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森田修史トリオLIVE at OVER THE RAINBOW     森田修史(Ts) 小松伸之(Ds) 冨樫マコト(B)

真夏に伊那谷を沸かせたメンバーがクリスマスに戻ってくる。常にこの瞬間のきらめきに向かい続ける世代を超えた四人による、身体と心に熱く響く2020年代のJAZZ。
森田修史の手になる、この森田修史4tet伊那谷クリスマスツアーのみごとなボディコピーである。そうして森田はさらにiPhoneによる定点カメラ撮影で、巧みな動画を示してくれた。音楽と合わせてYouTubeにアップするという。このマルチな才能を前に私は自分を恥じたのであるが、サクソフォンプレイにとことん突出するということの意味を改めてしみじみと感じもしたのだった。
ピアノの大口純一郎がコロナ陽性で欠席するという事実を、これでステージ上の平均年齢がぐっと下がると笑わせながら告げたあと、ステージは森田の愛するシカゴのテナーマン、クリフォード・ジョーダンのナンバーから始まった。ミディアム4ビート森田のリフから始まるAABAの楽曲。冨樫はこの日エレキベースを中心にプレイする。テナーソロは奔放ながら、インコードに終始する。続いてのベースソロは教科書通りのインコード/インフォームでない。Ds16バースから8バース、4バース交換と変遷、最後のブレイク、正確な打点と、ジャック・ディジョネットをふっと感じさせる柔軟なリズムとエアの感覚。グリップが時と場合により自在に動き、最後はアメリカンで力強く曲をしめた。続いて森田オリジナル「予感」。AABB'のJAZZ Walts,テナーでリフから。ソロ、驚異のフラジオ混ぜながら不思議なトーン感覚で曲は続く。やがてBソロ、私にはどこか不安定に感じる進行上で、でも音数がたっぷりのソロ。エアたっぷりのDsサポート。さらにたっぷり空間を使ったDsソロ。森田作曲「止まらない夜」ドラムソロで始まる。リフ森田、ミディアム4ビート。デュナーミクが面白い。森田のソロは不思議な空間、Ds,Bとソロが回り、Dsのみごとなキメで曲が終わる。次はBフューチャーのスタンダード。特殊なセーハをしていると見えたが、休憩時間に確認すると、コードとほしい音のヴォイシングの結果、自然に湧き出てきたものだとのこと。やはり天才肌だ。インテンポで歌う。森田が入る。小松に音楽的な幅広い教養を感じる。森田の音域の広さ!私は涙ぐんだ。最後冨樫のブレイク。ファースト最後は森田の「ロスタイム」。森田でリフ、冨樫早くて複雑なラインでバッキング。B、Dsうまい!森田次第に高潮して音数増やす。冨樫いい!リハとは別人のよう。変則的な小節交換の後、回せと小松に合図する森田、ノリまくる小松。
セカンドは冨樫が当オーナーのウッドベースを持つ。状態がよく、ツアーにもっていったベーシストがいるほどだという。おなじみのクリスマスソング。テナーバースソロからリフ。前半はストレート、後半に森田らしい色っぽいフェイクがつく。ベースソロもストレートに入るが、やがてすこぶるよく歌っていく。たっぷりと歌いこんだあと森田へ。かつての森田のようなアウトへのフェイクは見られない。たっぷりとクリスマスムードを楽しんだ後、もう一曲スタンダード。森田のリフ、ふっとロリンズを思い出したりもしたが、そこは何より森田節だ。冨樫のウッドベースがとてもよく、小松のたっぷりしたサポートも光る。そう、たっぷりとしたバップが楽しめた。Bソロ、ハイポジ行くが高音弦にはいかない節度、しかし奔放。最後4バース交換2コーラス、8バース1コーラスで、リフ、コーダ。3曲目はアフリカを想った森田の「ムーチョボニータ」Dsソロからアフリカのリズム。アフロビートといっていいのか?森田スタカート気味に跳躍して遊ぶ。Dsお見事!ベースソロはコード楽器だった。ミニマルっぽくソロが終わり、ベースの同一音型に支えられて言葉豊富なドラムソロ。森田入りリフ、曲は唐突に終わった。そうしてバラードは森田21歳の作、当時「感謝のバラード」現称「豊作のバラード」。森田ソロ、小松マレット、冨樫エレベに持ちかえる。サブトーンに聴こえるほど森田が丁寧に歌う。サビから豊かな音で... このなつかしさは何だろう。まるで森田と青春をともにしたものであるかのように、音楽が胸に迫ってくる。Bソロ、しみじみと泣き、時のたつのがいとおしい。森田かぶせて、Dsマレットの素晴らしくいい音で曲がしまる。最後はニューヨークのピアニストのオリジナル。おしゃれな16、変形のサンバビートから、テナー。そしてB. 実にエレベらしいソロ。楽器の音域を目めいっぱい使って、コードを幅広くとる。いい!テナー入る。マウスピースがメタルであることを忘れるような柔らかないい音!狂乱のコーダ!
アンコールはおなじみのスティービーのナンバー、手拍子に夢中でメモを取るのを忘れてしまった。
ステージのあと、食事をともにしながら私は思った。一線を超えたミュージシャンはみなスポーティブなのだな、と。そうして楽器を演奏すること、音楽することが好きで好きでたまらないのだな、と。そんな熱さが強い紐帯になるのだ。

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4あなた、Ryusuke Horiguchi、鴇田昭裕、他1人


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