【黒木渚格言集】

黒木渚さんの、小説や歌詞から、言葉を格言としてピックアップし、解釈を載せる、【黒木渚格言集】は、週2日、木曜日と土曜日に更新。

※黒木渚の棘(youtubeで、毎週火曜日21時から配信のラジオ)で、ご本人にも、存在を、お伝えしてあります。

〇ツイッターに載せていたものを、ここに記して置きます。

【黒木渚格言集】(1)

「人間の本性なんて、幻想のようなものなのですから。」『本性(文庫本、あとがき)』/黒木渚

文庫本の『本性』のみに、記された、あとがき、から。人間の本質を突いていて、興味深い。恐らくは、事実上、その通りだと、思われる。

【黒木渚格言集】(2)

残された1%の そのアイデアが その直感が「エジソン」/黒木渚

エジソンの発明はすごいと思う、その観点を視座に据えて、歌われた歌詞だろう。まさしく、科学者の様に、曲は動態している。

【黒木渚格言集】(3)

言葉を使う動物はみんな詐欺師だよ「独立上昇曲 第一番」/黒木渚

本音を言っても、嘘を言っても、受け取る側は、本質を常に逸することがある。その点で、詐欺師、というのは、実に的確なメタファなのである。

【黒木渚格言集】(4)

追い風よ もっと強く吹け!「革命」/黒木渚

応援歌としての、追い風の表現。何かで後押しするなら、人生を走る時、追い風が、直悦的に後押しになるのは、表現を超えた事実なのだろう。

【黒木渚格言集】(5)

「うん、人生で一度も病んだことない」(中略)やっぱりあれは弟の優しい嘘だったのだと思う。『檸檬の棘(文庫本、あとがき)』/黒木渚

弟さんとの会話の中で、弟さんの言葉に、優しさを見た台詞。弟さんの言葉を優しい嘘だとした、黒木渚さんの優しさが見て取れると思う。

【黒木渚格言集】(6)

こうばしい明日が香る「アーモンド」/黒木渚

孤独の種としての、アーモンド。実際に、明日、前向きに生きるという、こうばしい明日。それに、アーモンド自体のこうばしい香りとしての意味が付加されている。

【黒木渚格言集】(7)

何かを待ってただ歌うだけ「あしかせ」/黒木渚

歌い手としての、黒木渚さんが、云わば、その歌いがあしかせに、なるとでも言う様な、逆説。人間に常に起こり得るあしかせの、普遍性。

【黒木渚格言集】(8)

悲しく積もるユウウツを どうしてブルーと呼ぶのかな「ブルー」/黒木渚

晴れた日に、働かされるから、憂鬱になる。晴れた日の青が、ブルーになる。つまり、憂鬱をブルーというということ。この曲で、その意味を知った。

【黒木渚格言集】(9)

命短し我々が 最後は勝つのさ 大予言「大予言」/黒木渚

予言というものに、託された、最後は勝つのさ、という台詞。また、それが、命が短い我々が故に、というのが、大きな起点になっている。

【黒木渚格言集】(10)

親族からの怒号が響いていた。背中に投げ付けられる口汚い言葉の数々。だけど平気だ。私はとても強いから。『壁の鹿』/黒木渚

壁の鹿の、最後の風景。家族の問題、死の問題。けれど、それと決別した時に、自己の本当の人生が始まるかのような、風景描写。強さの明証。

【黒木渚格言集】(11)

駆け上がって転げ落ちて人生はコメディ「ふざけんな世界、ふざけろよ」/黒木渚

面白おかしく歌われた曲だが、歌詞の随所に、ポストモダンが見て取れる。ふざけんな世界、ふざけろよ、は、意味を成していない様でいて、意味を成している。

【黒木渚格言集】(12)

美しく滅びてく私をみていてよ「美しい滅びかた」/黒木渚

美しい滅びかたは、人生の一つのテーマである。どうせ死ぬなら、美しく滅びたい、という美学が、歌詞に攪拌されている。

【黒木渚格言集】(13)

