実はコーヒーが苦手
頼んだコーヒーが来る
飲んだら苦味がぐるぐる
砂糖やミルクを入れて、くるくるスプーンでかき混ぜる。
それでも苦くてカップを揺らして、時計の秒針がくるくる回っていく。
◇
コーヒーに砂糖とミルクをかき混ぜながら悩み事をする女性。そこは喫茶店で他の客は絵になるなぁと視線を送っていた。
しかし、女性の心の声は、「苦い!!」だった。実はコーヒーは飲んだことがなく、これが初めてであった。
砂糖とミルクを入れても、慣れない苦さに口の中はニガニガ、頭はグラグラ、周りの視線は何故かキラキラしていて複雑だったのである。
残すのは嫌だし、周りの視線も冷たくなりかねない。ゆっくり口に流し込んでは、苦味が引いていくのを待ち、また気合いを入れて優雅に見えるようにコーヒーを飲んでいく。
ようやく飲みきり、笑顔がこぼれる。
天使のほほえみのようなイメージなど想像させていたようだった。
(よし。退散。退散)と思ったら、店員さんが来て、「サービスです。お代わりのコーヒーをどうぞ」とナチュラルに女性の前に苦いコーヒーを置いた。嫌味も邪気もない笑顔に愕然とした。
深~く息を吸い込んだ後、優雅さを保ちながら一気に飲み干した。
そして、「ありがとう」と上品に伝えて、きらびやかな長財布をチラッと見せてお会計へと誘導した。
その女性は、喫茶店から優雅に出た後、すぐさま近くの自動販売機で甘そうなミルクティーとシュワシュワのコーラを選んだ。
そして、交互に交互に飲んで空にする。
すると「苦不味い……」と本音がでた。
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