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小さな無人販売所の話−1 <高級車が来る無人販売所>

ベンツ、BMW、レクサス、ロールスロイス、フェラーリ・・・
ご近所さん:「渋江さんとこ、いい車がよく停まってるねぇ」
私:「うちの車ならいいのにねぇ。ははは・・・」
ご近所さんも気づくほどに無人販売所に高級車が多く来るようになったのは、3〜4年前から。
うちに高級車が来るようになった理由を考えてみた。
まずは無人販売所の歴史をちょっと振り返り。

無人販売所の歴史

無人販売を始めたのは農家になりたてで、トマトしか作ってなかった10数年前。
畑の横の道端にパラソルを立てて、トマトを無人販売。
ミッキーの貯金箱を置いて。

トマトしか作ってなかった頃


震災後、自宅横の作業小屋の前に、無人販売所を建てた。
その当時の品揃えはこんな感じ。少ない。
ご近所さんやお散歩の方、知り合いがたまに野菜を買いにくる、そんな無人販売所だった。
1袋も売れない日もあったし、不定期に休んだりしていた。
作りすぎた野菜、出荷しなかった野菜、規格外の野菜を売ってた感じ。


当時、那須高原はFacebookが盛んで、私たちもこたろうファームのFacebookページを作った。野菜のこと、無人販売所の情報、マルシェのお知らせなど、だんだんお客様が増えてきた。
那須以外の地域では、instagramの方がよく見られていると聞いて、instagramも始めた。すると、宇都宮や大宮、東京方面のお客様が増えた。
SNSでの発信をすることで、「いつもinstagram見てます!」「Facebook見て来ましたー」というお客様との会話も増えた。

コロナ禍で増えた高級車

2020年ごろからコロナが蔓延し始め、自宅待機や外出を控えるように、在宅ワークなど、人々の暮らしに影響が出始めた。
那須高原はもともと、避暑地で別荘地が点在していて、豪華なお屋敷が並ぶ別荘地もある。
都市部から那須高原に、別荘を持っている多くの人たちが避難してきた。
地元のスーパーに買い物に行くと、県外ナンバーの高級車は目立つので、ジロジロ見られたり、「東京から来るな!」と遠くから言われることもあったという。
「私は那須に住んでいます」というステッカーを町役場で配っていて、それを貼っている県外ナンバーの車もあった。

そんな中、無人で野菜が買えるというのは、誰にも会いたくない、人混みに行きたくない人たちにちょうどよかった。
朝一番にこっそり来て、野菜を買ってこっそり帰る方もいた。

そして、都会から来た方々は、採れたての那須高原の美味しい野菜を気に入ってくれたようだった。
週に何度も来てくれたり、別荘地のお友達にも野菜を買っていって、そのお友達を連れて、また来てくれた。親戚や都会のお友達に野菜を送りたい、と頼まれることも増えた。
そう、高級車に乗っている人のお友達もまた、高級車に乗っているのである。
そして、ますます高級車が増えていくことになる・・。

野菜の種類が豊富なこたろうファーム

もうひとつ、都市部からのお客さまが喜ぶのが、野菜の種類が多いこと。
もともとホテルやレストラン向けの野菜を作っているので、スーパーでは見かけないような変わった野菜も販売している。
トマトの種類も30種類くらいあるし、サラダセットには5〜7種類の葉物野菜が入る。プチヴェールやカーボロネロ、ルタバガにカステルフランコなど、名前を聞いただけではなんだかわからない野菜も無人販売所に並ぶ。

珍しい野菜コーナー

レストランが時短営業し、家でご飯を食べることが多かったコロナ禍。
家で少しでも彩り豊かな、話のネタになる珍しい野菜があるのもよかったのかも。
無人販売所だけど、野菜のおすすめの食べ方は品名シールに書いてあるし、野菜のレシピも置いてある。
新たな野菜や食べ方を楽しんでもらいたい。

今年はコロナも落ち着き、別荘に来る頻度も減ったせいか、高級車の頻度も以前より減ったような気もする。
それでも、コロナ禍で仲良くなったお客様は、今でもとてもよいお客様である。
あの頃は、みんななんだかピリピリして、マスクしてるとかしてないとか、車が県外ナンバーだとか、些細なことで不安になって。
今ではあれはなんだったんだろう?って思うけど。
でも、コロナのおかげで無人販売所を知ってもらえて、那須の野菜の美味しさが伝わったなら、それはそれで嬉しかったりもする。

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