シャンパングラスの中 さかさまの雨が降る「さかさまの雨」/黒木渚

さかさまの雨、と題された曲だが、さかさまの雨は、シャンパングラスの中で起こるメタファである。秀逸な、発想の起点を知ろうと思わされる。

【黒木渚格言集】(14)

ひとりで夜更かし 世界の寝息を聞いていたい「Sick」/黒木渚

呼吸が題材になっているようで、世界の寝息を聞いていたいは、頂上から、人々の呼吸を聞いているという描写言語。病を逆手にとって、歌詞に変容させているかのようだ。

【黒木渚格言集】(15)

鹿の剥製が最初に話した言葉は、「まったく、理解不能です」というものだった。『壁の鹿』/黒木渚

着目点が、異常であるとでも言いたげな、鹿の剥製の言葉。序章のこの言葉から、小説は奇怪に始まっている。

【黒木渚格言集】(16)

孤独は宇宙だ 真空で息もまともに吸えない「解放区への旅」/黒木渚

解放区へと、自己を解放しに行く、旅が、ストレートに描写されている。孤独は、宇宙だ、まさに、最高の格言に成り得ている。

【黒木渚格言集】(17)

水平線はねじ曲がり 真っすぐに歌うのは難しい「大本命」/黒木渚

自己が人生を歩めば歩む程に、水平線は、ねじ曲がるだろう。そんな破壊された自己を、大本命にしてほしいと、歌えない真っすぐが、歌われている。

【黒木渚格言集】(18)

絶望にも飽きたころだろう?「死に損ないのパレード」/黒木渚

死に損ないであることは、即ち、絶望を知り、その絶望にも飽きたことに、依拠している。これ以上ない、絶望を知れば、死ぬ気すら起こらないという、人々のパレード。

【黒木渚格言集】(19)

鈍く光った表面に 本当の私が写っている「はさみ」/黒木渚

はさみを、メタファとして、書かれているが、鈍く光った表面は、実際のはさみだ。そして、本当の私が、交差するのは、はさみか、人か。

【黒木渚格言集】(20)

この世界の何処かでのうのうと生きている父親を軽蔑することによってのみ、今日まで生きながらえてきたのに。『檸檬の棘』/黒木渚

親という存在への、拒否衝動。どんな親でも、それは親である限り、子にとっては何かの標的者に成り得る。この場合の、軽蔑や憎悪など。

【黒木渚格言集】(21)

「最低だ」と思う日も 会いに来てよ「カルデラ」/黒木渚

この、「最低だ」と思う日も 会いに来てよ、という歌詞は、全ての人類を救済する。受け入れられることへの、感謝が、この曲を聴いていて、萌芽するのだ。

【黒木渚格言集】(22)

あなたもわたしも脆いから いっそこの手で崩しましょう「砂の城」/黒木渚

砂場の城を崩すような、原風景が想起されるが、脆さを崩すことは、何かの再建になるだろう。砂の城は、再生を予期させてくれる、繰り返される、こわい、という言葉から。

【黒木渚格言集】(23)

夜に浮かんで目もくらむような 一筋を眺めていたい「灯台」/黒木渚

灯台を、人に例えた、メタファとしての歌詞。光の一筋を、浴びたいではなく、眺めていたい、という位置の転化が、美しい風景を、想起させる。

【黒木渚格言集】(24)

入っていたのはマトリョーシカ「マトリョーシカ」/黒木渚

結果論から言うと、入っていたのはマトリョーシカ、だが、そこまでの落ちの歌詞に、社会風刺が述べられている。願いや救いが、マトリョーシカに託される。

【黒木渚格言集】(25)

私は光に向かって宣言する。これからは全てを音楽に捧げて生きていくと。『予測不能の1秒先も濁流みたいに愛してる』/黒木渚

過去の、黒木渚さんの、決意表明のようにも取れる。生きる意味、大きな代償を払ってでも。

【黒木渚格言集】(26)

