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夢日記②(登場人物:ぬいぐるみ、夕焼け、雲、天使、体温計)

 久しぶりに覚えてる夢をみたので書き残します

1 「箱舟」



 せかいじゅうのぬいぐるみだけがノアの箱舟(ノアの箱舟はカップ焼きそばや牛乳パックの空いたやつをくっつけたものでできている)に乗っているけれど、その中でも船の操縦権とかの争いが起きてしまっていてかなしかった。ぬいぐるみはみんなふわふわで、だれのことも傷つけないと思ってたのに。






2 「夕焼け」


 
 道がでかくて空がやたら広くて見晴らしがいい、どこかの地方都市を、だれかと二人で歩いていた。道は作られたばかりなのか真っ白で、町並みはきちんと碁盤の目に整理されていて、しかし建物は東京のように詰め込まれておらず、余裕をもった感覚でならんでいる。

だれか「もう暗いからさ、図書館に行かなくて散歩すればいいと思うんだ」

わたし「うん、元から図書館に行くつもりなくて、散歩するつもりだったよ、私この場所知らないもん、行く場所は決めてないよ」

 穏やかな調子で当たり前のことを言われると、なんとなく不安になる。むきになって生じた不安を発散させようとした。


 目が悪くなってしまったので、遠くをみるために目を細めてみた。すると、眼の見開きによって風景の彩度や明度、解像度が全然変わってしまうことに気付いた。少しの調節で、古いRPGのようなドットの世界になったり、超高画質になったり、昼の空が夜のような空になったりする。

だれか「こわいね」

わたし「うん、ほんとのいろがどれかわかんなくてこわいね、」

 わたしは夕焼けが好きなので、夕焼けのいろが本当ならいいと思ったけれど、そのためには目を開けすぎても閉じすぎてもいけないので大変だった。


 *


 しばらくしたら、わたしたち二人は鬱蒼とした森の橋を渡っていた。

 橋の左右には大きな、ビール瓶を入れるのに使われるような真黄色のプラスチックの箱が積み重なりずらりと並んでいていて、なかにはすべて雲が入っている。雲が縮んだりあらわれたりしながら、呼吸する、しゅー、しゅー、という音が聞こえる。
 ただでさえ暗いのに、雲のせいでじめじめしてたまらないから、こんな公共のところに放置しないで、ちゃんと片付けてほしい。


だれか「さいきんの夕焼けはどう?」

 沈黙が続いて、気まずい雰囲気を塗り替えるためにだれかは話をふった。こんなに夕焼けが好きだと公言しているのに、最近スマホの画面やヘッドホンから流れる音楽を現実から気をそらすために必死に聞き流していたので、夕焼けを真剣に見てなかった。恥ずかしくなって、どきどきしながら思い返す。


わたし「ピンクの夕焼けが多い気がする」

とそれっぽいことを言ってみる。でも、よく考えたら夕焼けの色はいつも違う。そもそも、聞かれても困る質問だった。



だれか「ぬいぐるみ落としてごめんね」

 だれかが私が預けていたぬいぐるみを道に落として、あやまった。

わたし「ああ、別にいいよ。いつも枕にしてるし」


 普段は、ぬいぐるみに大して愛着はないが愛着があるふうにふるまっていた。そうして、わたしよりもたくさんのものを愛する力をもっている誰かの解釈で上書きして、本物の愛にしてほしかった。だけど、だれかにはそういう風にふるまうことができなかった。だれかはわたしよりも純粋で、砂糖菓子の弾丸では負けてしまうと思ったから、わたしは不慣れな実弾で戦っていた。(※砂糖菓子の弾丸・実弾=桜庭一樹さんの小説「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」で出てくる表現 砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない (富士見ミステリー文庫) | 桜庭 一樹, むー |本 | 通販 | Amazon )



 鬱蒼とした森を抜けたら図書館があった。図書館は、赤いぐにゃぐにゃしたジャングルジムの三階にある。たどり着くまでに足を滑らせて転落しそうだ。絶対に棒に全体重をかけないと登れないと思うけれど、それだと建物が倒れてしまいそうで不安。


だれか「ふふ、この建物つくった人絶対バリアフリーの概念知らないね。でも、秘密基地感があって面白いね」


 三階についた。中に入る前に受付をする場所があった。こんなに奇抜な建物だけれど、意外とカウンターのひとはふつうのおばさんだった。名前を書くと、引き換えにコーンスープの入った紙コップを渡してくれた。一杯目は無料なんだそうだ。夏なのになぜコーンスープ?と思ったが、中は冷房が効いているからちょうどいいのかもしれない。





