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旅行で分かった「夫婦で過ごす」ということ

まだコロナが流行していなかった2019年、私たち夫婦は憧れだったバリに行く計画を立てていた。

旅行はゆっくりしたい派なので、いつも海外のリゾート地に1週間ほど滞在する。
今回も1週間の有休を取得し、バリの情報を調べて、あの店に行きたい、このホテルが楽しみ、とか言いながら準備を進めてソワソワしていた。
出発は9月中旬だ。

出発当日

私はいつも準備がギリギリなタイプなので、出発当日もギリギリまで忘れ物がないか確認しバタバタしていた。
夫はそれを見ながらスマホを見て「まだ?」といった感じ。
夫はいつも用意周到なので私が待たせてしまうことが多い。
毎度申し訳ないと思いながら、予定ギリギリの時間で家を出た。

飛行機の出発は昼過ぎだったので、お昼は空港で食べた。
海外に行く前はいつも日本食が食べたくなる。
驚くほどおいしいおにぎりセットを食べて、いざ出国カウンターへ。
高揚した気分で旅行会社のカウンターに着き、予約やパスポートの確認をした。

しかし、私のパスポートの確認が終わると、隣にいる夫の様子がおかしいことに気づく。
今まで見たことがないほど血の気の引いた顔で、バッグの中を探っているのだ。

そう、まさかの
パスポート忘れた!

えーーーーーーーーーーーー!

あんなに余裕こいてた夫が、一番大事なパスポートを忘れたのだ。
こんなことは初めてで、パスポート忘れる人が本当にいるんだ、というのが正直な感想だ。
(忘れたことある人、ごめんなさい。)

必死に代替案を探す

私は初めてパスポートを忘れる人を目撃したのだけれど、旅行会社のスタッフにとっては何度か経験のあることなのだろう。
その場にいたスタッフさんが、どうにかならないか一緒に考えてくれた。

スタッフさんが1便遅い飛行機の空席も確認してくれたが、空席はなし。
空きがあるのは最速でも明日の夕方の便だ。
私だけ先に行ってあとから合流するという案も出たが、現地で申し込んでいたアクティビティにひとりぼっちで参加する勇気はないので断った。

スタッフさんは最善を尽くしてくれたが、結局バリは諦めることになった。

こうなると当日キャンセルなので、キャンセル代100%を覚悟した。
ところが確認したところ今回は少し返金してもらえるらしい。
アクティビティーなどは別で予約していたのでそちらはセーフだったのと、旅行代自体も半分返ってくるとのこと。

とりあえず空いてる席に座って、どうするか作戦会議することに。
お金も少し返ってくるし、パスポートがなくてもいける国内旅行に行こうとして調べてみたが、行きたい場所へ行く飛行機は全て満席。
30分くらい粘って探したが、結局その日は家に帰ることにした。

新たな旅行先

家に帰って、落ち着いて新たな旅行先を探した。
急に行くとなるとやはりホテルの空きは少ないしどこも値が張る。

もう諦めて家でゆっくりしようかとも思ったが、夫が起死回生の良案を出してきた。
「グランピングはどう?」
たしかにグランピングはいつか行きたいと話していたし、写真をみるとトレーラーハウスのすぐ横にバーベキューできるデッキがあり、プライベート感があって良さそうだ。
2人部屋も空きがあった。
ここにしよう!

場所は埼玉県の長瀞(ながとろ)。
バリから埼玉への行き先変更はなかなかない選択だがおもしろそうだ。
1週間ではなく、1泊2日の小旅行にした。

観光

長瀞までは電車で約3時間。
グランピング施設に行く前に少し観光したかったので、秩父鉄道へ乗り換える寄居駅で『ながとろ満喫きっぷ』を購入。
樋口駅〜上長瀞駅のフリーエリア内はこの切符で何往復してもいい。

こちらは現在販売終了していて、今はもっといろんな種類のおトクな切符が発売されている。

長瀞駅周辺

まずは長瀞駅へ。
駅舎は所々古そうに見えるが新しさも混在していておもしろい。
関東の駅百選に認定されているらしい。

【関東の駅百選とは?】
明治5年10月14日、日本で初めて新橋~横浜駅(現在の桜木町駅)間に鉄道が開通した日を記念して、平成6年より10月14日を「鉄道の日」として定められました。その関連行事として運輸省関東運輸局が行った「鉄道の日・駅百選」事業により選定された駅です。
引用:鉄道沿線写真紀行 関東の駅100選
http://www.asahi-net.or.jp/~iv4h-ykym/100sen/100sen.htm
レトロな雰囲気の長瀞駅

ここに来た目的はライン下りだ。
長瀞では有名なアクティビティで、長瀞渓谷をゆったり鑑賞できる。
冬季はコタツ舟もやっているとのこと。

ライン下りの受付は長瀞駅から徒歩1分という近さだが、おなかが空いたので先にお昼ごはん。
食べたお店は「地域の食堂」といった感じのお店だった。
8人くらいで使えるであろう大きな机にパイプ椅子で、お水はセルフ。
こういった雰囲気も旅行感を演出してくれて好きだ。