恨み 裏切り 裏返し 奪われていく「原点怪奇」/黒木渚

人間の本質を言った、怪奇な現象の歌詞。繰り返される、人生上の輪廻のごとく、歌詞はメロディと一致し、歌われている。

【黒木渚格言集】(27)

最高過ぎて苦しいね「テーマ」/黒木渚

脳内の一つの頂点で、テーマは歌われているかのようだ。ポストモダン的解釈をすれば、これ以上ない、最上の幸福を、その頂点が苦しいと、いうことだろうか。

【黒木渚格言集】(28)

打ちのめされて墜落して どん底蹴ってまた飛び立つよ「火の鳥」/黒木渚

喉の不調から、不死鳥の様に、飛び立つことを明示している。まさに、運命に復讐するために、火の鳥は飛び立ち、聴き手にその衝動を投げかけている。

【黒木渚格言集】(29)

君の中には小さなピカソが住んでいるんだろ?「ピカソ」/黒木渚

ピカソ主体ではなく、聴き手の中にピカソの存在を意識させる内容。一見、簡易な内容の歌詞だが、劇薬のような、という言葉で、ゲルニカが脳裏を過る。

【黒木渚格言集】(30)

何かに触れるたびにとめどなく溢れてくるアイデアや繊細な気付きを自分の中に封じ込めるようになったのはいつからだろう。『本性(東京回遊)』/黒木渚

芸術家の方法論が看守出来る台詞。東京回遊の、様々な格言の内の一つ。

【黒木渚格言集】(31)

何がロックだ何がパンクだ「アンチスーパースター」/黒木渚

スーパースターではなく、アンチスーパースターの位置での思考。ポストモダン的であるし、逆説的に曲調は、ロックなのであるから、強烈な衝動的音楽である。

【黒木渚格言集】(32)

何を欲しくて集うのか ホントは私こそ知りたくて「クマリ」/黒木渚

クマリという異文化を、日本に輸入して歌われた、興味深い歌詞の言葉の数々。自己を必要とする理由を自己が知りたいという、純粋無垢が、聴こえてくる。

【黒木渚格言集】(33)

ごめんなさいごめんなさい 躍らせてたんだよ「懺悔録」/黒木渚

懺悔する位置は、まるで神の座に居る黒木渚の様に、聴こえてくる歌詞。物事の拡大縮小という、俯瞰的位置から、言葉は懺悔している。

【黒木渚格言集】(34)

現実を忘れてループする ここに出口はない「ダ・カーポ」/黒木渚

迷宮という言葉が、相応しいだろうか。出口のない現実を、音楽的にダ・カーポとした、その設定にこそ、また、発想にこそ、意味が見出されるだろう。

【黒木渚格言集】(35)

私はどこへ帰ればいいのだろう。『檸檬の棘』/黒木渚

自己が自己の人生を思考するとき、誰もが対峙する、どこへ帰ればいいのだろう、という台詞。場所は、ノスタルジアか、母体か。

【黒木渚格言集】(36)

今日と明日が繋がって 続いてく合わせ鏡「合わせ鏡」/黒木渚

人生を共に生きる時、続いていくものが、合わせ鏡としてメタファになる。信じあう、許しあう、その先に、心中をすれば、永遠にまで、合わせ鏡だろうか。

【黒木渚格言集】(37)

世界を巻き上げて上へ「竹」/黒木渚

竹の動態に、自己の存在を重ね合わせたのだ。竹が上へ上へ、と動態するように、まさにその様に、自己の人生をも、上方へと進むことを、願えば、適切だろう。

【黒木渚格言集】(38)

心がイエスと言ったなら 一秒で世界は裏返る「心がイエスと言ったなら」/黒木渚

すべては、心の問題なのか、と考えされる格言。世界を裏返すのは、身体ではなく、心の問題だろう。時として、心がイエスというなら、ノーということもまた、現象する。

【黒木渚格言集】(39)

