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【トー横】について本気で考えた大人はいるのか?

本日はトー横(界隈・キッズ)を中心に社会問題となっている、(主に)10代の少年少女が集まる場所について考えていきたいと思います。

※今回はトー横で数ヶ月過ごしていた方に行ったインタビューを通して記事を書いています。


トー横とは?

東京・歌舞伎町には10代の少年少女たちが集まる通称“トー横”と呼ばれる場所があります。

その多くは家庭などに居場所がない子どもたちであると報じられており、SNSを通して10代だけでなく幅広い人に知られる様になりました。

トー横では、路上での飲酒が多くSNSを通して様々な動画が拡散されています。中には危険行為や迷惑行為もあり、その事が社会問題であると各種メディアでは報じられています。

トー横の成り立ち

元々は自撮り界隈と呼ばれる、自撮りが好きな男女が待ち合わせとして使っていました。

未成年が多く、歌舞伎町で飲酒が出来ないため路上でお酒を呑むという文化が生まれました。

その後、幾つかの派生を経て名称はトー横界隈と呼ばれる様になり現在の形となりました。

トー横キッズと呼ばれ出したのはSNSで話題になると同時に蔑称として付けられており、現在はトー横界隈、キッズ共に混同しており区別化は難しいですが、基本的な理解としてはトー横界隈が正式な名称です。

※記事内ではインタビューに答えて頂いた方々に対する敬意も含めて、蔑称は用いずトー横と表現させて頂きます。

年齢層は10代-20代を中心としていますが、30代のサラリーマンや更には50代のグループもあるなど幅広い年齢層が見られます。

またトー横は1つのグループで構成される訳ではなく個々の属性により幾つかのグループがあります。

数年滞在するメンバーもいれば、数ヶ月で来なくなる、出入りを繰り返すなど様々なパターンがあります。

トー横のヒエラルキー

トー横には明確にヒエラルキーが存在します。
序列が高いのは恵まれた容姿を持つ人が最も高く位置しています。

続いてはSNSで発信力が高い人(ツイートやゲーム実況、音声配信など)

