2024北海道西部旅行記その4
4日目:室蘭~函館~湯の川温泉
起床後、午前8時ごろ東室蘭駅へ。
この東室蘭駅、アパホテルがあったから宿泊に選んだだけの場所だったが、白老や登別、それから洞爺湖に観光に行くための拠点として非常に有用だと思う。特急の「北斗」や「すずらん」も止まるから、ここに宿を取っておけば朝ごちゃごちゃする必要がない。ビジホが多いのもそれが理由なんだろう。
駅に着いて、忘れずに切符を受け取る。どうも北海道で特急に乗るときは物理的な切符が必要のようだ。えきねっとで特急を予約するときにもいろいろ注意書きが出ていた。やり方さえ覚えてしまえば簡単だが、チケットレスに慣れているといつかうっかり忘れてしまいそうだ。
特急は東室蘭8時16分発、函館までには2時間半弱かかって10時40分ごろ到着する。ボーっと過ごすには長すぎるし、何かに集中するには短すぎる時間だ。昨日の疲れもあったので二度寝することにした。
内浦湾をぐるっと沿うように列車は進む。長万部を過ぎ、大沼を過ぎた辺りで頭がはっきりとしてきた。それまでずっと自然豊かな景色だったのが、俄然都会の色を帯びてくる。道南の中心都市、函館はもうすぐだ。
五稜郭駅を過ぎ、「北斗」は定刻どおり函館駅に到着した。降りるなり人の数の多さに驚く。土曜ということもあるが、今年の映画『名探偵コナン』の舞台は函館で、スタンプラリーをやっていると車内のアナウンスでも流れていた。それでこの人の多さなのだろうか。普段と比べようがないので分からないが、改札近くの観光案内所に寄ったら長蛇の列ができていた。どうもスタンプラリーの台紙を受け取る列のようだ。
そんな人波を避けつつ外に出ると、まず目に飛び込んできたのは「函館朝市」の標識。旅行に行く前に函館で何をしたらいいか聞いて回ったら、朝市でイカを食えという答えを得られた。もうお昼だし、何より函館駅の目の前なのですぐに行ける。寄らない手はない。
実際に近づいて見てみると、朝市という名前はついているが普通の建物で、中や外にいくつもの飲食店が並んでいるだけだった。もっと海沿いに開かれた形であって魚介類が並び、漁師や仲買人の発する威勢のいい掛け声が響いているものだと思っていたが違うようだ。しかし昼時ということもあって客は多く活気づいている。私が入ったのは駅二市場というところで、こじんまりとはしているが店の数は多い。そしてどの店も誇らしげにメニューのサンプルを並べている。ネタは主にイクラ、それからイカが多かった。イクラが入るとかなり値段が上がる。それにイカ刺しは時価という店も多かった。その言葉を出されると庶民である私は躊躇してしまう。
しかし、出費は抑えたいので高価な品は避けて……などと考えている間にもどんどん客が店に入っていく。ちらっと中をのぞくと、もう満杯の店もあるようだ。意を決して1つの店を選び、中に入った。
入った店の名前は「味鮮まえかわ」という。セットの定食が手ごろなので選んだ。注文したのは「HIG定食」というもの。最初見たときはなんじゃそりゃと思ったが、Hはホッケ、Iはイカ刺し、Gはグラタンの略のようだ。イカも食べられるし、海鮮の入ったグラタンというのもおいしそうだ。
ついでにビールも頼んだ。北海道といえば当然サッポロのクラシックだ。昼間のビールは強者の特権。ありがたくいただくことにする。
うまい。納得のうまさ。ホッケやイカはもちろん、付け合わせの佃煮などもいい仕事をしている。最後に食べたグラタンもおいしかった。
なんだ函館よ、いいところじゃないか。たった一食だけで満額回答を得てしまった。よっしゃ、これから気合い入れて街を回るとするか。
行き先をどうしようか迷ったが、南へ歩いてみることにした。
この方面には赤レンガ倉庫や旧函館区公会堂、それに函館山がある。函館山は今日は寄らないが、それ以外の旧跡を回る予定だ。とはいっても初めての場所、どう歩いていいかよく分からない。ひとまず海沿いを歩けば確実だろうと思って大きな船のある埠頭へ歩みを進めた。
こちらの船は摩周丸。元青函連絡船だ。青函連絡船と聞くと昭和生まれの方々は『津軽海峡・冬景色』を思い浮かべる人も多いだろう。凍えそうなカモメが実際にいたかは知らんが、青函トンネルができるまではこうした船で青森と函館を結んでいたのだ。
そして私はこれを普通のフェリーだと思い、スルーしてしまった。記念館になっていると知っていたら入ったのに……。
しかし逆に考えると、普通のフェリーだと思えるほど保存状態が良いというのはすばらしいと思う。連絡船が廃止になったのは1988年だから、そのときから数えても36年は経過している。今調べてみたら就航は1965年。御年60歳近いのにこの秀麗さは驚くばかりだ。
摩周丸から海沿いに南へ歩く。魚市場の大きな建物を通り過ぎたら、だんだんとにぎやかな雰囲気とともに赤レンガの倉庫が見えてきた。