ロマンを抱えて生きている「ロマン」/黒木渚

日常で気に留めないことかもれないが、人間はロマンを抱えて生きていると、気付かされた歌詞。もともと、歌詞が先にあった、という曲。

【黒木渚格言集】(40)

父が私を捨てたように、私も父を捨てたのだ。『檸檬の棘』/黒木渚

親と子の問題。渚さんが、捨てるのが得意というのは、恐らく、ここで規定された。愛情を感じなかった子は、父親に、同様の意識を持つだろう、その普遍性。

【黒木渚格言集】(41)

血の通った人間に会わなけりゃ「フラフープ」/黒木渚

人間関係の機微を、ダイナミックに書いたのだ。「好き」「嫌い」「生きる」「死ぬ」、と叫ばれる中で、回るフラフープが其の侭、人生を振り回す比喩。

【黒木渚格言集】(42)

こざかしいんだよ くたばれ「ロックミュージシャンのためのエチュード第0楽章」/黒木渚

ロックについての、渚さんの表現は、しかし、声質が優しいためか、過激な歌詞も、心地よく聴こえてくる。第0楽章という言葉が、興味深い。

【黒木渚格言集】(43)

分裂してしまう あなたの目の前で「プラナリア」/黒木渚

プラナリアは、日本の川に生息しているようだが、まさに、その分裂を、自己の精神の決河した分裂に準えている。あなたの目の前で、と、現実に引き戻される。

【黒木渚格言集】(44)

閉じたカーテン 夕日に伸びる私の影「窓」/黒木渚

閉じたカーテンの先に、自己の思う人がいること。夕日に伸びる私の影、で時刻が表明される。片思いとしては、絶妙の描写。

【黒木渚格言集】(45)

幻聴だと思った。こんなにはっきりと聞こえるものを気のせいで済ますことはできない。『予測不能の1秒先も濁流みたいに愛してる』/黒木渚

音楽家としての、原点が見い出される。幻聴が芸術へと、変容する過程の表現。

【黒木渚格言集】(46)

瞳よ鼓膜よ渚へおいで 強くたくましいこの場所では 誰もが自由だ「砂金」/黒木渚

砂金に、自己の状態の救済を祈っているかのようだ。渚さんが、まるで風景の渚として、我々を呼んでいる場所は、救いの場所からである。

【黒木渚格言集】(47)

何を合図か 一斉に 土手を燃やして彼岸花「彼岸花」/黒木渚

毒を有する彼岸花に、歌詞を情景に透写した歌詞が、綴られている。土手を燃やして彼岸花は、強烈な直喩であるが故、聴き手にストレートに入ってくる曲。

【黒木渚格言集】(48)

自由になった心はどこへだってゆける「檸檬の棘」/黒木渚

小説『檸檬の棘』と、重複して聞けば、尚、自由になった心はどこへだってゆける、の意味が、異質に現出する。素晴らしい棘は、渚さん自身の、体感的言語となる。

【黒木渚格言集】(49)

望みひとつ自分ひとり 虎視眈々と坦々と「虎視眈々と淡々と」/黒木渚

言葉通り、自己が自己として、自己でのみ、戦っていく意思表明のような曲。歌詞は、音に乗って、ストレートに心に響く、或る種の、最高傑作。

【黒木渚格言集】(50)

「どうか、お元気で」(中略)「あなたが人間だったら、私、恋をしていたかもしれないよ」『壁の鹿』/黒木渚

対物性愛としての、表現の極致。おそらく、全ての芸術は、ここから始まる。例えば、目の前の人に話さず、思いをノートに殴り書きするかのような。

【黒木渚格言集】(51)

死んだ後でも楽しめるように 墓石に点数を彫ろう「骨」/黒木渚

墓石に点数を彫ろう、という実に斬新で新しい発想が記されているが、実際、どのように満足して人生を送れたか、ということは、一つの点数に成り得る。

【黒木渚格言集】(52)

