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道理を知るってかっこいい言葉だ

 本屋で平積みになっていた『現代語訳 学問のすすめ』と『現代語訳 論語と算盤』を読んだ。福沢諭吉と渋沢栄一は、似たようなことをいくつか言っている。知ることと行うことには天と地ほど差がある、というのがその一つ。

 自分は知ることに関して少し得意なところがある。昔は新書ばかり読み、図書館に行けば全部読めたらいいのにと思っていた。これは知識に対する脅迫観念に近い。知識があればこの世を理解でき、したいと思ったことをできるようになると思っていた。

 しかし、大学を卒業して企業に就職し、働きながら思った。知識を集めても、したいことはできないと。違う言い方をすれば、知識を持っても、こうすればこうなる、という将来予測が全然できない。道理を知る*必要がある。
 
*道理という言葉がかっこいいので使いました。見当違いの意味だったらすみません。

 道理を知るとは、今の状態・行動から来たるべき将来の結果を見通すことができる状態と、ここではイメージしている道理関数f(x)に用いられる説明変数xには、量的なものから倫理観といったものまで含む。そして変数xの組み合わせは感覚と感性によって、調和のとれた変数群が採用される。これを本や教科書を読み、練習問題を解くだけで習得するのは難しい。

 いわゆる教科書的な知識は、説明変数を限定できるような現象には強い。コンクリートであれば、断面積・荷重・強度が分かれば破壊するか否か予想できる。しかしコンクリート構造物を実装しようとすれば、構造は供試体に比にならないほど複雑で、打設する人によって品質はまばらで、施工中の天気もころころ変わり、テストで想定するような仮想現実とはかけ離れた世界で作られる。

 その様な中でも、数十年間壊れない構造物を現実に実装する人は、一つの道理を知っていると言える。さらに道理を深く知っていれば、新しく挑むような構造でも、関係者の質や予算額、納期、施工場所といった数えきれないほどの説明変数上手く調整し、誰も見たこともない構造体を現実に実装できる。

 上の例はエンジニアリング的な道理だが、実業的な道理を知っていれば、いつプロジェクトを立ち上げ、誰にこのプロジェクトを任せ、どのような収益構造とし、どのような心持ちでこの事業を見守るべきなのか、間違えることはない。

 ではどうしたら道理を知り、それを深めることができるのか。考えるに道理を知るには実行が絶対条件となる。自分で実行し時間の流れに乗りながら、最適な変数群とその重み付けを感じ取る。特に学問の公式では出てこない、人の心という変数は注意深く感じ取る必要がある。その上で、学問的知識を習得することは大きな武器になり得るだろう。

 さらに想像するに、道理関数は説明変数に人の心を含むと同時に、目的変数にも人の心を含んでおり、そのアウトプットされる人の心変数の質・量が一定以上になるよう最適化される傾向があると考える。ゆえに、道理を知ることで、周りの人間や社会に対して無理を生じさせずに、得たい結果を得ることが期待できるのではないだろうか。

 道理を知るをテーマに明日からの仕事も頑張ろう。

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