第五十六景 マッチングアプリ大戦記 episode8
「8人目 Mさん アラサー ?似」
なんとこの人は、いいね500over だった。だからと言って、めちゃくちゃ美人という訳ではなく、ごく普通の人だった。ちょっと目が細い。そして同じバツイチだった。
数日は順調にやり取りをしていたが、いきなり放置されて、そのまた数日後に、相手から予定を合わせられそうとの連絡がきた。ほぼ年末だった。僕は長野県の上田市まで行くことにした。
上田には雰囲気の良いブックカフェがあったり、別所温泉があったり、上田城があったりで、好きな場所であった。なによりあの別所温泉までつながっている電車の雰囲気が良い。木の模様が独特だったような気がする。
車で2時間ほどの道のりだが、たまに小旅行で訪れるところだったので、距離は気にならなかった。日時が決まってから、それほど時間がなかったので、お店選びが適当になってしまったかもしれない。
相手のことも考えつつ、時間を無駄にしたくないので、自分が食べたいものを提案することが多い。その時はとんかつが食べたかったので、とんかつを提案し、あっさりOKをもらった。
予約を取ろうとしたが、予約席分は埋まってしまっていたので、開店ダッシュでどうにか席を取りに行くことにした。
500over の人と会うので、とにかくワクワクが止まらなかった。道中のことはよく覚えていない。ひとりきりでの2時間の道のりは、のどが痛くなるほど歌うことに没頭する。
待ち合わせの1時間前に到着する。余裕過ぎてなんでも出来る。もっと遅く移動すれば、時間を有効に使えるのかもしれないが、時間に間に合うかどうかを心配するよりは良い。
余裕過ぎてすることがないので、店の場所を確認し、近くのスーパーマーケットで暖を取りつつ、徘徊する。ツルヤというスーパーだった。クラフトビールにハマり始めたころだったので、ビール売り場を見ていると、あっという間に時間が過ぎていった。
時間になる。店の前には列は出来ていなかったので、余裕で入れそうだった。彼女がきたようだ。分かってはいたが、目が細めだった。それにLine の名前が偽名だったため、信用は地に落ちた。謎に警戒心が強い。
国産と外国産が選べたが、せっかくなので国産のロースかつ定食を頼むことにした。他愛のない話をしていると、ほどなく料理が運ばれてきた。普通に美味そうだった。
付け合わせにキャベツがあるが、それを完食してから、肉に取り掛かるスタイルなので、不思議そうに見られた。一度結婚したこともあり、距離感の取り方が上手だった。
結構グイグイ質問されて、しどろもどろしていただけだった。それより目の前のご飯に集中したかった。僕にはそういうところがあり、何かをしながら話すということが、とても難しい。
食事も終盤に差し掛かり、彼女の皿を見ると、見事に脂身だけ残していた。悲しく思った。自分の食べることが出来ないものは頼んで欲しくないし、もし頼むなら、苦手なものは僕に食べさせて欲しい。
初対面でも、別にそういうことには抵抗はない。とにかく彼女の苦手な料理を出す店をチョイスしてしまったことがショックだった。お互いのために、最初から教えて欲しかったとも思った。
お店を出たあとは、上田城を見て回ったり、街並みを楽しみながら歩いた。話の途中でカラオケが好きということも知ったが、次があるかは微妙だった。
30分くらい歩き、解散した。僕はツルヤに戻り、オラホビールを買い込み、帰路に就いた。
そのあと、登り初めで上田市の太郎山に登るために、天気のことを尋ねたきり、放置していたら、いつの間にかブロックされていた。今後連絡を取っても、会うことはなかったからちょうど良かった。
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