怖かった先生がFEの試験前にかけてくれた魔法の言葉

先日、精神科に入院してた時に仲良くしていた当時中学生だった男の子から久しぶりに連絡が来た。今年成人して、一人暮らしをしながらSEをしているそうだ。お互い励ましあって入院生活を送っていた仲間が立派に社会人になったのがとても嬉しかった。(と、同時にもう成人したのか、そりゃ私も老けるわ…と少し落ち込んだ。)

彼と連絡しているうちに、基本情報処理技術者(FE)という資格の話になった。私も彼もFEを持っているのだが。取った経緯を話したら驚かれた。自慢のつもりではないのだが、実は私は高校3年生の時にFEを取ったのだ。思い出しているうちに、高校時代の昔話がしたくなり、初めてnoteを書いてみようと思い立った。

まず、私がどんな高校生だったか…。私はとある商業科の高校に通っていた。商業高校の中でも、情報処理科に在籍していた。昔からパソコンに慣れ親しんでおり、基礎はあったので成績はまぁまぁいい方だった。
そして部活はソフトボール部に所属していた。ソフトボール未経験で入部したのだが、こちらの方は散々だった。とにかく毎日怒られまくった。悪いことをしたり、サボっていた訳ではなく、単純に下手だった。1年生の間は人数合わせでレギュラーになれていた時期もあったが、2年生になると後輩に抜かれレギュラーを奪われた。3年生になるとポジションが変わり、オーダーではスタメンに入っているが、ノックが終わる頃には1年生の名前に変わっているなんてことが毎回だった。屈辱的だったが、仕方がなかった。下手だったから。
そんな鬼采配されていた時点で気づいているかもしれないが、顧問の先生がむちゃくちゃ怖かった。3年間ソフトボール部にいて、たった2回しか褒められた覚えがない。その代わり毎日怒られた。前置きが長くなったが、今回1番書きたかったのは、そんなむちゃくちゃ怖い先生と、私の基本情報処理技術者試験当日の話である。

試験の日は確か土日のどちらかだった。当日ソフトボール部は練習試合があり、私をスタメンに出そうかという話があったのだが、試験があると先生に伝えると、試合に参加しないでいいから、試験に向かうまで勉強していろと言われた。私もその方が良かったので、皆が試合を頑張っている中、私だけ部室で最終確認をしていた。勝算は、正直五分五分だった。得意な問題が出てくれれば…という感じだったのを記憶している。不安だった。でもどうしても受かりたかった。午前免除通ったのを他の部員に報告したらみんなめちゃくちゃ喜んでくれたのだ。他の部員に示しをつけるには、これしかないと思った。授業も必死でついて行った。休日の補習もほとんど参加した。それでも、合格する自信はあまり持てなかった。今まで色んな資格の試験を受けてきたが、段違いで難しかった。授業も、全て理解するというより「ココとソコとアソコだけ覚えて、他は捨てろ!」という教え方だった。(今思えば、就職後使えるようにと言うよりは、ただただ試験に合格する為、という感じだった。)
試験会場へ出発する時刻が迫ってくると、緊張もやって来た。緊張と不安で押しつぶされそうだった。試合でスクイズのサインが出た時よりドキドキしてきた。そして出発時間になった。持ち物を入念に確認し、部室を出る。グラウンドは、練習試合の真っ只中だった。意を決して、顧問の先生に「行ってきます」と声をかける。先生のことは普通に話しかけるだけでも緊張するくらい恐れていた。先生は私の方をチラッとみて「おう」とだけ言った。ふぅを息を吐いて、グラウンドを後にしようとした時、先生が言葉を続けた。

「合格しかないぞ。」

体に電流が流れたかと思った。背筋が伸びた。いつぶりだろう。先生が私に期待をして、励ましてくれた。あまり意味の深い言葉では無いかもしれないが、今まで先生を失望させ続けてしまっていた私にとっては、目が覚めるほどの激励だった。私は先生に向き直り、大きな声で「はい!」と返事をして、学校を後にした。最寄りのバス停で、一緒に受験するメンバーと合流して試験会場の大学へ向かった。試験会場には幅広い年齢層の受験者がいたが、恐らく高校生は私の高校の生徒数人だけだった。その様子をみて、初めて基本情報処理技術者試験の規模を目の当たりにした。しかし、不思議と緊張は無くなっていた。胸の中は、先生の「合格しかないぞ。」という言葉が響いていた。
そして試験が始まった。必死すぎてあっという間に試験は終わった。帰り道、あまり仲間には言わなかったが、手応えがあった。後は天に祈るだけ…結果発表の日を待った。

結果発表の日、結果はホームページに掲載される。私の番号は…あった!合格した!同じ高校から10人弱受験したうち、合格したのは3人だけだった。その中の1人が私だった。ものすごく嬉しかった。試合で三塁打を打った時より嬉しかった。部活仲間に報告したら、祝福してくれた。同学年の部活仲間に同じ情報処理科の生徒は居なかったので、「国家資格に受かった」位にしか説明してないのに、喜んでくれた。

落ちついて試験に挑めたのは、間違いなく先生のあの言葉のおかげだと思う。なので先生に報告と感謝の言葉を伝えに…は行けなかった。私にとって先生はやっぱり恐怖で、日常会話も避けていた。

高校を卒業してから1度だけ先生を訪ねたが、ゆっくり話したのは後にも先にもその1回だけである。その時に当時の感謝を伝えれば良かったのだが、他に話したいことを話していたら、すっ飛んでしまい、今でも伝えられていない。

今現在。先生は部活顧問を退き、定時制の教師をしていると聞いた。今でも仲の良い部活仲間と、先生に結婚と出産の報告をいつかしに行きたいねと話すのだが、いかんせん2人ともよく怒られていたので、なかなか実行に移せていない。いつか息子を連れて先生を訪ね、近況報告と、当時のお礼をしなければと思っている。

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