3 「天使の埋まる庭」


 穏やかな春の昼下がり。両脇にこんもりした芝生があるまっすぐな道を、何かを探して(確かに何かを探していたはずだけれど、目覚めたら忘れてしまった)進んでいた。幼い子連れの若いお母さんお父さんがたくさんいて、芝生のうえでランチョンマットを広げていたりした。途中小さい子とかくれんぼをして遊んだ。

 

 行き止まりの簡素な柵を潜り抜けた向こうには、雪みたいな白い粉(あまり雪だとは思っていなかった)の地面が広がっていて、無数の白い天使と白い鳥が埋まっていた。目覚めた後思い返してみると幻想的で美しい情景だったような気もするけれど、夢の中の自分は踏まないように気を付けなければならない、という強迫観念でいっぱいで、どんなホラーな夢を見ている時よりこわかった。






4 「切望」※

※閲覧注意 後半リストカット?描写あります。グロくはないと思うけど精神的に痛々しい。


 夜の街のなかを、私と、私と同い年であろう女の子と男の子と、三人で帰っていた。楽しくお喋りしたあと、途中で女の子と別れ男の子と二人きりになった。男の子の歩みが早すぎて(高速道路を走る車の速さだった!)私は「夜景がビュンビュン遠ざかっていて怖い、」と笑ったけれど、彼は特になにも返してくれなかったし足を止めてくれなかった。
 
 ああ、さっきは楽しく話せていてもしかしたら私のこと好きなのかも!!って思ったけれど、楽しそうだったのはあの子がいたからで、私に興味があったわけじゃないんだなあ、この人にとって、私って全然価値がないんだ、とはっきりわかって、悲しくなった。
 怖いこととか苦手なこととか、そういうことしかしゃべれない私、なんとか気を引こうとする私を見透かされて呆れられている気がして、孤独感や劣等感で手足が冷たくなった。

 気が付けば彼と螺旋階段を歩いていた。「階段の上がり下がりがわかんないや、」って私は笑って、視界と体がぐにゃぐにゃで、バランスを崩しまくっている。「なんか今日、頭も痛いし、熱、あるのかも、」そういうと彼は気を使って、愛想笑いしてるか媚びてくれてるのかわからないけれどわらってくれて、いやただの苦笑いみたいな顔だった気もするけど、うれしくなる。もっと心配してほしいなあって思う。ほんとうに具合が悪くなったらきっともっと笑ってくれるし心配してくれるしかまってくれる。


 なんとか階段を下りた私はふらふら体温計を探し回った。そこは学校だった。廊下になにかの係の学生が座っていて、机の上の紙箱の中にいくつか体温計らしきものが入っている。
 体温計、欲しいな……と思いつつ、人に話しかける緊張で喉が絞まり、声が出ない私を見かねたその学生は「体温計使いますか、」と聞いてくれた。「ありがとうございます」と礼をいい、その体温計を受け取る。
 やった。これで私に熱があると証明できる!具合悪さが可視化される!
 係のひとに受け取った体温計は、プラスチックのケースに入っている新品で、見たことない形をしている。電気シェーバーみたいな電気ビューラー(まつ毛あげるやつ)みたいな、頭でっかちな形だ。裏に使い方説明が書いてあった。手首の内側にその頭を押し当てボタンを押すようだ。押してみる。ぽち。

「……え、」

 ぴりっと痛みが走りその体温計を離すと、押し当てた部分、血管が透ける薄い皮膚に赤い一直線が走っている。その線上から数個、鮮やかな血の球が浮かびあがっていた。

(痛い、酷い、なんで、なんで、これ体温計じゃないの?なんで刃がついてるの?自分からしたわけじゃないのにこれじゃ、リストカットしたみたいに、心が病んでいるみたいに、みえてしまう、酷い!!!!!)

(そっかぁ~血液を調べないと、体温って読み取れないんだったっけ)

 衝撃で分離した二人のわたしのうち、ひとりは脳内でヒステリックに叫び、もうひとりはこのおかしな体温計を受け入れていた。平衡感覚はいつの間にか戻っていた。





4番目の夢みたいに心配されたすぎる女と化して永遠に徘徊する夢、たまに見る。(しかも、いつも最終的に心配されたい相手のことすら忘れてただただ一人で必死に具合悪くなろうとして終わってる気がする)
普段なら思い出しても凹むだけなのでメモせずにすぐ忘れるのだけれど、拗らせた気持ちの果てに刃物付き体温計を生み出しちゃった自分がちょっとだけ愉快だったから記録。
刃物体温計はたぶん血糖値測定器(指を針で刺して血液を採取する!)と、ビューラー(初めて使ったとき「医療器具みたいだなあ、これで瞼が切れたらどうしよう」って思って怖かった)が混ざって生み出されたキメラ。


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