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公園内の禁止事項のアナウンス

星野道夫さんの著書『長い旅の途上』の中に好きなエッセイがある。
「ジリスの自立」とエッセイだ。アラスカ、マッキンレー国立公園の話である。その一説を引用する。

「ジリスの自立」
(前略)その辺りはホッキョクジリスの生息地でもあり、観光客がバスを降りるたびにジリスは餌をあてにして走ってくる。完全に人なれしてしまっているのだ。公園のレンジャーは何とか餌をやらないように呼びかけているのだが、そこはどこの国の人も同じ心情も同じで、かわいらしいジリスの仕草にはどうしても折れてしまう。
ある年のこと、奇妙な立て札が立った。なぜ奇妙かというと、その立て札は、わずか10センチほどの低さで、体を曲げてわざわざのぞき込まない限り見えないのだ。その内容は「ジリスたちよ!」で始まる、ジリスに向けての警告だったのだ。
「‥‥おまえたちは、そうやって人間から餌をもらってばかりいると、だんだん体重が増え、動きも鈍くなり、いつの日かイヌワシやクマの餌になってしまうんだろう‥‥」
私は笑ってしまった。何だろうと思ってサインを読む観光客も苦笑いを浮かべている。ふと、日本の動物園で見た、クマのおりの中にひっきりなしに人々が食べ物を投げ込む光景を思い出していた。そこに書かれていた「動物に餌をあげないでください」というサインは、何と力のないメッセージだったのだろう。そんなことは、だれもが知っているのだ。

 思わず動物に餌をあげたくなってしまうのも人の自然な気持ちなら、餌をやってはいけないのだと感じるのも人の素直な気持ちである。正論に力を持たせるのは大変だ。余裕を持ったちょっとしたユーモアが時に人の心を大きく動かしてゆく。

いいなぁ。
星野さんの文章はいい。
【正論に力を持たせるのは大変だ。余裕を持ったちょっとしたユーモアが時に人の心を大きく動かしてゆく。】ということなんですよ。

公園内でのアナウンス。
........................
・植物を採らないでください。
・ペットのリードはつけてください。
・ドローンは禁止です。
・ゴミは捨てないでください。.........などなど
..........................
いろいろ、来訪者にお願いしたいことはたくさんある。休日、楽しみに公園に訪れる来訪者に楽しく伝えるにはどうしたら伝わるのか、悩ましい。

日本には「日本インタープリテーション協会」という国立公園等のレンジャーをはじめ博物館等で来訪者に「見える事物を通して見えない意味や価値を伝える」インタープリテーションというスキルを研究している団体がある。 
<<<<<補足説明>>>>>
「見えるものを通して見えない価値を伝える」とは例えばこういう事だ。
目の前にホンドリスが現れたとしよう。
「あっ!あそこにいるリスはホンドリスと言う名前です」と伝えるのはインタープリテーションではない。
「あっ!あそこにいるのはホンドリスですね!目の前に現れてくれたと言う事は、我々が上手に森に入れて、気配が森に同化していたからなのでしょう。」などと違うメッセージを伝える事が出来る手法です。リスを通して人と自然界の付き合い方を伝えているのだ。
もしくは、
「あっ!あそこにいるのはホンドリスですね!ここにホンドリスがいると言う事は、餌になる落葉樹があるという事。そして、寝ぐらになる背の高い針葉樹があると言う事です。リスは贅沢で、様々な種類の樹木が揃っている森じゃないと生活しないんですよ。ここは豊かな森ですね。」ってリスを通して森の豊かさを伝えたりする。


要は伝え方のプロ集団だ。
そのみなさんに、この疑問を投げかけてみた(←投稿はこちら)。

流石だ。
さまざまなアイディアと事例が集まってくる。
みなさんにも一度この協会のfacebookを見ていただきたい。

私もユーモアセンスを磨きたい。





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