直線12個集めたら ひとつ出来たよ角砂糖「あたしの心臓あげる」/黒木渚

理系的発想の、文学的な歌詞。角砂糖の甘さが、一つのこの格言から、曲全体に広がっていることを、理解しておくと、尚、楽しめる。

【黒木渚格言集】(53)

例えあなたが持ち得たとしても きっとすぐに捨てる すぐに捨てる「うすはりの少女」/黒木渚

自己に先天的に与えられたものが、想像以上だった場合、自己に人は集まるが、厄介になることもある。捨てる、とは、客観的な、自己の良点のことだ。

【黒木渚格言集】(54)

この想い叫べば 「非国民」 後ろ指刺され「赤紙」/黒木渚

戦時中のことを、また、その内容を、鑑みて歌われる歌詞が、メロディと相まって、非常に高度な内容を示唆している。

【黒木渚格言集】(55)

女の頬には銀河の形をした大きなほくろがある。『呼吸する町』/黒木渚

生まれ持ったものの、精緻な描写である。銀河という表現が、殊の外、イメージを掻き立てる、小説の導入としては完璧である。

【黒木渚格言集】(56)

貴方のため 砂金集め作った砂時計「砂金」/黒木渚

自分のためではなく、貴方のため、というのが、一つの起点となる。砂金を与えてもらう渇望よりも、砂金を与える愛情が勝っている。

【黒木渚格言集】(57)

あしかせをつけた私は逃げ出す事もできず この小さな空間で死んでいくのかな「あしかせ」/黒木渚

あしかせ、によって、人生が規定されてしまう、一種の寂しさが歌われている。非常に文学的な歌詞は、絶望の中にある。

【黒木渚格言集】(58)

指先に 指先に 指先に 曲がるスプーン「エスパー」/黒木渚

エスパー、という曲だから、という訳だろう。曲がるスプーンは、実際、「あたしの心臓あげる」のMVでも、披露されている。

【黒木渚格言集】(59)

スイーツ・サブカル・草食系 人間図鑑の大都会「マトリョーシカ」/黒木渚

人間図鑑として、まとめられたカテゴライズとしての言葉。大都会の危険的現状や範疇を提示した、歌詞に着目したい。

【黒木渚格言集】(60)

馬鹿にされればされるほど、腹の底から声が出た。『予測不能の1秒先も濁流みたいに愛してる』/黒木渚

黒木渚の、原点の明証ではないだろうか。正夢のような懐かしい感覚とした、この場において、小説の目的は果たされている。

【黒木渚格言集】(61)

一人で行くには遠すぎた でも裸の足は歩いた「革命」/黒木渚

裸の足は歩いた、という言葉は、非常に痛々しいまでに、孤独と到達を思わせる。まさに、革命者だけの、悲観的特権である。

【黒木渚格言集】(62)

約束なんてしてもしなくてもどっちだっていいよ「像に踏まれても」/黒木渚

そもそもが、約束は守るためにある、という既成概念を壊した歌詞。ユーモラスな歌詞の中に、気楽に生きれる優しさを孕んでいる。

【黒木渚格言集】(63)

味気ないし 華もないし 添えものの人生「カイワレ」/黒木渚

食用としてのカイワレに、まさに、カイワレ的に生きる人を重ね合わせた曲。歌詞は最後まで、面白ろ可笑しく、表現されている。

【黒木渚格言集】(64)

ああー ああー 崩れあってゆく「君が私をダメにする」/黒木渚

黒木渚の、一つの恋愛観だとされる本作。互いに支えあっていたものが、崩れあっていくことが、一つの恋愛に、終止符を打つかのような、独自の終末。

【黒木渚格言集】(65)

「分からんことはここに全部書いてあるけん」 私の脳裏に父の声が蘇る。『檸檬の棘』/黒木渚

小説の、親らしさを穿つなら、この場面は重要である。大きな転機としての、父の声の復元が、言葉に作用する。

【黒木渚格言集】(66)

