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8*バルアトルケのパンツ事情

バルアトルケものがたりⅡ*8

「おかあさん!ただいま~~~!」

元気なセオナルドの声に、

「おかえり。セオナルド、楽しかった?」

晩御飯の支度をしていたおかあさんは、言いながら振り返り、絶句しました。


セオナルドの格好ときたら!薄い茶色の髪の毛には、あちこちに葉っぱや、小枝がついています。顔も泥だらけ。

着ていた半袖のシャツも、ほこりっぽく、手を拭いた後がついています。

セオナルドの濃緑の目はエメラルドのようにキラキラと光って、どんなに楽しい時間をすごしたのか、一目でわかりました。

おかあさんはにっこりと笑っていいました。

「セオナルド、これは、もうおふろ決定ね!野菜を切り終わったら用意するから、そのまま待ってて。」

「ぼく、のどがかわいたよ~~。」

セオナルドがいいながら、前を通ってシンクへ行ったとき、ちらりと肌色の何かが見えた気がして、おかあさんは、野菜を切る手を止めました。


「セ~~オ~~~ナ~~~ルドッ!!!おしりが見えてるわ!」


あまりのかっこうに、おかあさんは、吹き出しました。

笑いすぎて包丁をもつのも危ないくらいです。

セオナルドも笑いながら言いました。

「今日、ピリルとそり遊びをしていたんだよ。そうしたらそりもだんだん破けてきて、ズボンにも穴が空いちゃったの。」


「だから言ってるでしょう?パンツも履かないとだめって。おとうさんがパンツを履かないのは、トルキを着るときだけなのよ。」

バルアトルケの国の正装は、男性はトルキ、というプリーツがたくさん入ったひざ丈の布を腰に巻いた格好です。昔は日常着で、胴回りを何回もするくらい長くつくり、よぶんなところを肩に回していました。遠くに行って夜をすごすときにもブランケット代わりに羽織って寒さをしのいでいたのです。トルキの下には何もはかないのが基本なのです。

セオナルドは、おとうさんがトルキの下に何も履いていないのを知って、それ以来、パンツを履かなくなっていたのです。


「うん、おかあさん、ぼく今度からズボンのしたにパンツを履くことにするよ。」



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