ABCクッキングの中国法人が破綻、返金比率はわずか2割
Yahooニュースで中国のABCクッキングに関する記事が出ていました。簡単に言えば、突然クローズすることになったが、消費者から今まで集めたお金は満額ではお返しできませんというものです。
突然店舗がクローズする恐怖は常々感じつつ・・・
前払いした会費を返金しないというのは中国のスポーツジムでよくある話ですが、中国のスポーツジムと少し違うのは、スポーツジムは基本的には1元も返さないケースが大半ですが、ABCについては記事を見る限りは2割返金するというものです。中国現地の報道では1割しか返金しないというのもありました。当事者からすると腹立たしいでしょうが、中国で起こる同じような問題から見ると良心的といえます。
さて中国のABCクッキング、経営状況はどうだったのでしょうか。まずは会社の出資構造から紐解いていきましょう。
中国のABCクッキングの出資構造を紐解く
中国法人は艾宝食餐飲管理(上海)有限公司と艾宝食烹飪技術諮詢(上海)有限公司の2社あり、出資構造としてはABC Cooking Studio Worldwide Limitedが艾宝食餐飲管理(上海)有限公司に出資し、艾宝食餐飲管理(上海)有限公司が艾宝食烹飪技術諮詢(上海)有限公司する形をとっています。会社名称から見てABC Cooking Studio Worldwide Limitedは日本のABCクッキングと関係ありそうですね。ここもう少し見ていきましょう。
当初艾宝食餐飲管理(上海)有限公司に出資いていたのは日本のABCクッキングでした。これが2011年1月のことです。その後2014年4月にこの持ち分がABC Cooking Studio International Limitedという株式会社 ABC Cooking Studio の創業者である横井啓之氏(現在の代表者は妻の志村なるみ氏)が100%出資する香港法人に譲渡され、その後同年12月にやはり横井啓之氏が92.3%出資する香港法人であるABC Cooking Studio Worldwide Limitedに譲渡されています。つまり、2014年の段階でABCクッキングの中国法人は日本のABCクッキング本体と資本関係を持たない形になっています。ABC Cooking Studio Worldwide LimitedにABC SUPPORT LIMITEDというヴァージン初頭に登記する会社の出資がありますが、出資比率は5.7%に過ぎないので、ここでは無視しています。
本社の下に分公司or分店を登記
次に、中国国内に設立された教室について見ていきましょう。上記2法人はいわゆる本社であり、その本社の下に教室(登記上は分公司or分店)があるという形です。
家賃が一番高いだろうなって思われるショッピングモールに多く出店
全ての場所をわかっているわけではないですが、上海の店舗を見ると結構家賃の高そうなところが多いです。表の中にある設立と抹消はお分かりいただけるかと思いますが、「経営異常」という項目があります。何かしら異常事象が発生した場合にチェックされる項目なのですが、今回の場合は大半が登記場所を通じて連絡が取れないというものです。おそらく閉店してしまっていることによるものと思われます。なお、抹消にも経営異常にも日付が入ってないものもありますが、すでに本体が清算手続きに入っていますので、ほどなくして抹消されることになるはずです。(上の写真は万象城・下の写真はiapm)
2016年から2018年の3年間で16店舗出店・その後のコロナで苦戦か・・・
店舗の設立時期をざっと見ますと、2016年から2018年の3年間で16店舗出店しています。このころが一番勢いがあったようです。そしてこの後コロナ禍に突入。こういう店舗型ビジネスは大きな影響を受けることになります。積極的に出店してたが、コロナ禍で人が離れてしまい、コロナ禍が過ぎた後も離れてしまった人たちが戻ってこなかったということなのでしょう。そして何とか頑張っていたが、資金繰りが持たず、突如閉店するという事態になったものだと思われます。加えて、今や動画サイトで料理動画を挙げる人がたくさんおり、教室に習いに行かず、動画を見ながら料理を学ぶ人が増えたことも要因ではないかと思われます。
店舗前に貼り出されてた張り紙
実際に店舗を見てきました。上海の万象城というショッピングモール内にある店舗です。張り紙がしてありました。
日本語に翻訳したのがこちらです。
日本語に翻訳したのがこちらです。
ABC Cooking Studio会員の皆様、
本日このような形で皆さんにお知らせするのは非常に残念ですが、ABC Cooking Studioは「疫情」の中で新しいビジネスモデルを試して、外部投資家との協力協議を断念したことがありません。しかし、最終的に私たちはやはり経営を継続できないという残酷な現実と深い結果に直面せざるを得なくなりました。
ABC Cooking Studioは2010年に中国本土地区に初店舗をオープンして以来、は全国各地の会員から愛され、支持されており、手作りベーカリー料理のグルメ生活を共に探求していました。私たちは旅を続けることを非常に望んでいました。しかし現実は「疫情」後は収支がマイナスであり、会社の資金はすでにその後の正常な経営を続けることができないものでありましたできるだけ会員の権益と従業員の利益を保障するために、株主会は以下のように決議しました。
ABC Cooking Studioは即日中国大陸地区のすべての店舗を閉鎖して、会社は清算手続きに入ります。すべての不必要な支出を回避し、資金を節約することで全力を尽くして会員に対する払い戻しを行います。
特にここにお知らせします。レッスンが残っている下のQRコードをスキャンして申請を登録してください。当社は情報を確認した後、一つ一つ返金について連絡します。
やはりコロナ禍の影響が大きいということが理由に上がっています。なんとも寂しい話です。
評判失墜のリスク
さて、ここまでは中国の経営状況についてのお話ですが、なぜ報道にあるように消費者に迷惑をかける形、つまり踏み倒しクローズすることになったのでしょうか。私がかかわってきた案件を振り返ると、基本的にはそのクライアントに迷惑をかけない形、つまり払うべきものは払ったうえで会社清算をするというものでした。なぜならば、不義理する形で清算してしまうと本体である日本本社の評判を落とすことになってしまうかもしれないからです。なので個人的にはここまで大きく有名な企業が踏み倒す事例は今まで遭遇したことはありません。
日本本社のABCクッキングの経営状況はどうなんだろうか?
そう考えると、あえてこのような不義理する形をとるというのは日本側が苦しいからなのか?いやいや、すでに中国事業はABC本体から切り離されて実質横井氏の個人事業のような形になっているから、新たに資金注入することができないということか?しかし、現地法人はABCクッキングという冠を使っており、その出資者もABC Cooking Studio Worldwide Limitedとう名称からして日本のABC本体と全く関係ないと言い切るにはかなり勇気がいるように思うのだが。となると、ひょっとして日本のABC本体も決して楽な経営ができていないということなのか?ABC本体の経営状況を見てみましょう。2016/12-2018/12までの3期分が決算公告として発表されています。この3期は減収減益基調です。
その後2019年2月にNTTドコモが保有するABCクッキングスタジオの全株式を既存株主に売却すると発表し、その年度以降の決算公告は検索しても出てきません。ドコモの後ろ盾もなくなり、その後コロナ禍にみまわれたことを考えると、今はもっと厳しい状況にあるのかもしれません。上に書いたように、コロナ禍であったり、コロナ禍をきっかけに教室に料理を習いに行くのでなく、動画サイトで自分で勉強したり、クックパッドのようなもので満足してしまっている人が多いのではないかと思います。一度離れてしまった人たちを取り戻すのは難しいですね。
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