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窪美澄「じっと手を見る」を読んで。

 今回のタイトルはしっかり内容とあてはまる。今回は読書感想文(ネタバレなし)です。
 この本を読み始めたのは仲良しミュージシャンからトリキでおすすめされたからだから…まあまあ前だ。どちらにしでこんなに一冊の文庫本をじっくりと読んだのはいつ以来だろう。山本文雄さんが亡くなった時にプラナリアをよんだ時(不思議なことにタイトル買いして読み始めた次の日に亡くなったからトリビュートで読んでたわけじゃない)だから一年半弱ぶりか。いや、よく感えたらプラナリアを読み終えた時期に勧められてしばらくして川口の大きな書店で買ったから、つい最近といえば最近ではある。だけど3年くらい、ずっと読んでたような気がする。
 内容には触れないけど、世界観が人の心の中の話だから、読んでいない時もふとその本のことを思い出すのだ。自分は移動中ないし、何かの待ち時間とか、タイムアップありきでないと本が読めないたちだから、最近読んでなかったというのもあるけど、この本はいつどこで読み出しても、すっとはいっていけた。とても切なくてどこか優しくて少し厳しくリアルに生々しい日常がそこにはある。日常といっても、それは手を伸ばせば届きそうで、触れると壊れてしまうような、ないしそういう人間の日常だと僕は感じた。目を細めてぼやけてキラキラした景色を眺めてるような、そんな景色が浮かぶのに、内容は決してそうではなく、暗い影を落とした浮かびも沈みもしない泡沫のような繊細な作品でもあった。

 あんなに嫌いだった読書感想文、今ならいくらでも書ける気がする。あっ、でも課題図書(だっけ?)は自信ないなあ…。

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