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マイヒーロー。(後編)

前回はこちら。

6/27

〇〇「おい美月ー。明日なんだけどさ。」

山下「、、、、、、、、、」

〇〇「美月?」

山下「、、、ごめん。」

私は席から立って教室の外へ。

〇〇「美月、、、」

ごめん〇〇、もう私にはこの方法しかないんだ。

すると後ろから駆け足で誰かが近づいてくる気配がした。

賀喜「山下さん!」

山下「かっきー、、、」

賀喜「どうしたんですか!
   〇〇くんの事を無視するなんて!」

山下「、、、かっきーの教科書が無くなった時のこと
   覚えてる?」

賀喜「えっ?覚えてますけど、、、」

山下「あれやったの私なんだ。」

賀喜「、、、え?」

山下「こんな人間に近寄ると良い事なんて
   無いってのを教えたくて。それじゃ。」

私は一瞥もせずにまた歩き出し、その日は学校をサボって家に帰った。、


6/28

それからの私は本当に孤独となった。

〇〇もかっきーも話しかけてくれるけど、相手にしない様にした。

2人まで危害が及ぶことがない様に。

私は2人がくれる優しさを捨て続けた。

その度に私の心はボロボロと崩れ落ちていく音がした。

山下「はぁ、、、」

私は屋上でフェンスにもたれかかりながらボーッとしていた。

これからの明るい未来が全く見えない。

入学前に思い描いてた生活とは真逆な生活を送っている事に笑えてくる。

まぁ、あの4人からも特にアクションはないし!

〇〇もかっきーも平和に過ごせてるっぽいし!

私1人が犠牲になるだけでみんなが幸せなら最高じゃん!!


気がつけば私の頬は濡れていた。

一瞬だけ雨が降ったのかと思ったが、今日の天気は快晴。

じゃあ何で、、、??

私は目から涙が溢れ出ている事実から目を逸らした。

これを認めたら心が本当に折れてしまうと思ったから。

自分を騙せ。

みんなが平和に過ごすためには私の犠牲が必要なんだ。


「あれー?山下さんじゃ〜ん♪」


山下「、、、、、、っ!!」

一瞬で血の気が引いてしまう声、あの日から私の脳を蝕んでいるあの声だ。


「うーわ泣いてんの?ウケるんだけど笑。」

「なに被害者ぶってんだよ笑。」

「むしろ私たちの方が不愉快な思いしてんだけど?」


はぁ、、、はぁ、、、はぁ、、、!!

呼吸が苦しい。

震えが止まらない。

目の前の恐怖が私を包み込んでくる。


「おい。こっち見ろよ。」


1人が私の髪の毛を強引に掴んで来る。

強制的に目が合ってしまった。


「やっば笑。今までで1番汚い顔してるよ笑。」

「そだ!あんたお金持ってる?」

「そーそー!私たち遊ぶお金欲しいんだ〜♪」


山下「そんなの、、、ないよ、、、」


「あれ?前にも言わなかったっけ?」
「口答えすんなって。」
「うーんと、、、お!ポケットに財布はっけ〜ん♪」


山下「やめて、、、ください、、、、、、」


「それ言ってやめると思う?」
「平和なお家で育ったんだねぇ、、、笑。」
「それじゃ財布もらってくね!ありがとぉ!」

「「「「あはははっ!!!」」」」


7/7

今日は七夕。

織姫と彦星が会う事を許された1日。

今も天の川を渡って仲良くしているのかなぁ。

今日は金曜日なのだが学校には行ってない。

マイナスな事しか起きない場所だと知って行くのは重度の真面目かドMくらいだろう。

しかし、お母さんには「学校に行ってくる」と言ってしまったので家にいるわけにはいかない。

ふらりと来たのは、いつか〇〇と一緒に来たショッピングモール。

探しに来たのは長いロープか切れ味のいい刃物。

私の人生に終止符を打つために必要な道具を探しに来たんだ。

あっ、そうだ。

財布はあいつらに取られてたんだった。

ここまで来て気づかないなんて何やってんだろ。

まぁここまで来たし、ブラブラと時間潰して帰ろっかな。


特に買い物をする訳でもなく、もう微塵も興味のない服とかを手に取ってみる。

どれだけ綺麗な服を見ても何も感じなくなってしまった。

前までは「〇〇が好きかなぁ。」とかいろいろ思ってたんだけど。

あの頃の山下美月はどこへ行ってしまったのか。


そのまま歩いてると大きな笹が豪勢な装飾をされていた。

掛けられている短冊を見ると「幸せになりたい!」「好きな人と付き合えますように!」などと数ヶ月前の自分なら書いていた願い事が並んでいる。

、、、私も最後に書いてみよ。


7/8、快晴、学校の屋上。

山下「ふぅ、、、いい天気。」

私は今、フェンスの外側に立っている。

頬を撫でる風が心地いい。

少し下を見ると夏の太陽に熱されたアスファルトが私を見つめる。

今日は土曜日だし、学校にいるのは部活をやってる人か先生くらいかな。

、、、たぶん〇〇もいる。

今頃はグラウンドでサッカーボールを蹴ってるんだろうなぁ。

気持ちくらいは伝えときたかったな。

嫌な態度とってごめんね。

わがままな幼馴染でごめんね。

山下「〇〇、ずっと大好きだったよ。」

さようなら。


ガチャッ

〇〇「美月!!」


少し時間は戻って、、、

〇〇「はぁ、、、」

あれから美月には会ってないし、LINEは既読つかないし、家に行っても話てくんないし、、、

俺なんかやっちゃったかな、、、

そんな悩みを抱えながら今日も部活に向かっている途中。

〇〇「あれ?」

〇〇「おい美月!!」

美月「、、、、、、」

あいつどこ行くんだ?

