【映画感想】 『化け猫あんずちゃん』所々トトロも超えてる名作
『化け猫あんずちゃん』 原作 いましろたかし
監督 山下敦弘、久野遥子 脚本 いまおかしんじ
TOHOシネマズ日比谷で観賞
始まりはよくある夏休みこども映画だが…
東京に住んでいた小学生の女の子が、ギャンブル狂いで借金まみれらしいクズな父親に、田舎のお寺に連れてこられる導入から映画は始まります。
クズの父親は、かなり若い頃に勝手に実家のお寺を飛び出したらしく、女の子の祖父である和尚さんも目の前のクズが息子であることを認識するのに少し時間がかかった様子。結局クズ父と和尚さんはケンカしてしまい、女の子はお寺に置いてけぼりにされてしまいます。
キャラクターのアニメーションは最初に実写で同じシーンを撮影し、それを元にアニメを作画するロトスコープの手法で描かれており、非常にリアリティある芝居のアニメーションで展開します。
今どきの東京の女の子が、田舎暮らしのギャップに戸惑いながらも、トトロみたいな、大人は知らない不思議な存在に出会う、ひと夏のお話なのかな?
と思いかけた途端、化け猫が普通に出る。
化け猫のあんずちゃんは、昔からお寺で飼われていた普通の猫が何故かいつまでも死なず、次第に人の言葉を喋る化け猫になって普通にお寺に暮らしている。田舎の人々は、それを当たり前の日常風景として受け入れている。
化け猫が普通に馴染んで生活してた。
つまり、この田舎は『ドラえもん』的な「誰も異形の存在に疑問持たずに馴染んでる町」だったのです。
リアルな芝居の演出と世界観で化け猫が普通に出てきて、リアリティが裏返る。この冒頭のあんずちゃん登場シーンから先、この映画は、女の子の持つリアルな常識と、化け猫が普通に生活してる世間とのギャップの面白さに加え、アニメーションの動きも、とぼけたやり取りも本当に面白くて笑いっぱなしになります。女の子がいやおかしいだろと引いてる前半がまずめちゃくちゃ面白い。
あんずちゃんが無免許運転で逮捕されるのが面白くて本当に好き
そして、観客も女の子も化け猫や魑魅魍魎のいる日常が当たり前になってからの「旅と活劇」も、はちゃめちゃ楽しいです!
全編、力の抜けたおとぼけのユーモアで溢れており、アニメーションも素晴らしく、背景美術も非常に美しいです。
ずっと楽しい映画ですが、テーマは「人助け」。普段の生活はだめだめなのに仲間のために頑張って利他的行動を取るあんずちゃんたちの姿に、時々泣きました。