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豊かさとは

私の家は経済的に恵まれていたわけではありません。

父は単身赴任で離れて暮らしていたので
幼稚園や小学校の行事に
父がいたことはありません。
家族で旅行に行った記憶もありません。

それでも
母は私と妹に寂しい思いをさせないよう
運動会に叔父を呼んでくれたり、
休みの日にはお弁当を持って
近所のアスレチックに連れて行ってくれたり、
貧しいながらも楽しく暮らせるよう、
いろいろと工夫をしてくれていました。

祖母と同居していたことも幸いして
学校から帰っても子どもたちだけ
ということはありませんでした。

祖母は、
あまり読み書きのできない人でしたが、
お料理がとても上手だったことを
覚えています。

春にはよもぎを摘んで
よもぎ餅を作ったり、
せりを摘んで天ぷらにしたり、
夕食のそば打ちを一緒にしたり、
もち米を炊いて一緒にお餅をついたり。

小学生の私にとっては
毎日が調理実習のような生活でした。


「豊かさ」
という単語を辞書で調べると

1、満ち足りて不足のないさま。
  十分にあるさま。

2、経済的に恵まれていてゆとりのあるさま。

3、心や態度に余裕があって
  落ち着いているさま。

4、量感のあるさま。

5、他の語について、
  基準・限度を超えているさま。

と書かれています。


田舎で生まれ育った私は、
東京への憧れが強く、
中学生のときに部活の大会で年に1回、
東京に行くことが楽しみで、
毎日の部活を頑張っていた記憶があります。

ただ道を歩いている人もみんなオシャレで
田舎の中学生には
全てがキラキラして見えました。

そんな私も
普通じゃない受験生活
(詳しくは「大学受験と娘の話」)を経て
高校卒業後、
都内で一人暮らしをし始めました。

受験が終わってすぐ
家電を買い揃え、引越し、
入学式には新しいスーツを買ってもらい、
新しい環境にワクワクする毎日でした。

入学式には母も来てくれて
受験生活がやっと報われた気がしました。

入学式が終わって、大学の授業が始まると
クラブやサークルの勧誘に
声をかけられるだけでドキドキして、
同じ学部の子と仲良くなって
学食でランチをしたりするだけで
大学生になった気になったりしていました。

ドキドキワクワクの毎日が過ぎて
授業が何回か進んでいったころ、
だんだんと周りを見る余裕ができてきて…
毎日キレイにお化粧している子、
ピアスをしている子、
ブランドの服、お財布、
カバンを持っている子がたくさんいることに
ふと気付いてしまいました。

もちろん一人暮らしの私に
みんなの真似をする経済的な余裕はなく、
嫉妬とか劣等感とかで補えるレベルではなく…
とりあえず、アルバイトを始めました。

でも、
授業の合間にアルバイトをしても
たかだか数万円しか稼げず、
ラクロスの道具や移動の交通費、
ユニフォーム代で
あっという間に消えていってしまいました。


大学を卒業して早20年。

バイトと部活三昧で過ごした学生時代、
私はバイトをいくつもかけもちし、
少ないバイト代でやりくりしていた私には
学生時代からいろいろなスキルが
身についていました。

バイトをたくさんしたことで
仕事の仕方だけでなく、
働く時のコミュニケーションの取り方、
相手の様子を見ながら、
うまく同意を得る方法、
授業、部活、バイトのスケジュール管理力。

限られたお金の中でやりくりすることで
身につけた、
節約方法や節約レシピ。

限られたお金で服を買うことで身につけた、
古着の取り入れ方や
ブランドのものとファストファッションの
組み合わせ方。

今の時代
「親ガチャ」という言葉がありますが、
これまでの人生
「ハズレた」と思ったことはありません。

むしろ、
経済的には恵まれていなかったことで
身につけたスキルはかけがえのないものです。

そして幼い頃に祖母から教わった
よもぎやせりの見分け方、
蕎麦やうどんの作り方は、
どんな料理本でも学ぶことのできない
我が家の大切なレシピです。


私にとって
「豊かさ」とは、

何かに満たされていることではなく、
経済的に恵まれていることでもなく、
他人と比較することなく、
自分らしく生きていける「心」をもって
自分の時間を楽しんでいける力を持つこと
だと思います。





【最後まで読んでいただき、ありがとうございました】

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