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10*朝の時間

バルアトルケものがたりⅡ*10

ピリルは、目を閉じていました。

はじめのうちは気持ちがざわざわして周りの音が気になり、30分がとても長く感じられました。途中でこっそり薄目を開けて、周りを見てしまうこともありました。

ピリルは不思議なことに気づきました。目を閉じた直後は、周りの音が気になるのですが、だんだん遠くに感じられてきます。周りの音が気にならなくなってくると、頭の中に何かが見えるようになるのです。見えるものは、時には色だけだったり、景色だったり、いろいろです。

朝の時間の後はピリルは、おとうさんとおかあさんと、その時に見えたものについて話をします。その時間はピリルにとって、大好きな時間になりました。



最近、同じ景色を何回も見るようになりました。

一面に水があり、そばには古い家の跡。石を積み重ねた壁は崩れています。

ピリルのおとうさんが、おそらくピリルが見ている「たくさんの水があるところ」は、「海」だろう、と教えてくれました。「海」はピリルが知っている、みずたまり、池、川、湖とは違って、波があり、しょっぱいのだそうです。

ピリルはだんだん、「海」が見たいと強く感じるようになりました。


ああ、ぼくは海が見たい!波の音を聞いてみたい!海のしょっぱさが知りたい!






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