なぜ統失 第6部 「長期入院編@3回目」⑱決まっていた筈の退院。
前回の続き。
今回は、ある可哀想な、
同室の患者さんの事について語りたいと思います。
見た感じは、
50代後半〜60代中盤くらいの男性の患者さんです。
中肉中背で、
足腰はまだしっかりしており、
午前中の畑仕事に参加されていました。
ある時、
数日後に退院する事が決まったらしく、
嬉しそうにみんなに挨拶をして回っていました。
その患者さんと一緒に部屋でくつろいでいると、
看護師さんがやってきました。
その患者さん担当の、
中年おばちゃん看護師さんです。
僕と関わる事は殆どありませんでしたが、
傍から聞いていても、
いやみったらしい事を良く言っていたので、
あまり良い印象はありません。
その患者さんと今後の事について話に来た様です。
悪く言えばお説教をしに来たのです。
ネチネチと入院中の態度の事や、
そんなので外の世界でやっていけるのかと、
嫌なことを長々と話していました。
どう考えても差別的な発言も見受けられました。
その患者さんは、
うなずきながら大人しく話を受け入れている様でした。
看護師さんが去ってゆくと、
途端に無口になり、
機嫌の悪そうな表情を浮かべていました。
暫く時が流れ、
晩御飯の時間となりました。
例のごとく2階の食堂まで移動し、
食堂が開くまでの時間、
みんなで廊下に一列に並んで待機していました。
すると例の患者さんが、
先程の事をずっと溜め込んでいたのでしょう。
突然廊下の壁を、『ドンッ! 』 と足で蹴り上げました。
すると、
すぐに側に居た看護師さんが駆けつけてきて、
取り押さえられてしまい、
何処かへ連れて行かれてしまいました。
恐らく、閉鎖病棟の保護室(牢屋)へと連れて行かれたのでしょう。
という事は、
決まっていた退院も取り止めになってしまった筈です。
この事の事情を知っているのは僕だけだったのかもしれません。
明くる日、
その患者さんと仲が良かった患者さんが、
「◯◯さんはどこにいったんかね?」
と看護師さんに尋ねていました。
看護師さんは、
「◯◯さんならもう退院しましたよ」
と言っていましたが多分嘘でしょう。
仲の良かった患者さんは、
「ああ、そうかねぇ〜」
と納得したような笑みを浮かべていました。
続く。
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