そして金銭的に余裕がある人です。
稼ぐまでのプロセスは重要ではなく、どれだけお金を使う事が出来るかが重要視されています。

また、一般的に異性への下心を持つだけのような人はサークル内に馴染みづらい様で、メンバー間での情報共有は常にされています。

第一章:トー横と事件、日本の社会

トー横では日々、事件が勃発しています。
喧嘩や不純異性交遊、また金銭目的の援助交際や詐欺など様々な事件が報道されています。

SNSではこの報道を切り取り罵詈雑言が飛び交っていますが、私はこの事件とトー横、そして日本の社会について強い結びつきを感じます。

長くなりましたが今回はそれらの関連性について考察していきたい思います。

第二章:若者がトー横に集まる理由

インタビューの中見えてきたのは、集まる理由が決して【居場所がない】だけではないという事です。

元にインタビューに応じてくれた方々は、家族仲も比較的良好であり、私がイメージする人物像とはかなりギャップがありました。

動機としては【楽しそうだから】と話される事が多くありました。

SNSを通して新たな世界を知ることは若者だけでなく多くの人にとって楽しいことであることは既に共通理解を得ていると思います。

彼ら彼女らは好奇心に行動力がプラスされ実際にトー横を訪れたと話しています。

洋画を見て海外文化に触発されディスコに通っていた1970年代と動機としては変わりない様に感じました。

ただ、実際に居場所がないと話す人も中にはいる様で、家庭環境や職歴、金銭的な豊かさが少なく居場所を求める様にトー横を訪れた人もいる様です。

特にメディアが大々的に報道された直後、地方からそう言ったある種の駆け込み寺の様に若者達が殺到しました。

その様な事情も含めて楽しそうだから来た人と居場所を求めて来た人、それを観察する大人が入り乱れているのが現在のトー横です。

第三章:マズローの欲求五段階説

ここでは今後の考察を展開するにあたって必要となるマズローの欲求五段階説について説明していきたいと思います。

既にある程度知ってる方は飛ばして頂いて構いません。

欲求五段階説とは、心理学者アブラハム・マズローが「人間は自己実現に向かって絶えず成長する生きものである」と仮定し、人間の欲求を5段階に理論化したものです。

人間には5段階の「欲求」があり、1つ下の欲求が満たされると次の欲求を満たそうとする基本的な心理的行動を表しています。

生理的欲求
生きていく為に必要な本能的な欲求です。
食欲や排泄欲、睡眠欲がこの中に相当します。

ほとんどの生き物がこの次元で生活していますが、一部の生物や人間は生理的欲求をベースとして様々な欲求を抱えています。

安全欲求
安全な暮らしへの欲求です。
そこには金銭的な豊かさなど生活を維持していくための要素も含まれています。

不慮の事故や病気などで安全が脅かされた時に根源的な恐怖に直面するのもこの欲求が影響しています。

社会的欲求
友人や家庭、社会から受け入れられたい欲求を指しています。

集団への所属意識などもここに当てはまります。
人間は国、血縁、宗教、思想、会社、地域など様々なコミュニティを形成しています。

もし社会的欲求が損なわれてしまうと、人は孤独感や疎外感を感じてしまいます。

承認欲求
他者から尊敬されたい、認められたいと願う欲求になります。

この際の承認とは他者承認だけでなく、内面における自身からの承認も加わります。

具体的に説明すると、SNSで満たされる他者からの評価だけでなく、結果が出るまでに努力した過程など自分自身を承認出来るプロセスが必要になります。

承認欲求が叶わないと人は劣等感、無力感を感じることになります。

自己実現欲求
自分の世界観や人生観、思想に基づいて、なりたい自分になるという欲求になります。

今までの欲求を満たす中で確立されたアイデンティティーを踏まえて【確固たる自身】を築き上げたいと思う様になります。

トー横についてはこのどの位置の需要を満たしているかが重要になると私は考察しました。

第四章:トー横と事件の関連性

人は犯罪に走る際に理性がブレーキとなり、多くの場合踏みとどまる事が出来ます。

ただトー横絡みの時間では、逮捕される事を理解していない、というよりは意識していない、非常に非合理な犯罪が多く見られます。

そこがより深みへと到達するヒントになると考えました。

前述の通りトー横は決して優しい環境ではありません、暗黙のヒエラルキーが存在しており弱肉強食の世界です。

容姿・発信力・金銭力など所謂成功者だけが上に登れる世界です。

そこに【居場所がない】子供達が入り込む事こそが事件を引き起こすと考えています。

居場所がない、つまり社会的欲求が満たされない状況を指します。

若者達が居場所がない地元を抜け出し、新たなコミュニティに入る事で一次的に【居場所】を手に入れる事が出来ます。

また自身を〇〇界隈と称する事はある種の承認に繋がります、所属欲が満たされる事で精神的にも人は安定します。

その様な性質からもトー横は居場所としての機能を満たしています。

しかし、その居場所は市場力学によって新規参入を歓迎していますが、本質的に仲良くなりたい守りたいといった目的とは違います。

既存のメンバーとしては、新たに自分に刺激をもたらす存在、もしくは自身の地位を高めるためのアイテムとして新たなメンバーを歓迎します。

その為、知り合いに犯罪や炎上が起きたとしても諌めることはなく、笑っていられる関係性が継続しています。

なので、居場所がない若者達は新たに居場所に居続ける為にはヒエラルキーを登る、上位の役に立つ必要があります。

その為、容姿を変化させる整形、SNSでの炎上や援助交際での金銭獲得など事件性が高まっています。

インタビューに応じてくれた方々もトー横に通わなくなったきっかけは、どんどんと過激化していった事が大きな理由であると話していました。

その事からも、ヒエラルキーを通した過剰なインフレ、社会的欲求を守るための生存戦略の結果が、事件へと結びついたと考える事が出来ます。

一般的には承認欲求を満たすためインパクトある行動をしていると語られる事が多いですが、あくまで承認欲求はヒエラルキーが高い人が求めるものです。

そして、犯罪へと走らせるのは社会的欲求が高い、ヒエラルキー下層に位置するメンバーであると解釈する事が出来ます。

所属は人の安心材料になります。
自分は〇〇だからは免罪符として機能します。
戦争犯罪は典型的な例で、人として到底あり得ない行為も所属する組織のためであれば人は行うことが出来ます。

結論として、生存するための戦略を所属という理由がブレーキを壊し、実行してしまう事が犯罪を増加させる要因になったと考えました。

第五章:現代社会の影響と責任

続いて、現代社会の影響について書いていきたいと思います。

社会的欲求が満たされない原因は読んで字の如く社会にあります。

日本の幸福度指数は年々低下しており、生産性も横ばい、失われた30年と呼ばれています。

貧困家庭・1人親・非正規労働者は年々増加しており若者にとっては未来が見えない時代です。

更に追い討ちをかけるのがインターネットによる情報の民主化です。

インターネットによって現在の日本、そして自身の位置が明確になってしまいました。

同い年で遥かに多くのお金を稼ぐインフルエンサーや、一芸に秀でた人気者が数多く見られます。

それによって今の若者が考える普通の暮らしのベースが年々高くなっています。

普通のベースが上がる事=社会的欲求が満たされなくなっていく一因となると考えます。

10年前、20年前と暮らし自体は変化せず、むしろ豊かになっているとさえ解釈できる現代でも理想像が高くなる事で結果的に自尊心を失い、社会的欲求は満たされなくなります。

その結果【居場所がない】と呼ばれ、トー横に足を運ぶ、最悪の場合犯罪行為に手を染める状態になると考察します。

また、トー横に存在するヒエラルキーは確実に一般的な社会にも存在します。

ただ老獪な大人はあくまで表面化させずに適応していくことに慣れている為、大きな問題には至っていません。

決してトー横にだけ蔓延る風習などではなく、古くから日本にあるヒエラルキーです。

形は変えても上司に媚を売る、得意先の顔を立てる、暗黙のルール、新人への過度なプレッシャーなど全く同じ事が行われています。

そういった意味ではトー横は今の社会を反映しているだけで、他人事ではありません。

むしろ、若いうちに経験する事で人生観としてはただの社会人を遥かに凌駕する可能性もあります。

そうした背景を無視して、不良が集まる場所である、社会不適合であるなどレッテルを貼る、一般社会人こそ、問題があると私は考えます。

また近年の犯罪の増加には多くの大人が関わっています。援助交際にしても、薬物汚染にしても必ず成人が関わっています。

トー横はあくまで場所に過ぎません、各地大都市にはいくつも同様の界隈が存在します。

同時多発的に生まれるこの現象をただの子供の悪ふざけで終わらす事は出来ません。

初めは好奇心による一つの文化

第三者が拡散した【居場所がない】奴ら

【居場所がない】人がそれを求めてやって来た

その結果強烈なヒエラルキーに内包され

自分の未来・命も顧みず【居場所】を求める

第三者はそれを画面越しに笑う

そして新たな【居場所かない】若者が生まれる

総論:あなたの居場所は何処ですか?

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