それに今日は土曜日だし、美月は部活は入ってなかったから別の用事か、、、?

それにしてもあの表情は普通じゃないだろ、、、!

俺は部活を放って美月の後を追いかけた。


はぁ、、、はぁ、、、はぁ、、、

美月はどうやら屋上に向かっているらしい。

真夏の蒸し暑い校舎の中、全力で階段を駆け上がる。

吹き出した汗が右目に入って染みる。

でもそんな事はどうでもいい。

とにかく美月の所に行かなきゃ。


屋上。

私がさよならを告げると同時に屋上の扉が開いた。

ガチャッ

〇〇「美月!!」

山下「えっ、、、〇〇、、、!」

なんでこんな所に〇〇が、、、

〇〇「美月!ゆっくりでいいからこっち来い!」

美月「、、、私が生きてたってみんなに迷惑かけちゃう
   から。」

〇〇「迷惑なんてかかってな」

美月「もう私にはっ!!
   、、、生きてる意味が見つからないの。」


ごめんね〇〇。

最後までこんな面倒な幼馴染で。

良い人を見つけて幸せになってね。

〇〇「、、、生きてる意味が見つかんないなら
   俺のために生きろ!!」

山下「えっ、、、?」

〇〇「俺は美月に生きてて欲しい、ずっと俺の隣に
   居てくれなきゃ困るんだよ!!」


だめ。

それ以上は言わないで。

私の意思が揺らいじゃうから。


〇〇「俺が美月の生きる意味になるから!!」

山下「〇〇、、、」

〇〇「だからこっちに来てくれよ、、、」


あぁ、、、

私はなんて素敵な幼馴染に恵まれたんだろう。

〇〇の一言は私にまた生きる意味をくれた。

この人のために生きる。

私には充分すぎる。


〇〇と私を隔てているフェンスをもう一度乗り越える。

先ほどの足場より何倍も広い地面の感覚に安堵の気持ちが溢れてくる。

〇〇「美月っ!!」ギュッ

〇〇の体温が私の体に伝わってくる。

山下「ごめんなさい、、、」

〇〇「本当だよ、、、
   なに1人で抱え込んでんだよ、、、!!」

山下「〇〇に迷惑かけたくなくて、、、」

〇〇「めちゃくちゃ心配したんだからな、、、!」


2人とも涙でぐしゃぐしゃになりながら抱き合った。

もう離れないように。

愛する人がいなくならないように。


数日後。

私をいじめていた4人は退学処分となり、警察も動いているらしい。

どうやらかっきーが色々と動いてくれたみたい。

私の陰口を広めていた証拠、財布を強引に取った場面や暴力を振るった場面の目撃者を探してくれた。

とにかくかっきーには頭が上がらないな、、、

賀喜「よがっだですー!!」

山下「本当にありがとう、、、
   あんなに酷いことしたのに、、、」

賀喜「山下さんの方が辛かったじゃないでずがぁ!」

かっきーも涙を流して抱きしめてくれた。

私の周りにはこんなにも素敵な人達がいた事にやっと気づいた。

私って本当にバカだなぁ、、、


また数日後。

私たちは前に2人で訪れたショッピングモールに来ていた。

山下「付き合った記念?」

〇〇「うん、お揃いの物とか付けたいなーって。」

山下「〇〇ってそんなタイプだっけ?」

〇〇「美月がちゃんと俺の大事な人だっていう証拠。
   今度は何かあったらちゃんと守るから。」

山下「、、、そんなカッコいいこと言わないじゃん。」

〇〇「うっせ。」

2人並んで歩いていると色とりどりの短冊で彩られた笹が見えた。

七夕の日から置かれている物だが、まだ残っているんだな。

そういえば私も書いたなー。

〇〇「まだこれ残ってたんだ。」

山下「、、、あっ。」

〇〇「どうかした?」

山下「私が前に書いたやつを書き直したいなって。」

過去の記憶を頼りにしながら、以前にわたしが書いた短冊を探す。

えーっと、、、、、、あった!!

結ばれている短冊を解き、ポケットにしまう。

〇〇「え?外しちゃっていいの?」

山下「うん!
   お願い事が新しく出来ちゃったから!」

そう言って残り少なくなった短冊に手を伸ばした。

えーっと、、、、、、よしっ!!

山下「書けた〜♪」

〇〇「なんて書いたの?」


『〇〇とずっと一緒にいれますように。』


〇〇「書かなくても一緒にいるっつーの。」

山下「そっか、、、///」

〇〇「あっ。
   そういや前の短冊には何て書いてあったの?」

山下「えー!それは教えたくない!」

〇〇「なんでよ!」

山下「スーパー病み美月ちゃんの書いた奴だから!」

〇〇「なんだよそれ笑。」


私が生きる意味を見失っていた頃に書いた短冊。

『来世は幸せになれますように』

もう今世には見切りをつけてしまっていたあの頃。

でも、私の隣にいる大切な存在。

私を必要としてくれる大切な人。

これからもずっと一緒に歩いていこう。

どうかこの願いが叶いますように。

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