見出し画像

「必要ではないモノ」を買う

私はあまりモノを必要としない。どうせいつかは捨てるだろう、と思ってしまうからだ。

生活に必要最低限のモノを購入する。

これが今までの私だった。


ある日私は、友人の家を訪れた。幼い頃はよく友人の家に行ったものだが、社会人になってからは、その機会はめっきり減っていた。

「おじゃましま〜す…!」

挨拶をして玄関の扉を開けた瞬間、私は思わず「わぁ…!」と感嘆の声を上げた。

玄関横のスペースに並べられた5人のミッキーマウスが、それぞれのポーズで私を出迎えてくれていた。

「すごい、かわいい…!」

家へ上がると、テレビ台の上にはドナルドダックの置物、壁にはディズニーランドで撮ったチェキ、ソファにはライオンキングのぬいぐるみと、どこを見てもディズニーのグッズだらけだった。

そのほかにも、タオルやキッチン用品、食器までもが、可愛らしいディズニーのモノでいっぱいだった。

私自身もディズニーが好きなので、心が踊り、ワクワクした気持ちで友人にグッズについて尋ねた。その空間にいるだけで、満たされた気持ちになった。

私の部屋にはないモノが、友人の部屋にはあった。

それは、彩りだった。私はその日の帰り道、考えていた。

仕事を1日頑張って家に着いた時、自分のお気に入りのモノたちが玄関で出迎えてくれたら。

家にいてふと周りを眺めた時、好きなキャラクターと目が合ったら。

疲れた心がほわーんと癒されたり、よし自分も頑張ろうっ!と元気が出たりするのではないか。


友人の家に行ってから、私の家には「決して必要ではないモノ」が少し増えた。

「決して必要ではないモノ」だが、「あったら生活に色が生まれるモノ」だ。


自粛期間中、好きなモノに囲まれた家の中で、私は穏やかに暮らした。

給付金が入ったら自分の部屋に新たな彩りを加えようと、今からワクワクしている。何を買おうかな。どこに置こうかな。そんなことを考える時間が、今のささやかな幸せだ。

この記事が参加している募集

スキしてみて

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?