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ひと

 少し哲学的なタイトルですが、そういうことでもありません。
 先日の昼、よく行く中華屋に入りました。 
「長い間、街でやっている中国人店主の中華屋」         
という感じのところです。お客さんは、ほぼ男です。

 常連というほどでもないけれども、頼むメニューは決まっていたので、店主が
「いらっしゃいませ」
と言って水を持ってきてくれたとき、間髪入れずに
「肉野菜炒め定食ください」
と伝えたのですが、店主から次のように言われました。
「今日はガスが壊れちゃって、あれしかできないんです」

ラーメン つけめん からあげ定食

壁には、そう書いた紙が貼ってありました。
 僕は少し「しようがないなー」と思いながら
「からあげ定食ください」
と言いました。
 時刻は、ちょうど正午を過ぎたころ。僕より後から店に入ったお客さんには、次々とラーメンが提供されていきます。
 からあげは時間がかかるのだろうな、と思いながら、店へ来るお客さんを見ていると、合計10名ちょっとやってきたでしょうか。その中で 「えっ、そうなの」という感じで帰ってしまったのは2人のみでした。他の人たちは、壁の紙の中から選んでいました。(もう少し選択肢はあって、みそラーメンとワンタンメンも選べたっぽいです。)

 印象に残ったのは、「みそラーメンと半チャーハン」と言った後、女の店員さんから例の説明を受けて、すぐに「じゃあ、みそラーメン大盛りで」と言った、がたいがいい男のお客さんでした。しぶしぶ注文した、という感じはありませんでした。
 そして、年配のお客さん。「しかたないなー」という様子で、とても「良い」苦笑いを浮かべ、すぐにラーメンを注文していました。もしかしたら過去にも同じようなことがあったのでは、と窺われる対応でした。
「お客さんに受け入れられているんだな」
と感じました。 

 僕は、肉野菜炒めや、レバー野菜炒めをよく頼みます。少し油は多いですが、強い火を感じる、とても「生き生きとした味」と言ったら良いのでしょうか、動的な味がします。

 それに、店主が笑顔で「いらっしゃいませ」と言って迎えてくれるのが、とてもいいです。こちらも自然と、いつもよりも元気に
「肉野菜炒め定食ください。ご飯少なめで!」
と言っています。

 昔、医者に聞いたことがあります。「〇〇さん、コンビニの弁当ではなくて、お店で火が入ったものを食べましょう」
その先生は、漢方薬も処方していたので、そのような考えだったのでしょうが、私は少し、非科学的だな、と懐疑的に思っていました。
 でも、その中華屋で食事を取ると、
「ああ、先生は正しかったんだ」
と感じます。

 もちろん、味も大事です。でも、人柄も、とても大切だと思わせてくれた出来事でした。

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イチオシのおいしい一品

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