多様性について

 一般的に言えば、ありきたりのもの同士を結び合わせても、新しいものになりにくい。一見、とうていいっしょにできないような異質な考えを結合させると、奇想天外な考えになることがある。

 外山滋比古 『思考の整理学』2011,52P

 この奇想天外な考え、すなわち革新的なアイディアが、商品やサービスに上手く付与されるとそれが付加価値となる。この付加価値の総額をGDPというが、世界第一位に君臨し続けているのは、皆さんご存知絶対的王者のアメリカ合衆国である。

 今回のテーマは多様性であるが、人種のるつぼやサラダボウルと喩えられているアメリカは、まさに白人、黒人、ヒスパニック、アジア系等多様性に富んだ国家である。前述したように、異質なものの掛け合わせによって、画期的な発想が生まれ、それがGDPの押し上げに貢献していると考えれば、アメリカが世界経済を牽引出来る理由もこのような土壌が少なからず影響していると言えるのではないだろうか?現にテスラやスペースXで有名なイーロンマスクは南アフリカ出身であるし、Microsoftの現在のCEOはインド出身者といった具合である。

 上記のように、パフォーマンスを上げるためには多様性が重要だという事は、理解して頂けたかと思うが、デメリットも存在する。それは、人種差別である。黒人が白人警官に射殺される事件は後を絶たず、アメリカ社会には現在も根強い白人至上主義がはびこっている。

 アメリカとは対照的に、多様性から生じる問題を見事に解決させた国がある。それは、異なるバックグラウンドの民族を見事に融和させたシンガポールである。シンガポール独立の父リークアンユーは、中華系、マレー系、インド系が混在する中、民族間の争いを厳しく取り締まった。また、特定の地域に特定の民族だけで暮らすことを決して許さず、住居に関しても多様な民族が混じるあうように街をデザインしたのである。その結果、国民に自分達はシンガポール人だという意識を根付かせ、それが今日の発展に寄与している。東京都同程度の面積に600万人弱の人口しかないが、1人当たりの名目GDPは、約72,000ドルの世界第5位と7位のアメリカよりも上位に位置している。

 ここまでは、国家という組織における多様性に関して考えてみたが、次は企業という組織に関しての多様性を考えてみたい。例えば、入社以来、ダンボール一筋30年のたたき上げ従業員ばかりの会社では、箱の需要があるうちは安泰だが、環境が一変して売れなくなってしまった時には、窮地に追い込まれる。なぜならば、その企業には他の商材を売るノウハウも無ければ、売ろうとするマインドも無い場合が多いからである。ここが、単一価値観集団の大きなリスクである。平時であれば、従業員が一枚岩であるため、管理し易いだろうが、逆風時には、その環境に適用出来なかった場合、全滅する恐れがあるといえる。

 ここでも重要になってくるのが、多様性である。中途社員や他業種からの役員を受け入れる等、様々な経験のある人材をミックスする事により、画期的なアイディアが生まれ、状況を打開出来る可能性が増加していくだろうし、企業のパフォーマンス自体もアップしていくと考えられる。

 しかしながら、国家同様に弊害もあり、代表的なものといえば、派閥争いである。同種の人間達が群れをなし、立場の違う人間達と会社の覇権を巡って争う。内戦が激しいため、外へ気を配る余裕もなく、攻めることも出来なければ、守りも連携が取れず手薄になってしまう。詰まるところ、スケールは違えど、メリットもデメリットも国における場合と大差はない。

 最後は、家族という組織の最小単位における多様性を考えて閉めたいと思う。

 異なる価値観の人間が一つ屋根の下に集うという意味では、そこにもまた多様性が存在していると考えられるのではないだろうか?私には2歳の娘がいるが、その論理でいえば、嫁という別人格との掛け合わせで産まれた彼女は、多様性からのシナジー効果の賜物だといえる。夫婦間の価値観の違いから、争いの火種が、そこら中に転がっているというリスクも、国家や企業のそれと重なる部分がある。昨日も洗い終わった皿の並べ方が悪いと愚痴を溢され、つい怒りに着火しそうになってしまったし笑

 そこで、異なる考え方の人間を融和させるために、先述した偉大な指導者、リークアンユーの政策を参考にさせて頂こうと思う。まず、家族内での争いは厳しく取り締まる。ソファの上に脱ぎっぱなしのコートが上がっていても、叱らずそっと片付けよう。また、住居に関しても、自分1人だけで別室に居れば仲間外れにされてしまうので、たとえ「パパあっちに行って!」と言われようが、めげずに3人仲良く川の字で寝る。更に、家族のパフォーマンスを上げいくために、他の家族とも交流して異文化を取り入れていく。

 また、冒頭の言葉のように、とうてい一緒に出来ない考え同士の組み合わせから、奇想天外な考えがおき、それが後々大きな成功に導いていくというのであれば、多種多様な情報の取得としては、読書が一番手っ取り早いだろう。本はもちろん、このnoteを活用するのも有効な手段である。

 我が家の平和と発展の為に、是非ともnoteを活用させて頂きたい。



〈参考資料〉

① 外山滋比古「思考の整理学」筑摩書房 2011

②   世界の名目GDP国別ランキング

       [https://www.globalnote.jp/post-1339.html](https://www.globalnote.jp/post-1339.html)

③   世界の移民人口国別ランキング 

  [https://www.globalnote.jp/post-3818.html](https://www.globalnote.jp/post-3818.html)

④   中田敦彦のYouTube大学

【リー・クアンユー①】シンガポールを経済大国に導いた首相の壮絶な半生
https://youtu.be/4Jqlqssl2Ow

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