9*朝の海辺
バルアトルケものがたりⅢ*9
朝早く、3人は海辺に行きました。潮が満ちていたので波打ち際は昨日よりもずっと近くにあり、波は静かで、まるでまだ眠っているかのようでした。
ピリルはビーチの端の岩場に座り、セオナルドとアリィは少し離れて座りました。
潮風が気持ちよく、セオナルドは深く息を吸いました。胸いっぱいに潮の香りが満ちてなんともいえないあたたかな気持ちになるのです。
アリィが持ってきていたスケッチブックを開きながら言いました。
「潮の香りって、なんだか懐かしい感じがしない?」
「ああ、懐かしい、そんな気もする。なんだかあったかいなって思ってたところ。」
「おかあさんが、海はおかあさんのお腹の中ににているのよっていってた。だからかなあ。」
「お母さんのおなかの中かあ。覚えてないなあ。ぼくは朝、太陽がでるときにうまれたんだって。」
「わたしはちょっとだけ、覚えてる。私に話しかけてたおかあさんの声。」
アリィは話しながらスケッチブックを広げ、絵を描きだしました。
アリィが集中し始めたので、セオナルドは、黙って海を見ていました。
かもめや海鳥たちが飛んでいます。
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