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ヒミツの黒犬さん^^^^主観と客観、世の中って難しいね、でも写真は猫ですやん、という話。

吉野川って大河の堤防を歩いていたわけ。するとカラスが騒いでいる。なんか、と思や、黒い犬。なんやら様子がおかしい。オーディブルでフィリップ・K・ディックを聞きながらだったからかなあ。おやまあ、ロボット犬か、と目をこすってよ~く見てみたら…

**雨が降ってきたのよね

海苔のプラスチックの入れ物ってあるやん。梅酒をつける瓶のような、赤いふたの。あれにね、犬が首をつっこんでとれなくなってたのよ。真っ正面から見るとちょうど容器の底がこちらを向いているんだけど、ロボット犬の正面顔のようなのよ、まさに。明らかな野良犬だよ。でもさあ、かわいそうじゃない。とってやろうとしたわけ、

あと50センチ手が長ければ届いたんだけど、犬のやつ、近くまでよってきては、すんでのところで逃げるのよ。彼女も困ってたんだろうね。そのうち、日が暮れ始めるし、餌で釣ろうと思って、連れ合いに電話したのよ。そしたら冷たいねえ。「触ったらあかんよ」。おいおい死んじゃうぜ、犬。雨まで降ってきたんで、家族の救援出動を待つのはあきらめて、歩いて15分ぐらいのところにある自販機でお菓子を買って戻ったわけ。でもさあ、雨の中せっかく帰ってきたのに、犬のやつも諦めたのか、いないのよ。

思ったね。彼女はきっと、何も飲めず、食べられず、3日もしたらサヨウナラだよね、きっと。その場になってみたらよくわかるけど、野良犬とはいえ、一つの命、ほっとけないぜ。見てしまった以上ね。自分にできることがあったのに、と思や、夜も寝付けねえ。

**くりくりおめめの真っ黒な子犬だよ

翌朝、心配になって堤防にいってみたわけ。そしたら今度は真っ黒の子犬だよ。手のひらにすっぽりおさまりそうな。目はくりくりで、ビートルズ、元歌はテディベアーズっていうのが歌ってたそうだけど、あんじゃん、「会った途端に一目ぼれ」。それよ。昨日の母犬が死んだらこの子犬も生きてはいかれまい。ワタシゃ、そう考えた訳よね。一つの命どころか、二つの命が失われるのよ。こりゃまあ、相当動揺したね。

せめて、と思ってきのう買った菓子をやった。子犬だけでも助けてやろうと思って連れて帰ろうとしたんだけど、野良犬だねえ、逃げるのよ。仕方ないから見捨てて帰ったわけ。帰ると連れ合いが「せっかくなのに、お菓子なんかやらんかって」。最後の食事がお菓子なのもねえ、とアタシも思い直し、野良犬に餌をやるのはコンプラ的にはいけないことだと思いつつも、会社の帰りにドッグフード、それも高いやつを選んで買って帰ったのよ。連れ合いにばれたら怒られるんで内緒でね。

それでよ、ああおいしかった、と最後に思って、子犬も生きていて一度でもいい思いをして、あの世に行きな、と翌日の早朝6時、どうしても厳粛な気分になって、堤防にいったのよ。その日はね、出張。高速バスに乗り遅れたら大変、あせりつつ。いたいた、河川敷の畑、といってもトウモロコシの収穫が終わったあとの畑を、おそらくはすみかであろう竹藪に向けて、黒いまりがはねていた。

**おいおいおい

じゃあ、と近づくと後方で「わん」。へっ、と思ってふりかえったら、あぜんとしたね。母犬が、海苔のケースがとれたすっきりした顔で、「うちの子に近づくな」と。おいおい、ワタシゃどんだけ心配したと思ってんねん。まさにね、膝かっくんを食らわされた感じ。厳粛な気持ちは吹っ飛んだよ。てめえら親子仲良く生きていきな、じゃあなと、心ん中でうそぶいたが、まあよかったねえ、とは思ったねえ。

ここで考えたのである。ワタシゃ、母犬が死にそうだと思ったけれど、客観的な状況はどうだったんだろうか、と。目撃した直後、案外すんなり外れてそれで終わりだったんじゃないか。アタシの独り相撲だったんじゃないかってね。「じゃないか」というより「だった」訳なんだけど、にわかに具体例は思いださんが、そんなこと世の中に多いんじゃないかなあってね。

**行く末

まあ、幸せに暮らせたらいいけど、野良犬だからね、そんなに明るい未来は見えてこないよね。そのうち愛護センターに保護されるんだろうけど、譲渡会に回らなければ、そのまま処分ということになってしまう。母犬を捨てた、その人は罪深いね。あとね、くれぐれも野良犬に餌はやらないように。かわいそうだけどアタシも我慢するよ。

生き物は大切にしようよ。きょうはそんな話でした。

追記

それがね、気になってきょうも見に行ったら、真っ黒の子犬が2匹になってんだよ。世の中どうなってんだあー。保護活動家に連絡しなきゃね。



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