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わかりやすい文章の書き方

毎日使っているはずの日本語が、こんなにもままならない。

いつまで経ってもわかりやすい文章が書けない自分に嫌気がさし、ここ数年は書籍をいろいろ読みながら、文章の書き方を試行錯誤してきました。

これまで勤めていたコンサルタント会社を辞め、時間に余裕が出来たため、今の自分が考える「わかりやすい文章の書き方」をまとめてみました。誰かのためになれば、と思いこちらでも共有します。


わかりやすい文章とは

伝えたいことが明瞭

文章は、自分が伝えたいことを読み手に伝えるためのツールです。そのため、まず書き手自身が自分が伝えたいことをはっきりと理解していなければ、それが読み手に伝わることもないでしょう。

伝えたいこととは、すなわち「これだけは覚えて帰っていって!」という主張です。英語圏では"key takeaway" (key: 大事な、takeaway: お持ち帰り事項)とも言われ、プレゼンの最後に念押しのようにどデカく表示されることもあります。それぐらい強調したい主張があると、文章の到達点が明確になり、文章全体に統一感が生まれ、文章は読みやすくなります。例えば、この記事は「わかりやすい文章は意外と簡単に書ける」ということを伝えたくて書いています。

大・中・小の構成が論理的

「伝えたいこと」が明瞭になった後、それを読み手にきちんと伝えるために重要なのが文章全体の構成です。文章全体をざっくり切り分けると段落になります。そして、段落を更に細かく切り分けると句読点で句切られた文になります。これら大小の視点において一貫性、論理性がないと、読み手は文字を目で追いながら「結局この人は何が言いたいのだろう?」と迷子になってしまいます。

私が「わかりやすい!」と感じる文章では、まず目次の構成からわかりやすいことが多いです。聞きたいことが聞きたい順番で述べられていて、目次をざっと見るだけで文章全体の主張を掴むことができます。このように、段落(章)によって文章に背骨がまっすぐ通っていて、それぞれの骨格にバランス良く肉付けされている文章がわかりやすい、と私は思います。

例えば、今回の文章は下の図のような構成になっています。

一文単位で見てもわかりやすい

いくら文章の構成を練っても、文章の最小単位である「文」そのものがわかりづらければ、全体の文章ももちろん読みにくくなります。全てここでご紹介することは出来ませんが、木下是雄著の「理科系の作文技術」では、わかりやすい文を書くためには以下のような心構えが必要だと述べられています。

  1. 一文を書くたび、その文章がほかの意味にとられる心配はないか?を吟味する。

  2. はっきり言えることはスパリと言い切り、ぼかした表現を避ける。

  3. できるだけ普通の用語を使い、なるべく短い文で文章を構成する。

1については、本多勝一は「日本語の作文技術」にて、以下の例を引用しています。
「渡辺刑事は血まみれになって、逃げだした賊を追いかけた」
「渡辺刑事は、血まみれになって逃げだした賊を追いかけた」
2つの文では、それぞれ異なる人が血まみれになっていますね。このように、同じ言葉からなる文でも、句読点の打ち方ひとつで全く異なる意味の文になってしまいます。

2について、木下是雄は不必要にぼかした、避けるべき表現として「・・・といった風な」、「・・・ではないかと思われる」などを挙げています。もう少し身近な例では、梶原しげるは著書「口のきき方」の中で、「では早速、中に入ってみたいと思います」「材料はこちらになります」ではなく、「中に入ります」「材料はこちらです」と言い切った方がよい、と述べています。
短い文章では心許ないので、つい曖昧な言葉で濁してしまう私は、耳の痛い思いをしました。

そして、やたら長い文や、凝った言い回しを使ったものがいい文章ではない、というのが3の主張です。とってつけたような表現を切り捨て、複雑な文構造をほどくと、それまでは隠れていた内容の稚拙さが明らかになります。この痛みを真正面から受け止めて何度も書き直すことでしか、わかりやすい文章は書けないのではないか、と思うようになりました。

どのように書くか

理屈はわかっていても、実際にペンを握ったり、キーボードを叩いてみると、プレッシャーに気圧されて手が止まってしまうことも少なくありません。そういう時は脳でフン詰まりが起きているため、玉石混交なことを承知で一旦脳みそから言葉を全部出してみて、その後に玉だけ取り出して整理すればよいです。以下にその方法をまとめます。

考えていることをぶちまける

頭の中でぐるぐる考えていることを、紙の上にぶちまけます。

まず、机の上を綺麗に片づけて、ペンとメモだけを出しておきます。一番伝えたいことを目立つところに付箋で張り付けたら、それに関連する自分の意見や情報などをどんどん書き出していきます。地の文も、段落の小見出しも区別せず、「この記事はここに書いた文字からしか作れない」ぐらいの覚悟で全てを出しきります。

この手法はブレーンストーミングとも呼ばれています。

散らかれば散らかるほどいい

片づける

川喜田二郎が考案したKJ法、梅棹忠夫が考案したこざね法などを用いて、先ほど書き散らかしたメモをお片付けします。

まず、似ているメモたちを近くにまとめ、いくつかのグループを作ります。そしてそのグループを更にまとめて大グループを作ります。こうすることで、メモの群れ、集落が誕生し、自分が考えていることの全体像が見えてきます。

似たもの同士で群れてます

メモの群れ、集落が出来たら、これをロジックツリーの形に組み立てます。グループ同士を「なぜなら」「しかし」などの接続詞で結んだり、並列の関係にあるものを横並びにしたりすることで、文章の「順路」を作ります。

お行儀よく整列しました

これで文章の骨組みが完成です。裏紙などに張り付けてスマホで写真を撮っておくと、次のステップの文字起こしがやりやすいです。

文字に起こす

できた骨組みを見ながら、各段落のトピックセンテンス(この段落では何が言いたいのか)をWordなどを使って文字に起こします。そして、メモを一つ一つ見ながら各段落を肉付けします。これでようやっと文章の赤ちゃんの完成です。この後は寝かせて成長を見守ります。

時間をおいてから推敲する

前のステップで文字起こしが終わり、保存ボタンを押してファイルを閉じると、もうそのまま提出して全てを終わりにしてしまいたい気分になります。それをぐっとこらえて、とりあえず数時間、出来れば数日間は寝かせましょう。

そして記憶が薄れた頃、「後輩がレポートの添削をお願いしてきた」と思い込んで、「これはお前のために言っているんだぞ」という気持ちでビシバシうるさく推敲しましょう。忘れて、推敲して、、、を何度か繰り返すと、少なくとも自分ではある程度は納得できる文章になっているはずです。

上述が、これまでの私の拙い学びの結果です。読んだ本のどれもこれもがとても勉強になったため、下記に読んだ本の名前を挙げておきます。

  • 「知的生産の技術」梅棹 忠夫

  • 「日本語の作文技術」本多勝一

  • 「理科系の作文技術」木下是雄

  • 「読書について 他二篇」ショウペンハウエル

  • 「思考の整理学」外山滋比古

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