有給休暇と春の夕日と

春と呼ぶにはまだ寒い、と夕日を見ながら思った。


近年、企業の「働き方改革」というものの所為で、年間5日の有給休暇を取得しなきゃならない。その程度の決まりで何か変わるのか、と悪態をつきたくなる。職場も、「企業」ではないけれど、まあそれが働き方改革を拒否する理由になることはなく、年間5日の休暇を取ることが義務付けられている。なんでも、休暇をちゃんと取らなかった部署のグループ長の賞与が減らされるのだそうだ。ついでに部長の賞与も減らされるらしい。いくつものグループで違反者が出た場合、いくつものグループを束ねる部長の賞与は一体どうなるのだろうと少し興味がある。


閑話休題。そんなわけで、今日は休暇を取っていた、特に深い理由があったからではなく、まあこの辺りなら流石に暇になっているだろうなぁくらいの浅い考えで10月くらいに入れた。ちなみに3月にはもう一日くらいそんな日がある。今年度の休暇取得日数は、義務ギリギリの5日。「休暇を取ったところで仕事が進むわけではないしなぁ」という言葉をずっと考えてきたのが2021年度だった。

特に考え無しに入れた休暇だったので、何をすればいいのかよく分からない。最近、暇になったら職場のテニスコートにふらっと寄っては一人で練習しているのだけど、今日も危うく行ってしまうところだった。いや特に問題はないのだろうけれど、流石に勤務中の人々の視線が痛い。特にやることの思いつかない一日だったけれど、なんだかんだベッド下の魔窟をとうとう掃除し、マットレスを干したので有意義に使えたと言えるだろう。やっと最近、人間らしい部屋で生活をする気になってきた。というか、毎週3日ほどの休暇がなければ、正直自分は部屋の掃除をするような余裕はない。一日は完全な休養日、もう一日は自分の好きなことだけしていたい。週休2日では、掃除を入れる余地がない。

掃除を終えると疲れを感じて、干したばかりのマットレスの上に突っ伏していた。ようやく起き上がったのがこの時間。なんだか折角の有給休暇を無為に使ったような気がするけれど、休日ってだいたいこんなもんだ。赤みを含み始めた日射しを見ながら窓を開けると、意外とひんやりとしている。一昨日はあれだけ暖かくて春っぽくて、嫌になるくらいだったのに。春と呼ぶにはまだ寒いと、夕日を見て思った。3月ってこんなもんだったっけ。でもそういえば、2年前の3月中頃だって、意外と寒くて厚着していたっけ、なんて昔のことを思い出す。そして自分の中に、あの季節がまだ離れず残っているのだと思い知るのだった。

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