扉をロックしてください「テンプレート」/黒木渚

テンプレートとしての、扉をロックしてください、という言葉。閉めるロックと、音楽のロックの、ダブルミーニングが、看取出来る。

【黒木渚格言集】(67)

数百の世界線 もつれあって文学「器器回回」/黒木渚

言葉と言葉を結ぶ、数百の世界線が、文章であり、もつれあう結果、文學となる。文學を、数百の世界線と、表現し得た、新しい世界的メタファ。

【黒木渚格言集】(68)

表現を自重する芸術家 能無しが出世する「ふざけんな世界、ふざけろよ」/黒木渚

社会風刺としての、意味を持つ歌詞である。能無しが出世することだけでなく、そういう社会体制を風刺し、ふざけんな、と繰り返し歌われる。

【黒木渚格言集】(69)

泣き笑い 回している フラフープ「フラフープ」/黒木渚

フラフープを回すことを、人生を生きることに準えて、また、人生に即して、例えられている、メタファとしての、痛快な歌詞の曲。

【黒木渚格言集】(70)

真面目に働いた一日は、なんと気持ちが良いのだろう。『本性(ぱんぱかぱーんとぴーひゃらら)』/黒木渚

ビールで肉を流し込んだ後の、台詞。現在の黒木渚さんの、原体験の様だ。興味深い。

【黒木渚格言集】(71)

君はやがて知るだろう あの狂おしい棘を「檸檬の棘」/黒木渚

心に芽生える、狂おしい棘とは、内部で生成されたロックの精神の様なものだ。狂おしい棘がある限り、人生はロックである。

【黒木渚格言集】(72)

凪のような嵐のような直感 神様の降りたような瞬間「落雷」/黒木渚

落雷を様々なるメタファとして、封印された歌詞が、劇的に鳴り響いているような曲。歌詞が韻を踏んでいる個所も多々ある。黒木渚さんの、新境地だと思われる。

【黒木渚格言集】(73)

鈍く光った表面に 本当の私が写っている「はさみ」/黒木渚

本当の私、という歌詞が興味深い。鏡に自己を見ることはあるが、はさみに自己を見るとは、何とも言えない、着眼点の発想の豊かさを底に見る。

【黒木渚格言集】(74)

イタリアという国には素敵な靴があるという「あしかせ」/黒木渚

ここ、から離れられないあしかせに、掴まっている自己が、イタリアに思いを馳せるのである。素敵な靴を履くことが、羨望になって、現状の悲痛さを、更に助長させる。

【黒木渚格言集】(75)

私には死人の恨みかたが分からない。『檸檬の棘』/黒木渚

すでに喪失してしまっているが故、声をぶつける対象のないことの、或る種の悲哀。

【黒木渚格言集】(76)

あなたは返事をくれるでしょうか 身勝手な私の申し出に「はさみ」/黒木渚

身勝手な私の申し出、とあるが、この身勝手であるかの状況に、私の本当の思いが託されている。受け取った側は、必然的に、返事を迫られるが、私の本音だと、受け取って良いだろう。

【黒木渚格言集】(77)

曖昧な何かじゃなければいい「さかさまの雨」/黒木渚

人と繋がって居たい、という思いが、述べられた歌詞。曖昧な何かじゃなければ、自分は安心するという、何か精神が破綻しそうな歌詞が、軍歌調に聴こえる。

【黒木渚格言集】(78)

よろしくさみしい本物たち「Sick」/黒木渚

本物は常に、さみしいものだ。本物であるなら、様々な現実を、受け入れなければならないからである、まさに、本物も、病気=Sick、と言えば、それが事実だろうか。

【黒木渚格言集】(79)

危ういバランスでたっている砂の城「砂の城」/黒木渚

砂の城は、危ういバランスであることで、怖い、という後の歌詞が、そのバランスを回顧される歌詞の順番になっている。まるで、砂の城に見立てられた、人間の本質の如く。

【黒木渚格言集】(80)

