病むことに依存してる人種がいる。
薄暗い店内。充満する水たばこの臭い。漂うアンダーグラウンドな雰囲気の中、ダウナーな空気が空間をいっぱいにしていた。
歌舞伎町のホスト街からは少し外れた、ホテル街の並びにあるシーシャバーに思いつめた表情の女が3人いた。
一人は担当と喧嘩をして、自分の使った金額と自分の想い、素直に伝えられない気持ちのはざまで今にも泣きそうになっていた。
一人は歌舞伎町に通って半年、初めて入れたシャンパンと、自分の高まり続ける気持ちに戸惑いつつも、満足げな顔をしていた。
そしてもう一人は自分の過去を反芻しながら、新しい担当と向き合うかどうか悩み、ゆっくりとシーシャの煙をくゆらせていた。
「ホス狂いってさ、幸せを買っているわけじゃないんだよ。もやもやする時間とか、担当の事を考える時間とか、もう嫌だって病んでいる時間とか。
そういうお金を使うことで生まれた感情の起伏を買ってる。だから決して幸せになれる保証なんてないし、そんな風に悩む自分の時間を買ってる。
私たちってさ、病むことに依存してるのかな。」
薄暗い店内。どこか非現実的な空間。ゆっくりと煙を肺に取り入れて、吐き出す。少し吸い方を間違えた煙は容赦なく喉を刺激し、息継ぎを苦しくさせる。
コポコポと音を立てて煙を吸い込むたび、自分の身体をいじめているようで。それと同時に味のついた煙がゆっくりと全身をめぐり、倦怠感が襲ってくる。
ホストクラブが営業を終わり、日が昇るまでの深夜1時から朝方の4時。
ホストとのアフターに心躍らせながら待っていた彼女は、待ちぼうけになり不安げな表情だ。
泣きながら店に駆け込んできていた彼女は、彼からの連絡ですっかり機嫌を直し、今彼と合流して笑顔で街へと消えていった。
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