線になる


好きなものが点だとしたら、点と点が繋がって線になっていくことが最近目に見えて増えて、私の好みとか趣味ってきっと一貫してるんだろうなと嬉しくなった。と、同時に、ずうずうしく羨ましくなった。きっと、その点にはなれないから。


はじめて、アイドルを真剣に知りたいと思ったのが松村北斗だった。

それに気付いたのが2年前の春、25歳。人生で初めて ファンクラブ というものに入ったのが1年前の冬。

ただ会ってみたかった。コンサートのタイミングでファンクラブに入って、落選。そうだよなあなんて思いながらも、心ではしっかり落ち込んだ。

彼は私とひと学年の差で、でも私が中学生の頃からその顔に見覚えはあった。
この10年以上、彼を忘れていた間に、どんな軌跡や苦労があったのだろうか、私は同じ時間を生きていたのに彼を見ていないから分からないのだ。

きっと芸能界という世界に入った頃からのファンもいるんだろう。そういう人たちが書いたブログも読み漁った。
どんな世界もそれぞれに苦労はあるだろうけど、なんども絶望を感じたんだろうこのひとが、この人たちが、諦めずに活動を続けていてくれて良かったと強く思った。



新海誠を知ったのは、2010年、高校生の時だった。


当時の恋人に、秒速5センチメートルという作品を教えてもらった。
それは2007年の作品で、けれどインターネットの世界ではとても有名なものらしく、そういうのに詳しい彼が一番好きだと言った。だから見たんだ。

人物は、正直にいうと、どちらかというとあまり上手じゃないように、素人からは感じた。けど、その素朴な人物たちに、張りすぎていない声に、圧倒的な景色や街の描写に、懐かしさと儚さを感じて、虜になってしまった。

山崎まさよしの曲は、お父さんが家でなんども流していた曲で、あの日からあの曲はわたしのなかではこの作品のための曲に塗り替えられるほどだった。


最初に点がつながったのは、言の葉の庭、という作品だった。

店内の有線ラジオで聴いた曲。耳を離れなかった。

冒頭のピアノ、声、ギターの音色。
秦基博という人を知ったきっかけは、鱗だった。

まだ当時はサブスクやYouTubeようなものはなく、なくというか流行っていなくて、一曲一曲音楽サイトで購入してダウンロードした。

エンドロールという曲が好きで、何度も聴いた。


言の葉の庭が上映された2013年の5月、私は高校を留年した年だ。四年卒もできる単位制の高校だったので、留年というと微妙に違うかも知れないが。

雨に因んだ話に、大江千里の名曲Rainを秦基博がカバーし、作品に添えられた。

予告を何度も見返して、劇場で見られたときは本当に感激の一言だった。

新海誠のつくる映像と、秦基博の歌声が響き渡ったとき、静かに静かに泣いた。




中学生のときに聞き続け、社会人になって横浜アリーナのコンサートにまで行ったRADWIMPSも、新海誠をきっかけでまた好きになった。


新しい作品が出ることに期待はしていた。


あまり評判がよくなかった天気の子は、ビデオテープなら擦り切れるほど見た。お前たちに分かってたまるものかとさえ思った。


だから、すずめの戸締りの声優が発表されたとき、

まさかと思った。

まさか、まさかまさか。

ああ、また点と点が、つながった。



きっと松村北斗という人間は、周りの声を聞かずとも聞こえてしまう人だから。
でもきっと想像よりはるかに沢山のことを噛み砕いて踏みしめて飲み込んだり、つっかえて苦しくても乗り越えてきた人だから。


それでもすこし心配だった。

たぶんそれは、新海誠のことも、松村北斗のことも大好きだから、嫉妬なんだと思う。こんな一庶民がなにに対して嫉妬してんだと、自分でも思う。


好きなものたちが愛されて嬉しい。しかし寂しい。
本当に好きになったものがはじめてだから、こんな感情を抱くのももちろん初めてで。
教えてくれてありがとうなんだけどね。



いろんな気持ちを抱えて訪れた劇場で。

景色は遠く、知らなくても、
あなたの声を聞きにここまでこれて嬉しかった。




そうそう、ファンクラブに入って2年目の冬。

つい先日の話。初めてのコンサートに行くことができました。

もしかしたら奇跡かもしれないくらいの倍率になってきているらしく、コンサートの初日、家から一番近い会場のチケットに当選し、
人生で初めてアイドルのコンサートに行きました。

席は、ああほんとに、全部の運をこれに使ったのかなってほどに近くで。

ライトに照らされる背中を、最後かもしれないから忘れないように、次に会える時は、もっと遠くになるだろうから。しっかり楽しみました。

とっても楽しかった。次の日熱を出すほど。

これからも、あなたが走っていく背中を見られるように、わたしも走って、人生を踏み締めていかなくちゃと。
思いました。





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