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コーヒー&シガレッツ、コーヒー&オボウサン。ジャームッシュじゃないよ(上)

 当たり前のことだけど、お坊さんだってコーヒーをたしなみます。ワタクシの場合は、この一杯がなければ一日が明けない、てな程度、かなり愛好しております。依存症という恐ろしい言葉もあるけれど、そんなおどろおどろしい話ではなく、さわやかな朝の習慣、ほっとするひとときです。

***ブラック、ブラック

 てな具合になったのも実は、大人になってからです。それも30年も前、お山さんからロサンゼルスにある高野山米国別院に派遣され、駐在開教師をしていた頃なのであります。コーヒー好きはアメリカ仕込みなんでっせ。それまではコーヒーはあんまり。もらうとしても、ミルクたっぷりの甘いやつでした。

 ほならば、なぜにブラックコーヒーが習慣化したのか。それは別院に住み込んでいた時、ちょうどシカゴから転任されてきた故・井上智光先生の影響なんです。井上先生といっても知らない人がほとんどとは思いますが、人生の大半をアメリカ布教にかけたお坊さんです。

***レンチンでGO

 さてその井上先生、毎朝、身支度を整えると、必ずキッチンにやって来て、コーヒーの準備をされていました。コーヒーができると同時に、お供えで頂いて冷凍していたお饅頭をレンジでチンするんですね。そしてコーヒーのお供とされます。その姿が実においしそうで、ボクもまねしてみました。

 饅頭に甘いコーヒーとなりますと、これはね、糖分地獄。決しておいしいものではごわへん。試しにブラックにしてみますと、これがあうんですね。阿吽の呼吸ですわ。それからは毎朝、井上先生と一緒に饅頭とブラックコーヒーのモーニングでした。

 冷凍の饅頭は日本ではなじみがないかもしれませんが、かの地では饅頭は貴重品でっせ。冷凍してまで、ちびちび食すもんでした。レンジでチンしたら、かなり、おつなもんです。

***弘法は筆を選ばず、か?

 先日、テレビを観てたら喫茶店の試みが面白うございました。お店ならコーヒーは、サイフォンやフレンチプレスなどプロらしい道具でいれるのが普通でしょう。その店は「ペーパードリップ」なんです。何や、家と一緒じゃん、と思いますよね。店主の考えは少し違っていて、あえて家庭にあるペーパードリップを使って、お客さんにもこうすればおいしくなりますよ、と伝えるのが生きがいだというのですね。

 家でもおいしいコーヒーを飲んでいただきたいということなんだろうと想像します。もちろん、その前提に「うちの豆を使えばね」といった販売戦略もあるのでしょうが、そういう大人の事情は深くは追求しないことにします。

                            この項続く


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