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第七十景 マッチングアプリ大戦記 episode11-4

対面よりは聞き取りやすいと思ったのも束の間、僕の隣の席に腕に入った墨を見せつけるような男と普通の男が入ってきた。常連らしく、店の人に態度がデカく空気が読めない酷いやつだった。自分の家のようにふるまい、大声で隣の普通の男と話すので、僕も声を張り上げなくてはいけなくなった。

ぬるくなった刺身を食べ、ビールを飲みほした。彼女は数センチ飲み物を残すタイプの人だったが、ビールが苦手なのにも関わらず、僕の好きなビールを買って飲むなど、相手の好きなものを試そうとする良い女性でもあった。

だんだんと隣の男が不快になってきたのと、彼女の電車の時間が来たので、店を出ることにした。駅まで送る途中は特になにも無かった。改札で振り返りながら帰る彼女が姿を目に焼き付けた。

飲み足りなかったのと、食べたりなかったので、ビアバーに寄った。ニューベルジャンのサワーIPAと〆で食べようと思った冷たいジェノベーゼを頼んだ。

近くのカウンターに座っていたおばさんが、僕をカウンターの隣に座らせようと話しかけてきた。隣に座ると長くなりそうだったし、長居するつもりも無かったので、適当にあしらってしまった。

満腹になりいい気分だったので、コンビニでねっとりとしたメロンバーとウコンの力を買い、歩き出した。アイスはその場で開け、歌いながらかじって食べた。

3回目のアポは映画を見て、お好み焼きを食べることに決まった。2週間先であったが、電話でコミュニケーションを取るのを欠かさなかった。

その1週前に電話をしていた。彼女からかかってきた電話だった。いつものように、普通に会話をしていたが、彼女は突然用事が出来たと言い、電話を切った。

その後、LINEも来ず心配していたら、アプリが退会表示になっていた。ブロックされたのか、退会したのかは分からなかった。しばらく放置していたが、連絡が一向に来なかったので、約束の3日前にリマインドの連絡を入れた。

よく分からないが、「行けない」とだけ返ってきた。食い下がらずに、分かったとだけ、返信した。知らないうちにブロックされていた。理由は分からないが、理想とは違ったのだろう。

処女ということで、特別視し過ぎていたのかもしれない。再開したアプリでは彼女をよく見る。彼女の理想に合う人がいれば良いと思う。

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