「女はブラックホールなのよ」『本性(超不自然主義)』/黒木渚

何もかもを吸い込むことの、メタファとしてのブラックホールの表現。この頃すでに、黒木渚さんは宇宙観に、着手している。

【黒木渚格言集】(81)

遠くから見るあなたって 凛とそびえる灯台「灯台」/黒木渚

あなた、という対象を、灯台に見立てているのだ。この壮大な歌詞の始まりは、このメタファから始まる点で、キーワードである。

【黒木渚格言集】(82)

宇宙の心理まで透視してしまえ「エスパー」/黒木渚

宇宙の心理まで、という箇所が、エスパーの能力の高さを物語っている。透視してしまえ、で、聴き手に、衝動が投げ掛けられる。

【黒木渚格言集】(83)

メンヘラ・トラウマ・依存症 人間嫌いの大都会「マトリョーシカ」/黒木渚

カテゴライズされた、病理としての、人間嫌いの大都会である。人間が大都会を嫌うのか、大都会が人間を嫌うのか。

【黒木渚格言集】(84)

冷たくなった彼の身体 もう一度ナイフを突き立てた「ウェット」/黒木渚

深刻な歌詞であるが、曲調は至って明るい。実際、「ふざけんな世界、ふざけろよ」でもそうだが、深刻な歌詞の時に、曲調が明るくなると、過去に述べられている。

【黒木渚格言集】(85)

「東大寺さん、この世はでっかいラクトルかもしれない」『呼吸する町』/黒木渚

ラクトルについての、大きな発言。この世が何かで出来ていることは明白だが、この小説のテーマを内包した台詞だと思う。

【黒木渚格言集】(86)

右目には冒険が宿り 左目は未来を見る「革命」/黒木渚

革命者としての、視覚状態の歌詞。黒木渚独特の表現だと思うが、こういう状態の時に、人は革命を遂げるのだろう。

【黒木渚格言集】(87)

クマリを見る自分の目 神殿を奪ったあの子は誰?「クマリ」/黒木渚

神の座を降りた自分が、神の座に就いた誰か、について、羨望の思いを馳せる歌詞。クマリ、という他文化に、その思いを一致させている。

【黒木渚格言集】(88)

開き直って愉快だな「死に損ないのパレード」/黒木渚

開き直ることで、死への憂鬱を吹き飛ばすのだ。そんなパレードに加わることで、自殺は乗り越えられる。先導者としての、黒木渚。

【黒木渚格言集】(89)

夜空を突き抜けて惑星のスケールで「解放区への旅」/黒木渚

黒木渚さんの、解放区への思いが、ストレートに歌われた歌詞。壮大な、宇宙への思いが、惑星のスケールで、と誇張され、大らかに強く歌われている。

【黒木渚格言集】(90)

ふと目を覚ますと、ベッドルームの床に父の頭が転がっていた。『檸檬の棘』/黒木渚

小説の書き出しとしては、文句なしの導入である。檸檬の棘の構造は、ここに収斂されていると思われる。

【黒木渚格言集】(91)

君の欠落が愛しい カンペキなものは虚しい「火の鳥」/黒木渚

カンペキなものは虚しい、とは、かなり卓越した思考なのである。人はカンペキを目指すが、そこに垣間見える欠落が、補完の対象となる。

【黒木渚格言集】(92)

ほんの一瞬の命さ 痛いほど「心がイエスと言ったなら」/黒木渚

ほんの一瞬の命、が故、自分に正直に生きることで、人生の価値が決定するという、まさに、心がイエスと言ったならの、神髄である。

【黒木渚格言集】(93)

身軽になって そこから始まる「独立上昇曲 第一番」/黒木渚

独立後の最初の曲。身軽になって そこから始まる、は、独立の精神の意識だが、何かを新しく始める人への、或る種の応援歌でもある。

【黒木渚格言集】(94)

