きょうという一日
仕事帰り、無心で漕ぐ自転車。
この時間は、なにもかも忘れられる。
職場から、線路の横を沿うように走り続けると家に着く。
かぁんかぁんかぁんかぁん。踏み切りが鳴る。
ごおおおおおおおお…走り抜ける電車。吹き抜ける風。
空は美しい金色。雲がうすく空全体に広がって、その隙間から金色の夕陽が差し込む。
その下を走る電車の窓に、その金色が映り込んでいた。
自転車を漕ぐ足が、思わずゆっくりになる。
電線に止まっていたカラスが、ひょいっと空になった線路に飛び降りた。飛ぶのかと思った。
きいきい。小さく鳴る私の自転車。
家まではもう少し。気持ちの良い、前髪を煽る風。
目の前から犬の散歩をする人が通り過ぎる。
どこかの家から、魚の焼ける良い匂いがした。ああ、お腹がすいたなぁ。
なんでもない1日。いいことがあった訳でもなければ、悪いことがあった訳でもない。
だけど私は自転車を漕ぎながら、今日を生きていて良かった、と思った。
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