![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/8623411/rectangle_large_type_2_dee938f79db846bf3efca76b5e23b89e.jpg?width=800)
4*朝
バルアトルケものがたりⅤ*4
セオナルドのおかあさんの朝はとても早くはじまります。
居間の暖炉の火をおこしてから、お湯を沸かします。ティーポットに茶葉を入れてお湯が沸くまでの間、暖炉に手をかざし、朝ご飯になにをつくるのかゆっくりかんがえます。
ところが、今日はいつもと違いました。居間のテーブルにマグカップがひとつ、そしてマグカップのとなりにはティーナプキンが丸められて置かれているのを見つけたからです。
「あら。誰かもう起きてるのかしら?」
おかあさんはひとりごとをいいながら、ナプキンをたたもうとしました。ナプキンはしっとりと濡れています。
まるめられたナプキンの中を見ると小さくなった氷がでてきました。
セオナルドのおかあさんは、それを見て、すぐにセオナルドの寝室へいき、ノックをしました。セオナルドの返事がないので、ドアをそっと開けるとセオナルドはいませんでした。
朝の散歩にでも行ったのかしら?めずらしい。
首をかしげつつ、アリィとルシスの部屋をノックしました。すこしして、ドアが開きました。ルシスです。何も言わず、シィーっと静かにする合図をしています。おかあさんはうなずいて、そっと部屋の中に入りベッドに歩み寄りました。
アリィは気づかずに眠っています。アリィのひたいに手を当ててみると、熱があります。セオナルドのお母さんはルシスをみました。ルシスもお母さんを見てうなずいています。
アリィをおこさないように静かにふたりは部屋をでました。セオナルドのおかあさんは、やかんにみんなのためのお湯と、アリィの湯たんぽ用のお湯を大きなおなべに沸し始めました。
ルシスが言いました。
「昨日の夜中から、熱が出てるの。私の手で冷やしていたんだけど、すぐ温まってしまうから氷を使ったの」
「そうだったの。私を起こしてくれればよかったのに。ほとんど寝てないんじゃない?ソファーで休むか、もうすぐお父さんも起きてくるからベッドに横になる?」
「わたしはだいじょうぶ。ちょっとソファーで休むね。」
ルシスはソファーに横になり、丸くなりました。
セオナルドのお母さんは、お父さんとセオナルドのためのポリッジを用意し、紅茶をいれました。紅茶を蒸らしている間に、あたたかいレモネードを作り、湯たんぽのお湯が沸いたので湯たんぽと一緒にアリィの部屋にもっていきました。
セオナルドのおかあさんが入っていくと、アリィは目を覚ましました。
「アリィ。レモネードよ。飲める?」
セオナルドのお母さんの声にうなずき、アリィは起き上がりました。
アリィがレモネードを飲んでいる間に、おかあさんは掛け布団のうえのブランケットをなおし、アリィの足元に湯たんぽを滑り込ませました。
「ありがとう。レモネードおいしい。全部飲めないけど。」
アリィはマグカップをベッドサイドの机に置きました。
「ちょっと眠りなさい。 まだ熱があるから。」
アリィはうなずいて、ベッドにもぐりこみました。
セオナルドのお母さんは、部屋をそっとでていきました。
読んでいただき、ありがとうございます。 これからも楽しんでいただけるようにお届けしていきます!