正式名称は「金森赤レンガ倉庫」。横浜と同じく中身はショッピングモールになっている。ビヤホールやコンサートホールもあるようだ。その中で良さげなマグカップを見つけて欲しいと思ったが、今荷物になるものを買うわけにはいかないと断念した。海の街らしい鮮やかなブルーが印象的なものだったが、まあ仕方がない。
続いて向かったのは八幡坂。
ここ、有名なフォトスポットだというので寄ってみたのだが、なかなか撮るのに苦労した。
坂が途中から石畳になっていて風情のある雰囲気なのだが、いかんせん地元の人にとっては普通の道路だ。なのでバンバン車が通る。その合間を縫うようにして道路の中央に陣取り写真を撮るわけだが、ただでさえ時間制限があるうえに角度のある坂だ、ちょこちょこ移動するだけでもしんどい。さらに言うと坂は結構長く、どういう角度で撮ったらきれいになるのかよく分からなかった。実際に坂の上から撮った写真は平地にしか見えない。これは私の腕が悪いだけだが。
そもそも「きれいな坂の撮り方」を研究しに来たわけじゃないだろと思い直してまた歩き出した。
お次は旧函館区公会堂。これは『るるぶ』で見たときから行こうと思っていた場所だ。特徴はなんといっても見た目。これに一発ノックダウンさせられた。
八幡坂を上りきってから西に向かう。この辺は住宅街というより観光地じみていて、おしゃれなカフェだったりメロンパンの店などもあった。そうした店を通り過ぎると緑のある場所に出る。小さな坂を上り、左手にひときわ目を引く建物が見えてきた。
重要文化財・旧函館区公会堂。
摩周丸もすごかったが、こちらはより年上の1910年生まれ、御年114歳だ。この色合いも竣工当時のものを再現したらしい。青灰色の壁に黄色の縁取り。一見奇抜に見えるが、実際に見てみると品があるように感じる。
中にも入れるというので入ってみた。1980年代の修理以降、最近だと平成30年から令和3年まで休館し保存修理をやっていたというが、中身はとてもきれいに整えられ、往時の姿をより強く思わせるものになっていた。どう撮っても画になるような感じだ。
この公会堂は「3館共通入場券」というものを購入して入った。これは近くにあるいくつかの旧跡や資料館のうちいずれか3館に1枚のチケットで入れるというもので、お得だと思って買ったのだ。なのでこのあとも旧イギリス領事館や函館市文学館をじっくり見させてもらった。
旧イギリス領事館では函館が国際貿易のため開港してからの歴史を追い、文学館では函館ゆかりの作家を知ることができた。なんだかもう、この時点で函館にどっぷり浸かったような気がする。函館山と五稜郭というメインイベンター2か所をまだ残した状態でこれだ。深いな函館。そして海沿いなので開放感があって歩きやすいのもいい。
いろいろ回ったあと、函館駅ではなく函館駅前駅に移動した。
函館駅前駅は路面電車の駅だ。函館市街を通るほかに、五稜郭や湯の川温泉までその線路は延びている。乗ってみると案外快適で、しかもSuicaなどICカードも使えるから便利だ。
夕食付きのプランで予約したため、ホテルのチェックイン時間が17時とビジホより早い。予約したのは湯の浜ホテルというところで、最近リノベーションしたという部屋を取ったら非常に快適に過ごせた。窓からは海も眺められ、ワーケーション向きに作られたのか作業スペースも広い。そして夕食も豪華だった。この日はスマホを食堂に持っていくのを忘れたので写真は撮れなかったが、サーモンやタコ、マグロなどのネタで勝手丼も作れるし、ライブキッチンではジンギスカンと塩ラーメンも出してくれる。この内容で、しかも土日の利用で2泊3万円は安い。まだ外国人観光客に知られていないのか、騒がしくないのも大きなメリットだ。
温泉は透明で、大浴場がナトリウム・カルシウム塩化物泉、露天風呂がナトリウム塩化物泉と2種類の泉質がある。露天は仕切りなく海を見渡すことができ、潮風を受けながらのんびり浸かるのは最高だった。
そんなこんなで旅行4日目、函館の夜は過ぎていく。明日はいよいよ五稜郭、そして夜には函館山で夜景を見る予定だ。
明日も楽しみだ、早く寝ることにしよう……と思ったが、この日は夜更かししてしまった。というのも作業スペースが快適すぎて思った以上に筆が乗ってしまったためだ。書いていたのは2日目の旅行記だった。終えてから時計を見たら1時を過ぎていた気がする。旅行に来てまでワーカホリックになってどうすんだと思いながらベッドに入った。幸い五稜郭はここから近いから朝は早くなくていい。それが唯一の救いだ。
4日目の反省点。
さんざん歩き回ってから思ったのだが、路面電車をもっと有効活用すればよかった。あれなら函館駅から公会堂方面に行くのも楽だったのに。まあ初手で海沿いに出てしまったのが間違いだったか。運動になったから別にいいけど。
あと飲食店が充実しすぎだ。夕食付きのプランで宿泊したことは後悔していないが、そうなると朝と昼の2回しか外食のチャンスがなくなる。せっかくの函館なのでもっといろいろ食べ歩きしたかったが、また次の機会にしよう。
次回へ続く。
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