キュビズムのように難しく ラクガキのようにあどけないもの「白夜」/黒木渚

キュビズムと、ラクガキの、対比。偉大なものと、素朴なもの。そのような対比が、おおらかに歌われる、白夜の歌詞の、本質が見て取れる。

【黒木渚格言集】(95)

眩しくて失明してしまいそうなほど、強く、白い。『予測不能の1秒先も濁流みたいに愛してる』/黒木渚

小説の最終部、スポットライトを浴びての、思いの叙述。強く、という言葉に着目すれば、黒木渚は、やはり強い。

【黒木渚格言集】(96)

100万円のレスポールどぶ川に投げ捨てた「レスポール」/黒木渚

捨てることが得意だ、と本人も言う通り、ここでは、100万円のレスポールが、どぶ川に投げ捨てられる。物としての愛情ではない、本当の愛情を、自覚させるため。

【黒木渚格言集】(97)

それはまるで 骨の様に 私を通る 強い直線「骨」/黒木渚

それはまるで、という風に、常にそれの本質は語られない。骨の様に、というヒントからしても、やはり骨は、異性のことを歌っていると思う。

【黒木渚格言集】(98)

丸いあぶくは恋の数 消えないあぶくはどこにある「金魚姫」/黒木渚

消えないあぶく、を探す動態において、それはまさに、金魚姫としての生き方に即している。あぶく、としてのメタファが、曲や歌詞を、成立させている。

【黒木渚格言集】(99)

あなたの武器は言葉なんでしょ「モンロー」/黒木渚

武器としての言葉。人間関係で、人生を生きる上で、どうしようもなく戦わねばならないとき、渚さんにとっての武器は、言葉、ということに、帰着するのだろう。

【黒木渚格言集】(100)

世界で一番暗い場所は、人間の黒目の中にある。『壁の鹿』/黒木渚

楽曲、「虎視眈々と淡々と」でも歌詞になっている、この文章。黒目というのが、キーワードになっている。黒目から見る世界も、暗いだろうか。

【黒木渚格言集】(101)

生身のあなたが怖い「窓」/黒木渚

想像と現実の問題。片思いで思っている内は、想像が勝つが、現実になった時、想像が壊れることが、怖い、となる。

【黒木渚格言集】(102)

導き給うはイエス様 熱を帯びてゆく眼球「あたしの心臓あげる」/黒木渚

心臓をあげるのは、暗喩としての、イエス様になぞらえた、君、であることは確かだろうが、眼球という言葉で、それが視覚的なものであることが、明示されている。

ー追加で書いて置いたものー(+α)

【黒木渚格言集】(103)

命短し我々が 歯向かってゆくは 大予言「大予言」/黒木渚

大予言と題された、ライブでの人気曲。命短し我々が 歯向かってゆくは 大予言、とは、それこそ、大予言だと、歌詞は結んでいる。

【黒木渚格言集】(104)

「大人の遊びさ」 口髭が笑う「あしながおじさん」/黒木渚

大人の男の一つの原型として、「大人の遊びさ」は、大人らしいが、大人のような子供にも聴こえる、歌詞の羅列。

【黒木渚格言集】(105)

こころはもう逃げない しあわせよかかってこい「ブルー」/黒木渚

こころはもう逃げない、とは、ブルーな憂鬱にも対峙し、受け止めたうえで、乗り越える意識の萌芽のことだ。この歌詞で、憂鬱のブルーが、もう一度、晴れた気持ちに転移する。

【黒木渚格言集】(106)

バカになる覚悟を決めて走れ「解放区への旅」/黒木渚

黒木渚さんの、解放区への思いが、ストレートに歌われた歌詞。バカになる覚悟とは、過去の自分を捨てて、新しい自分になることだと言えるだろう。

【後記】

一年間、読んで下さり、ありがとうございました。いいねも、励みになりました。此処、note、にて、全て、(+α)、を載せて置きます。

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