富山帰省 その1

(2018.8)

帰省、と言っても両親の実家が富山にあるというだけなので正しくない表現ではあるが、ほかに都合のいい言葉も思いつかないので〈帰省〉という言葉を使うことにした。
我が家はどこかの宗教に熱心なわけではないのだが、今年の2月で祖母が亡くなったこともあり富山へ墓参りすることになったことが帰省のいきさつである。

2008年に東海北陸自動車道が開通した。
それまで車での帰省というのはもっぱら下道を走ることで、軽く見積もっても到着まで5時間は掛かるとんでもない土地・それが富山だった。子供の頃に抱えていた問題は、車にそれだけの時間をじっとしていることにあった。

三人兄弟で横並びに座る時、なんの根拠もないのだが中子は真ん中に座るとおもう。
他の家庭のことは分からないが、少なくとも我が家の車の後部座席ではそのような悪しき風習があった。両サイドに兄弟がいると、眠くてもどちらにも寄りかかることが出来ない・寄りかかろうものなら拳で解決することになるので富山への道のりはあまりいい記憶がない。
トイレも近いので心配になる。それでも子供ながら楽しみを見つけようとするポジティブな精神を持っていたようで、せせらぎ街道の紅葉やコバルトブルーの川は別世界のように綺麗だったことは覚えている。また、渋滞中は後続のトラックの運ちゃんに変顔をするという遊びもよくやった。笑ってくれていたが、とても迷惑だったと思う。

今回も父の車で富山に向かうことにした。
同乗者は両親と私の3人。かつて真ん中で肩身の狭い思いをしていた頃に比べたら、後部座席は全て私のスペースである。高速道路も開通したので1.5時間で着く、そうタカをくくっていた。それが甘かった。
白鳥インターの辺りでまさかの渋滞。高山が舞台の某アニメ映画の影響なのか知らんがやめろ、私はさっきカフェオレを飲んだばかりのトイレが近い女だ。高山へアニメの聖地巡礼に向かうあなた方に“前前前世からトイレ探してる”とかそういう大喜利を考える余裕なんかねぇんだよ!高鷲インターまで8キロ、ひるがの高原サービスエリアは10キロ以上先の地点での出来事であった。
だいたい自分の膀胱を過信してカフェオレを飲んだ因果応報に他ならぬのでこのことについてはこれ以上は割愛するが、私は今日「サービスエリアに行かずともインターチェンジでトイレは借りられる」という素晴らしい知恵を得たのだった。

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