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なぜ統失 第6部 「長期入院編@3回目」⑪開放病棟の紹介。

前回の続き。

僕は3ヶ月に及ぶ閉鎖病棟での入院生活の後、
開放病棟に移る事となりました。

開放病棟は、この病院の最上階(7階)に設置されています。

一階へと続く非常階段の扉は鍵が開かれており、
許可を貰えば自力で下へ降りても良い事になっています。

エレベーターは閉鎖病棟と同じくカギがかかっており、
勝手に操作出来ない仕組みになっています。

ここは元気の無いお年寄りの患者さんばかりです。

足腰の弱っている患者さん達には、
階段で下へと降りて行く事はまず不可能でしょう。

仮に下まで降りたとしても、
ここは丘の上の病院なので、

急な坂を下って、市街地まで歩いて行くのは、
足腰の弱っている患者さんは不可能だと思います。

ここは、閉鎖病棟とは打って変わって、
騒ぐような患者さんもいませんが、

雑談を楽しむ患者さんも少なく、
病棟内に活気がありません。

ほぼ寝たきりか、
車椅子か手押し車のお世話になっている患者さんばかりです。

許可を取れば外出する事も可能なのですが、
そんな気力も起こらない人ばかりの様でした。

当時まだ30代前半だった僕が、
ここではダントツで一番の若手でした。

話が合う患者さんもおりませんし、
そもそも話しかけてくる患者さんもいません。

ここでも毎日読書をして過ごす事になってしまいました。

閉鎖病棟には無かったポットが設置されており、
自由にコーヒーやお茶を入れたり、
カップラーメンを作って食べる事が出来ます。

許可さえ下りればベッドの前の床頭台に、
自分専用のテレビを設置して貰うことも可能です。

しかしそのテレビを見るには、
病棟内で販売されているテレビカードという物を買わなければなりません。

昔の旅館のテレビの様に、
1000円で数時間しか見れない様になっていました。

ある患者さんは、

「わしはもうテレビが買えるくらいテレビカードにつぎ込んだ」

と嘆いていました。

僕も自分専用のテレビが欲しかったのですが、

主治医のアタオカ先生に、

「テレビを見ると寝るから駄目っ!」


と怒鳴られてしまうんじゃないかと思い、

許可を求めようとは思いませんでした。

ちなみにテレビは大広間にも設置されています。

閉鎖病棟のテレビは、
手の届かない高い所に付けられていましたが、

ここでは普通の高さのテレビ台の上に置かれています。

ベッドにテレビを設置している患者さんが多いので、
閉鎖病棟で頻繁に目にしたチャンネル争いも、
ここでは起こらない様です。

僕は大広間のテレビを見たかったのですが、
ヌシの様にテレビの前に居座って占領している患者さんがおり、

相撲みたいなお年寄り番組ばかりにチャンネルを回すので、
いつしかテレビを見ることも完全に諦めてしまいました。

いざこざを起こしてしまうと、
すぐに閉鎖病棟に戻されてしまうとみんな分かっているせいか、

ここでは些細な言い争いも、
めったに起こる事は有りませんでした。

続く。












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