塵箱

現実では研究職とかしながら、だいたい休日の1/4はテニスしてます。グミと音楽がちょっと…

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現実では研究職とかしながら、だいたい休日の1/4はテニスしてます。グミと音楽がちょっと好きです。

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2023年 空

    • 旅情

      出張先のホテルから見える景色が好きだ。窓越しに見下ろす、ミニチュアのような路地裏と車。垣間見える、自分の人生とは無関係の人々の生活。「旅情」という言葉に込められた意味かもしれない。 学会に出るため、東京の奥地まで出ていた。最寄り駅からだいたい2時間。遠い。ただひたすらに遠い。所要時間の割には距離は短くて、出張規定上は宿泊が認められないと思われたので、仕方なく自腹を切ってホテルを取る。アメニティには櫛もなく、ティーバッグすら置いていない、簡素なホテルだった。それでもまあ、ベッ

      • お盆の帰省の時に見た空。翌日、38.4℃の熱を出してダウンするとも知らず。

        • 明けたら

          日付の変わった時間くらいから夢と現実を行き来して、2時頃には目が覚めてしまった。 スマートフォンなど見てやり過ごすが、少し高めに設定したエアコンのせいか、部屋の湿度も高くて、どうにも寝付けない。仕方なしに、ベランダに出て、紅茶を飲みながら街が目覚めるのを眺めている。 今日の天気は、あまり綺麗とはいえない曇り空。きっと月も見えなかっただろう。誰かを呼ぶような、小鳥の声が一番乗り。やがて示し合わせたように、一斉にアブラゼミが鳴き始める。遠く右の方から、ヒグラシの声が聞こえていた

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        2023年 空

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          イヤホンを外せ

          街へと向かう電車の中。 こんな暑さだというのに、電車の中には人が多い。「殺人的な暑さ」などという10年前の夏を形容した言葉はもはや生易しく、2024年の夏はもう当たり前にヒトを殺しに来ている。 久しぶりに何か書いてみよう、と思ってnoteを開くと、何か思索を繋げようとした形跡が下書きに残っていた。 書いていた時の感情をありありと思い出せる。それは、ここ数年間自分の中に残り続けている夜の景色と同じものだ。けれど、この言葉たちを、別に今更完成させる必要はないように思われた。

          イヤホンを外せ

          とりあえず生きてます

          とりあえず生きてます

          白い夏

          朝。 両親からの立て続けの連絡で起こされる。来年には還暦になる両親の朝は早い。スマホを見ると、まだ7時にもなっていない。弟の写真も送られてくる。元気そうだ。 仕方なしに寝床から起き上がって、カーテンを開けると、そこはひどく夏っぽい景色だった。入道雲こそ出ていないが、屋根瓦に反射する眩しさは夏そのものだった。白い夏。そんな言葉が浮かぶ。なんとなく、似つかわしいなと思った。こうして、31歳の最初の日を迎えた。 気分が良くて、なんとなく部屋を掃除し始める。少しずつ、人から連絡をも

          もう言葉すら出ないのだ

          もう言葉すら出ないのだ

          誰かがくれた夜の景色を、捨てに行くために生きている。昨日の夜、微睡の一瞬、そんな言葉が浮かんだ。

          誰かがくれた夜の景色を、捨てに行くために生きている。昨日の夜、微睡の一瞬、そんな言葉が浮かんだ。

          隅田川沿いに住みたい

          何の希望もない日々を、何とかやり過ごして生き抜いている。 生き抜いた先に何かが本当に待っているのか、今の自分にはもう分からない。 ここではないどこかへ、と10年近くずっと考えている。10年くらい前には、何の希望もない日々を生き抜いた先に、何かが待っているはずだと、自分自身を騙すことができた。今はもうできない。何も待っていない現実を生きてしまった。 ここではないどこかへ、自分ではない何者かへ。 なんとなく隅田川沿いに住みたい。別に綺麗でもない川の、護岸へ波打つ音を聞きながら、梅

          隅田川沿いに住みたい

          最近、というかここ数年、心動かされるものが空の色くらいしかない

          最近、というかここ数年、心動かされるものが空の色くらいしかない

          時々、夢の中で架空の街に迷い込む。 そこは灯りも店もあり、人も車もいるのに、どこか無機質で冷たい街。自分はその街の名前を知っているはずなのに、いつも道を探していて、目的地は遠く、決してたどり着くことはない。 今朝もそんな夢だった。横断歩道を渡った先にずうっと続く登り坂は、学生時代、最初に暮らしていたアパートを出てすぐの道に似ていた。 道や街といった景色を夢に見る時、自分はいつも迷っている。いつか見た夢では、蟻地獄のようなカーブを描く高速道路で、目的の分岐に辿り着けずに事故を

          いつか見た希望みたいな匂いの夜。湿り気のある涼しい空気。いつ、どこで、何を心に抱いていたのだろう。

          いつか見た希望みたいな匂いの夜。湿り気のある涼しい空気。いつ、どこで、何を心に抱いていたのだろう。

          空がひどく青い。アパートの廊下で仰向けになっている甲虫の向きを直してやって、季節はもう夏。

          空がひどく青い。アパートの廊下で仰向けになっている甲虫の向きを直してやって、季節はもう夏。

          オトナって感受性が死んでいるんじゃなく、感受性を殺さないと生きていけないんだなって、最近分かるようになったよ

          オトナって感受性が死んでいるんじゃなく、感受性を殺さないと生きていけないんだなって、最近分かるようになったよ

          斜陽

          アパートの階段を登る時、暗がりに転がる枝が、甲虫の脚のように見えた。よく滑る廊下で仰向けでもがいている甲虫をひっくり返して助けていたのが、ついこの間のことのように思われたけれど、いつかの夏は遠く過ぎ去り、もう次の夏が目前に迫っている。一年が経つのか。 驚くほど当たり前に過ぎては巡ってゆく季節の中、何一つ変わっていない自分だけが円の中心に取り残されている。目の回るようなスピードで巡る人たちを、ただ眺めている。いつから取り残されたのか、もう分からなくなってしまった。いつから分か