ホリエモンさんのおっしゃる通り

 今日も電話が鳴り止まない。

 注文、納期の確認、見積依頼、機械トラブル、クレーム等々、内容は多岐に渡るが、9割は電話ではなく、メールやLINEで済むものばかり。

 そもそも電話というものは、否応が無しに、受けた人の時間を奪う。しかも、それは掛ける人の都合しか考えていない。掛けられる人は常に待受モードではなく、事務処理や打ち合わせ、家事や育児、お出掛けにスポーツ、そして趣味等々、何かしらの作業に追われているはずである。そしてその結果、お互いタイミングが合わずに行き違いが生じて、電話の掛け合いラリーが続いたりする。これは無駄な工数であり、大きな時間のロスだ。加えて、コミニュケーションを取る姿勢が出来ていないのに、一方的に捲し立てられても、相手が内容を十分に理解出来る事はない。

 しかも、これは対面でも同じことが言える。みんな自分のタイミングでばかり、話し掛けてくる。P C作業中に後ろから上長にアレコレ聞かれたり、こちらが電話中であるにも関わらず話しかけてくる、そんな強者さえもいる。

 私たちは一度にひとつのことにしか集中できない。複数の作業を同時にこなしていると思っていても、実際にやっていることは、作業の間を行ったり来たりしているだけなのだ。

アンダッシュ・ハンセン 『スマホ脳』 2020, P.72

 マルチタスクを頻繁にやる人は、些末な情報を選り分けて無視するのが苦手なようだ。つまり、「常に気が散る人はほぼ確実に、脳が最適な状態で動かなくなる」

アンダッシュ・ハンセン 『スマホ脳』 2020, P.75

 ハンセン氏によれば、一度に複数の作業を行ったり来たりするマルチタスクは、脳のパフォーマンスを著しく下げてしまうという。つまり、電話等で作業をカットインする事は、相手の能力を低下させる行為でもあるのだ。その事を十分に理解せずに、安易に電話を掛ける人のどれ程多い事か。確かに、自分の疑問点を即刻解決したいという気持ちは十分理解出来るし、秒で動けと行動する事の大切さを説いている人もいる。しかしながら、行動を促しているだけであって、電話を推奨している訳ではない。秒で動く際にも、相手への配慮は絶対に必要だ。

 では、一体どのようにすれば、相手に損失を与える事なく、かつ意思疎通の精度を上げられるのだろうか?それはSNSを使用する事である。これであれば、時間に余裕のある時に目を通す事が出来るし、また情報の8割は視覚から得られるため、メッセージで目を通す方が、耳で聞くよりも正確に相手の意図を捉え易く、内容もしっかりと理解する事が可能だ。

 とはいえ、電話が有効になる場合もある。それは、込み入った話や、相手の感情をより深く知りたい時だ。その場合には、「何時に電話出来ますか?」とメッセージで確認するのを推奨したい。対面で会うのにアポイントを取るのに、なぜ、電話するアポイントは取らないのだろうか?その方が、相手の時間を大切にしているという印象も与えられるし、何より無用な電話が掛かって来るのを防ぎ、自分の時間までも守られる。

 それでも、電話が鳴り止まないというのであれば、最終手段を取らねばならない。それは、電話に出ない事だ。もちろん、相手への印象を損ねると、今後の仕事に差し支えるため、無視はしない。あくまでも電話に出ないだけだ。つまり、電話が掛けてきた相手に対して、SNSのメッセージで回答するのである。これを何度かやっていると、相手も慣れてきて、自然とLINEでしか連絡が来なくなる。そして、どうしても電話でなければならない時、緊急事態だけに電話を掛けてくるようになる。その場合は、私は電話に出るようにしている。安易に電話を使用する事に抵抗感があるだけで、絶対に出ないというわけではない。

 これを書いている今も、私の電話が3件コールされた。早速、返事を書きたいと思う。

「お電話出られず、大変申し訳ございません。出られない状況でして、誠に恐縮なのですが、こちらのメッセージにて、用件を頂けますでしょうか?」
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