開かずの引出し

「開かずの踏切」とか「開かずのトイレ」とかいろいろあるが、今朝仕事に出かける直前に自分の部屋の机の引き出しが開かなくなってしまった。「ん?? 」いくら力を入れてもガタガタゆさぶっても数ミリ程度は動くのだがその後は頑として開かない。

「うんにゃろぉぉぉぉ!いい加減にせいよ。こっちが仏の顔を見せてるうちにおとなしく抵抗をやめないと血の雨ふるでー」と脅迫めいたことをつぶやいても何の効果もない。

開いてもらわないと困るのだ。車のキーが閉じ込められている。

「うきぃぃぃぃぃ!」ヒステリー寸前になってからくも思いとどまり、「人間辛抱だ。冷静になって考えるのだ。お猿さんより上であることを証明してやるのだ」とようやく知性を働かせることを思いつき、工具箱から曲尺を取り出し、そいつを隙間から差し込んでガタガタと数分間。ふっと抵抗がなくなって引出しは開いたのであった。

「やったぁ!」銀行の大金庫をついに開錠成功した銀行強盗のように嬉しかった。引っかかっていた原因物はメンソレータムの缶であった。

「頑なな人の心もこのように開けることが出来たらなぁ」などと無理やり人生の教訓につなげるようなことはこの際やめておこう。

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