ボリューム満点の豚丼を美味しくお昼をいただき、早速ライン下りの受付へ。
ここで心配していた事態が起きる。

「増水により運行中止」の貼り紙が……。

ことごとくついていない。
でも、これはうっすら予想していた。
前日まで雨だったし、当日も夜から雨が降りそうな天気だった。
なのでライン下りできなかったとき用に代案を用意していた。

宝登山小動物公園

ということで、予定変更して宝登山(ほどさん)小動物公園へ。
目的地はロープウェイで宝登山を登った先にある。
ロープウェイには動物の名前が付いていて、私たちが乗ったのは「もんきー号」だった。
途中で「ばんび号」とすれ違ったが、色も違ってかわいかった。

もんきー号

小動物公園にはニホンザルやヤギなどかわいい動物がいっぱいいた。
ニホンザルは大きな猿山にたくさんいて、ボスザルなんか「私がボスです」感が出ていてすぐに分かった。
中には触れるような距離にいる動物も。

ひつじは放し飼いだった

ひつじの毛を触ってみたが、フワフワかと思いきやゴワゴワだった。
ウサギなどの小動物とも触れ合えるので、子どもも楽しめそうだ。
動物好きの私たちはつい長居してしまい、最終ロープウェイの時間に宝登山を降りた。

グランピング

日が暮れる前に秩父鉄道に乗り込み野上駅で下車。
バーベキューの食材を買うため近くのスーパーに寄ってからグランピング施設に向かった。
雨が降り出す前に施設に到着して良かった。

グランピング施設にはたくさんのトレーラーハウスが並び、中央には共同のバーベキュー場があった。
受付で説明を聞き、必要な道具をレンタルしたらトレーラーハウスへ。

雨が降っても大丈夫なデッキがついている

平日で天気もあまり良くなかったので、私たちのトレーラーハウスの周りは人が少なく静かだった。
中に入ると、ベッド、ソファー、キッチン、シャワー、トイレと生活に必要なものが全て揃っていてびっくりした。
普通に生活できる。
特にキッチンは設備がすごくて、今住んでいる賃貸のキッチンよりも広いくらいだ。

晩ごはんはカレーとスペアリブ、デザートにマシュマロだ。
早速はんごうでご飯を炊く。
はんごうを使うのは小学生のときに行った自然教室以来だ。
私は何一つはんごうの使い方を覚えていなかったが、夫は完璧だったので助かった。
私はアドリブで料理ができないのだが、夫はこういうとき本当に頼れる。
料理の味付けも全て夫が担当してくれた。

外で食べるカレーはやっぱり最高だし、ハーブソルトで味付けしたスペアリブも美味しすぎて永遠に食べられそうだった。
デザートのはずのマシュマロは料理中にもつまみ食いして止まらなくなり、デザートではなくおかずになった。

つまみ食いしたマシュマロ

雨がしとしと降っている中、デッキで晩ごはんをたいらげ、お腹いっぱいになったあともしばらく火を見ながらゆっくり過ごした。
火を見ていると、なにかが浄化されていくような気がしてとても落ち着いた。
静かな空間で、2人で落ち着いて話す。
遠くのバーベキュー場で話す人の声も少し聞こえてきたが、それもあまり気にならなかった。

この時間がこんなに日々の疲れを癒してくれるとは思わなかった。

仕事のストレスや忙しさが当たり前になっていたことに気付く。
何もしないでただゆっくりする時間も時には必要だ。
都心にいるとあまり空を見ようと思わないが、この日は空に浮かぶ星を見て、贅沢な夜を過ごした。

そのまま落ち着いた気持ちで就寝。
翌朝に、宿泊とセットになっていた温泉に寄って家路についた。

何事もお互い様

まさかのパスポート忘れから始まった埼玉旅行だったが、今までのどの旅行よりもリフレッシュできた旅行となった。
この旅行でグランピングにハマり、その後も何度か別のグランピング施設に足を運んだ。

そんな大成功だった旅行だが、一番大きな収穫はお互いに助け合う姿勢が大事だと学べたことだ。
今までも助け合ってきたけれど、大きな失敗をお互いになんとかしようとしたことでより絆が深まったと思う。

パスポートを忘れた直後、夫はこの世の終わりのような顔をしていた。
そして空港から帰るとき、なぜ私が怒らなかったのか聞いてきた。
自分だったらめちゃくちゃ怒るのに、と。

たしかに私は全く怒っていなかった。
別に怒りたいのを我慢した訳ではない。
楽しみにしていたけれど、起きてしまったことはしょうがないし、夫が一番ダメージをくらっているのは見て分かっていたからだ。
それくらいひどい顔をしていた人に、さらなるダメージを与えることはできない。
むしろ、なんとかしないと!という心理が働いた。

助けられたのは私も一緒だ。
旅行の計画も料理も苦手な私がグランピングで心から楽しめたのは、完全に夫が頑張ってくれたおかげだ。
私1人ではなにもできない。

夫は、本当に私で良かったと思ったらしい。
私も、本当に夫で良かったと思う。
(なんだか惚気のようになってしまった。)

これから壁にぶつかったときは、きっとまたこの旅行のことを思い出すのだろう。


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