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挫折について娘と夫と話して気づいたこと

この前、神戸で娘と会った時のこと。

私の娘は大学進級に2回失敗して、まだ1年生のままでいる。
私はこれを挫折と判断していた。
喫茶店で娘とその事についての話になった。

娘は進級2回失敗したことを挫折と思っていなかった。
挫折ではなく親不孝と表現した。
私は不思議だった。
娘にとっては挫折じゃないんだと。

帰宅して夫にそのことを話した。
すると、夫も「挫折ではない」と言った。
私は2度驚いた。
いったい挫折とは何ぞや⁉️

仕事や計画などが、中途で失敗しだめになること。また、そのために意欲・気力をなくすこと。

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逆に私は親不孝者と捉えておらず、挫折と捉えていた。
ここに娘と私の考え方のズレが生じていたわけだ。
挫折と捉えていたから、どうにかして立ち直ってもらいたいと思って色々気にしていたわけである。
途中からは「本人のことだから仕方ない。本人の問題だ。」と頭を切り替えたけど。

夫は、「挫折と思うのは本人が思うことで、他の人が思う事ではない」と言った。
本人が挫折と捉えてなかったら、それは挫折ではないわけである。
確かにそうだ。
勝手に私が挫折と思っていたわけである。

夫はまたまた私にこう言った。
「トリコちゃんは今まで順調にきたから、少しレールに外れたら、それを挫折と捉えるんじゃないかな。」と。
「就職もちゃんとできたんだし。」と。

私は就職氷河期の時代の人間だ。
高校受験の失敗なし。
看護学校の受験は落ちまくったけど、なんとか浪人せず専門学校に入ることができた。
高校の時も専門学校の時も落第せずに予定通り卒業できたし、就職もできた。
国家試験にも一発で合格できた。
確かに他人から見たら挫折していない。

結婚は「人生の墓場だ」と思っていたから結婚せずに仕事と遊びに明け暮れていた。
すると、父が私に「お願いだから、普通の人生を歩んでくれ」と言った。
私は「はて?普通の人生とは何ぞや?」と思った。
父の言う普通の人生とは「生まれて、結婚して、子供を産んで、育てて死ぬ」ことだった。
私の時代は「25歳で行き遅れ」だったからな。
29歳で結婚した私はかなりのBBAだったわけである。
いわゆる、駆け込み婚。
父は私の結婚行き遅れに対して、挫折と捉えていたのかもしれない。
私は結婚を目標にしていなかったから挫折とも親不孝とも捉えていなかった。
娘と私のズレはこんな感じだったのかもしれない。
何となくわかってきたぞ。

結婚するぞと決めたら、あっちゅー間に御縁のある人に出会って半年で結婚した。
ここもある意味順調だ。
結婚しても子どもはすぐには欲しくなかった。
でも、周りは許してはくれなかった。
「結婚したのに妊娠しない女」と言うレッテルをいつの間にか貼られた。
妊娠できない女の地位はかなり低かった。
そろそろ子どもが欲しいなと考え始めても、なかなか妊娠しなかった。
周りからは責められる。
不妊治療の開始である。
開けたくもない股を病院で開ける屈辱。
やっと妊娠して出産。
やっと普通の女をやり遂げたと思ったら、「2人目はまだか?」という重圧。
また不妊治療開始。そして、流産。
夫が脱落。
私は2人目を出産したかったけど、しぶしぶ脱落。
この時点で「2人目が欲しい」は「2人目が普通にいる母親になりたい」という目標に置き換わっていたように思う。
他人が望む女性像になることが目標になっていたように思う。

出産と流産が私の初めての挫折だったように思う。
でも、この挫折は私が望んだ挫折ではなかったんだな。
私は世間一般的な日本人女性の生き方のレールにいつの間にか乗せられて、勝手に挫折を味わっていたんだな。

「己が薄い」ってこの事だったんだな。
やっと辿り着けたんだな。

癌になったことも私にとっては挫折と捉えていた節がある。
私は職場には隠さなかったけど、その他の人達には隠そうとした。
癌になったことは、生きるレールから外れることであり、挫折と捉えたからだろう。
でも、人間のレールからは外れていない。
人間はいつかは必ず死ぬからである。
生きとし生けるものは皆んな必ず死ぬ。
看護師で多くの死を見てきたのに、そんな捉え方をしていたんだな、私は。

人間のレールからは外れることはできないけれど、他人が敷こうとするレールからは自分の意思で外れることは今からでもできる。
己が薄い人生を歩んできた私は、これから新しく自分のレールを作っていく必要がある。
ちゃんと見つけて作ることができるだろうか?
自信はないけれど、これからは癌になった自分を恥じることはないと思う。
また癌になったとしても恥じはしないと思う。

ここまでの考えに辿り着かせてくれたことに感謝しかない。



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