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【ルナル・エピック プロローグ】

10年戦争が始まる1年ほど前…
ロベール・ベルリオース・シスターンの沿岸の町が海賊らしき集団に襲われる事件が相次いだ
被害はそれだけではなく、周辺海域を航海している客船や貨物船、漁船に至るまで及んでいた
3国はそれぞれ調査を行なうが襲撃を行なった集団に対する認識はまちまちで実態の解明には至らなかった
襲われる少し前に霧が発生することを除けば…
3国は徐々に互いの国に対する不信感を募らせていったが表向きには特定の国に対して嫌疑をかける事はなかった
しかし日増しに被害は増え、緊張感は更に増大していった
 
そんな中、ロベールの軍船がベルリオースの客船を沈没させるという重大な事件が起こった
ロベール側は霧の中に漂う不審な船が先に攻撃を仕掛けてきたのでやむなく応戦したというが、ベルリオース側は完全に否定し民間人を虐殺されたと激しく非難した
この件が発端となりロベールとベルリオースとの間に戦争が始まった
当初は2国間の争いだったが、両国の間に事態を静観しているシスターンが実は2国を争わせようとしているのではと、新たな疑惑を抱くものがでてきた
シスターンとしては全く根も葉もない事実なのだが、強力な魔術師団を抱えるシスターンがその魔法力をもって霧を操っているのではないかと噂が広まっていった
そしてベルリオースの一部のタカ派による軍船がシスターンの客船を砲撃する事態に陥ってしまう
 
10年戦争の始まりである
ロベールは圧倒的な兵力、ベルリオースは飛空挺や機械を駆使した火力、シスターンは強力な魔法兵器
既に事の発端である海賊騒動からの争いから、次第に領土拡大を目論む者さえ現れたこの戦争は壮絶を極め、互いに国力が疲弊し始めていた
この戦争により全体の半分の都市や町は壊滅したといわれている
この頃3国を騒がせていた海賊らしき集団は忽然とその姿を消していたのだが、3国の中にそのことに気付く者は少なかった
なかには、気付いていないふりをしていたとの見方をする人々もあったが
 
事態を重く見た各神殿の最高司祭たちが神殿の枠を超えてひとつの共同声明を3国に出したことで10年戦争は終息に向かうことになる
本来であれば政治的介入を取るべき立場にない各神殿だが、この裏にはあるサリカ神官とアルリアナ神官の姉妹が最高司祭たちに身を粉にするような働きかけを行なった結果であるといわれている
そして3国間の戦争が始まって10年目にして3国の中間に位置するリゾート地であるエクナ島において、最高司祭たちの見守るなか和平条約に調印し長きに渡る戦争に終止符を打った
表向きには3国が歩み寄った形となったが、3国ともさすがに神殿を敵に回すことは民衆の反感を買うことが必至だったため、まさかの神殿介入を黙って受け入れざるを得なかった
シスターンにおいては自衛のみ行なっていたため戦争の停止において積極的であったとされている
その後エクナ島は歴史的調印の場所として、また和平の象徴として各神殿の最高司祭が集う場所として3国からの如何なる介入も受けない永世中立地帯としての地位を獲得することになる
 
10年戦争が終結してしばらくは表面的には平穏を取り戻しつつあったが、最近霧が出る夜に1隻の客船が船ごと行方不明になる事件があり、再び不穏な空気が漂い始めた……


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