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仕組みでイノベーションを生み出す:駄菓子屋を、大人が殺到するテーマパークに変える「パラメーター振り切り」発想法

子どもの頃に「10円風船ガムを箱買いしたい」「なかなか1等が当たらない駄菓子屋のくじ引きを全部引いてみたい」といった淡い夢を、誰しも一回は持ったことがあるはず(たぶん…)。

そんな夢を叶えてくれる施設があります。その名も「日本一の駄菓子売り場」。古今東西のあらゆる駄菓子を集めまくり、体育館2個分ぐらいの倉庫に、5000種類の駄菓子を集めた巨大テーマパークです。

岡山市郊外にある「日本一の駄菓子売り場」

駐車場250台を完備し、観光バスが毎日のように県外からやってくるこの駄菓子屋は、ありとあらゆる駄菓子を「箱買い(大人買い)」する夢を叶えてくれます。

ありとあらゆる駄菓子が勢揃い

先日、私もここを訪れて、ヨーグルトのようで、ヨーグルトではない謎の駄菓子「モロッコヨーグル」60個入を箱買いし、何十年来の夢を叶えてきました。

イノベーションを生むために「変数」に着目する

さて大ヒットしてるこの日本一の駄菓子屋の例に限らず、イノベーティブな商品やサービスを生み出す発想法のひとつに

「パラメーター(要素の変数)を極端に変える」

方法があります。これはGoldrattが提唱する3つのイノベーション発想法のうちの1つでもあるのですが、今回はそのやり方をご紹介します。

まず典型的な駄菓子屋の特徴を思い浮かべてみてください。

・自宅兼お店の狭い店内
・10~20円のガムやチョコの数々
・興味を引く謎のおもちゃ、くじ引き
・愛想の良い店主のおじいさん・おばあさん

などなど。これらは駄菓子屋を構成する要素の数々ですが、それらをピックアップして、プラス(増やす)とマイナス(減らす)に極端に変化させてみます。

・マイナス← →プラス
・1坪以下の狭小駄菓子屋← →巨大な駄菓子屋
・米粒のような小さい駄菓子← →巨大な駄菓子
・10円の得体のしれないおもちゃ← →100万円の高級ブランドおもちゃ
・無人販売 ← →高級ホテルのような接客

どうでしょう?例えば「狭小駄菓子屋」や「無人販売」からは、オフィスグリコの発想が生まれるかも知れません。

「お店が無人でも稼働する仕組み」と考えれば、ベンダーがお店(バイヤー)に代わって在庫管理をするVMI(Vendor Managed Inventory)も、この範疇に入るでしょう。具体的事例として、下記のオムロンヘルスケアの記事は参考になるはずです。

また「米粒のような小さい駄菓子」は、発展途上国のBOP(Bottom of Pyramid)層向けの小分けの洗剤や生活用品を開発するヒントになるかも知れません。

こうやって、大きさ、重さ、色、値段など、いろいろ属性を極端に変化させることで発想を生み出してみるのです。

シャワー付き温水乾燥便座をイノベーションする

ここで、練習問題として、シャワー付き温水乾燥便座のイノベーション案を考えてみましょう。どんなパラメーターをいじると、面白い便座ができそうでしょうか?




いろいろなパラメーターの中でも「乾燥機能」に注目するのはどうでしょうか?

シャワー付き便座の乾燥機能を使っている方は、なんとなくわかるかと思いますが、昔から便座の乾燥機能は、いまひとつ中途半端な乾き方しかしません。で、結局は面倒になって紙で拭いちゃうんですよね。

この乾燥機能のパラメーターを極端にプラスに振って、お尻が浮くほど超強力な温風が吹いてきて、シャワー後のお尻が10秒でさっぱり乾いたらどうか考えてみます。どんな価値がありそうですか?

まずトイレットペーパーの削減ができ、地球環境によさそうです。腰痛に悩む人、または高齢者にも良いかも知れません。

ということで、実際に、この超パワフル乾燥機能を実装したスーパー温水乾燥便座を作ってしまったのが、元大手トイレメーカー社員の中山裕司さんです。

ちなみに筆者のトイレには、まさに中山さん開発のWaterXの「xtrm(エクストリーム)」という最新便座がついているのですが、超絶パワフルな風がお尻に吹いてきて、本当に一気に乾燥してしまいます。

日本ではまだクラウドファンディングでテスト販売しただけですが、このWaterXは、日本というよりは中国での展開をねらっているそうです。というのは、中国ではトイレットペーパーをトイレに流せない建物がまだまだ多いからだそうです。

ちなみに世界中の人がトイレットペーパーを使うために、1年間で静岡県の面積に相当する森林が消費されているそうですから、これが半分になっただけでもSDGs的にもインパクトがあります。

WaterXの会社紹介資料より

マーケットが巨大なだけに、今後の展開が楽しみですね。

ご覧頂いたように、適切な

「思考の型(思考ツール)」

があれば、発想はどんどん生み出せます。みなさんも身の回りのものをピックアップして、極端にパラメーター変えた姿を妄想する思考実験してみてくださいね。

▼今回のおすすめ番組はこちら(3つの発想法がすべて分かります)

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TOC流ゼロからの起業イノベーション  ”思い込み”さえ解消すれば、すべてがうまくいく

「アイデアは制約ではない。アイデアをビジネスにすることに制約があるのだ」。いかに優れたアイデアがあっても、それをお金に出来ないとビジネスにはなりません。今回のTOCクラブのテーマは「TOC流ゼロからの起業イノベーション。“思い込み”さえ解消すれば、すべてがうまくいく」と題し、「資金ゼロ、顧客ゼロ、営業経験ゼロ」の逆境から、TOCの「思考プロセス」を駆使することで、シリコンバレーからの投資を獲得し、世の中が驚くような画期的なイノベーションを実現した事例をご講演頂きました。

起業して事業を立ち上げるためには、多くの障害があります。仕事が出来ると言われた優秀な人でも、サラリーマン時代の経験がほとんど通用しない様々な障害が次々と起きるスタートアップ企業の立ち上げの中で、世の中が驚くようなイノベーションのアイデアをいかに創り、実現にむけた障害の数々を「思考プロセス」で思い込みを覆すことで次々と解消し、世の中が驚く商品を実現したか、ナマナマしい事例を含めてお話いただきます。

もちろん、このプロセスの中で生まれた画期的な商品もご紹介します。このイノベーションが解消する問題は、個人のお悩みから地球環境の問題まで幅広いもので、日々使っている「商品」における「常識」を打ち破り、限界を突破するプロセスには多くの学びがあります。

執筆者プロフィール:若林計志 (Kazushi Wakabayashi) 
予備校のカリスマ講師のオンライン授業のあまりの面白さに大きなショックを受けて以来、下手な対面授業より、一流講師の動画授業の方が価値が高いことを確信。世の中の「つまらない授業」の撲滅を目指し、MBAをはじめ、世の中に役立つコンテンツのオンライン講座プロデュースをライフワークにしています。