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雨夜の月

"好きだった人"からの電話繋ぎますかで、早1時間。彼の寝息を雨音と共に聴きながら煙草の火をつけた。

時計の針が丁度午前0時を回った頃、珍しく今日は早く寝るとLINEの通知。待ち侘びていないと心の中では思うけれど毎夜趣味に没頭して不規則に返ってくる返事を待ちながら度々自分の送った内容と共に繰り返し眺めている自分がいる。

電話がしたい、なんて送った自分のLINEのせいで会話が途切れるのが嫌で送信取り消しをした。見ていても既読を付けず気分で返すような猫みたいな人で、電話もLINEも得意としない様な人であった。

その数分後作業をしてたと返ってくるもんだから、やっぱり消してよかったと思うと同時に返ってこないと思った自分の思い込みかもしれない思想と行動で虚しくなった。あと数分待てば声が聴けたかもしれないのに、と思ったけれど臆病が勝ったのは事実である。

自分の好きな、得意とする話だと楽しいのか2時間ほどテンポの良いやり取りが続いた。
そろそろ眠りますがと言われ、引き止める訳にもいかないのでそっかと素っ気ない返事を送る。

電話繋ぎますかとその言葉で気分が高揚した。
最近で一番嬉しかった。恐らく消してしまったLINEを見ての言葉だったのだろう。
いきなりどうしたんですか?と電話で問うてみたものの、いや話していたのにいきなり寝るのも申し訳ないと思ってと彼なりの返答。普段はいきなり返って来なくなるのできっと見てはいるもののほぼ寝落ちに近いしおはようもなく次の日また会話の返事が返ってくる。

あの時の事、からの彼の行動に対する疑問も聞いてはみたけれど考え過ぎ、気まずい人と電話なんかしないですよ〜と茶化され深くは聞けずじまいだった。会いたいし話したいという私の言葉に嘘か本当か分からない眠そうな反応ではぐらかされてしまった。

私の気持ちも彼の気持ちも分からない。遊ぶ様な人ではないと彼の友人からも、私もそう思っている。けれど本当の本心は良くも悪くも分からない。ただLINEをしているだけで、電話をするだけで、会える事で嬉しいと思ってしまう私がいるのは間違いではない。私のこの気持ちは雨夜の月のようであった。

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