6*波打ち際で
バルアトルケものがたりⅤ*6
それは波打ち際でのできごとでした。
砂と貝殻でアリィが夢中になって絵を描いているいるときのこと。
なんだか視線を感じ、目の前を見ると遠くの海面に白いものが見えたのです。
あれ?なんだろう?
アリィが目を凝らしてみていると、その白いものは波にのって、ゆっくりと近づいてきました。
近づくにつれて、その白いものはイルカだとわかりました。
体がそれほど大きくないので、まだ子供のイルカです。
すぐ目の前まで来て、アリィを見つめています。
「どうしたの?こっちは浅いから、戻れなくなっちゃうよ!」
アリィが話しかけると、イルカは尾びれを振り、水しぶきをあげました。
何か話したいのかな?
アリィは立ち上がり、海の中へじゃぶじゃぶと入って行きました。
イルカはアリィがそばに行くと、鼻先をあげて合図をしました。その口には何かが加えられています。
アリィが手を出すと白イルカは加えていたモノを置き、海の中へ戻って行きました。
てのひらには真っ赤な珊瑚のかけらがひとつのっていました。
アリィは波打ち際に戻り、描いていた絵の続きを描こうとしました。
が、絵は波にさらわれてほとんどが消えてしまっています。
あれ?何を描いていたんだっけ?
そう思った瞬間 目が覚めました。
目が覚めた後 ぼーっとしてしばらくの間何の絵を描いていたのか思い出そうとしましたがわからず、覚えていたのは白い子供のイルカと赤い珊瑚のかけらのことでした。
気分はかなりよくなっていて、熱も下がっていましたが、なんとなくそのままベッドの中で白いイルカと赤い珊瑚のことを想っていたのでした。
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