向かう訳ですが、自己紹介をしてそのまま黙ってしまうのはいけません。乗り物に乗っている間もお客様はお金を払っているわけですから、黙っているのは基本的に仕事をしていない状態と見なされます。
初めてこの地に来て、初めてガイドと会ったお客様に伝えるべき事は山のようにあるわけでるから、喋り続けます。
この仕事を数十年やっている超ベテランガイドさんも言っていました。
「お客様の信頼を得る為、最初の30分は話し続けます。」と。
私はこれを一日中やるのが義務だと考えています。

現実的に一日中話しているガイドはお客様にとってどうでしょうか。
私は喜ばれると思っています。
個人客の場合で、皆様が眠ってしまっている場合はもちろん黙ります。
しかし、団体の場合には、ガイドが喋り続けていても寝る人は寝ますから、基本喋りっぱなしです。
そのしゃべくりの中に、品のいいユーモアを入れられたら、話し手としてお客様から合格がもらえると思っています。

云うのは易し、行うは難し、という事を書いて見ました。

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