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読書録:アーティスト思考 by 松永エリックさん

私のマルチ商法課題解決に関するアドバイスをいただいたこともある松永エリック・匡史さん。

この度出版された本を拝読しました。

VUCAの時代、MBAを取得して得られるものが果たして通じるのか。「自分だけのビジネス思考法を自ら見つけることの大切さと、見つけるための手がかり」を伝えるために書かれたという本著。

デザイン思考・アート思考・アーティスト思考

MBAなどで教えられる論理的思考、クリティカルシンキングなどからデザイン思考へ、という話はよくありますが、その先のアーティスト思考について学べる本著。各思考をこのようにまとめられています。

  • デザイン思考=第三者の課題解決のためのもの(⇔アート=一人称の自分の想いを追求する)

  • アート思考=芸術作品のメッセージの解釈を客観的に検討する

  • アーティスト思考=アーティストが作品を創り出す主観的なプロセス

デザイン思考の最大の特徴は共感。ヒアリングして課題を発見していく過程において、共感の度合い・態度の度合いによって得られる情報の質や量が異なるからこそ共感が重要です。ただ、課題解決型の思考も超えていく必要アあるのではとの意見提起から本書は始まります。

デジタルネイティブの特徴と必要な思考

小さなころからスマホなどが身近にある90年代後半以降の世代。
信頼性の低いネット情報などによる意思決定の偏り、コンテンツの無料提供に慣れてしまった結果のコンテンツの品質低下や個人情報の濫用。広告モデルの氾濫。ざっとまとめると非常に納得がいきます。

話は反れますが上記デジタルネイティブの特徴については、マルチ商法(MLM)業界では特に顕著でしょうか。まだまだねずみ講ではなく合法のビジネス、みたいな話ばかりをコンテンツ化するMLM会員。個々人がYouTuberなどのインフルエンサーに相談し、行政機関に情報が集まらずに課題解決が進まない。Xを見ていてもすごく情報の取り扱いについて課題認識を持ちます。

こうした中で必要な思考として、直感・共感・官能(=心地よさ)をキーワードとして挙げています。直感や心地よさを私は特に意識していきたいです。

・直感:新たなアイデアやソリューションの創出において、知識や経験に依存せず、創造性や洞察を活かす能力
・共感ユーザーのニーズや感情を理解し、それに合致したソリューションを発想・提供する能力。デザイン思考における共感と同じもの。
・官能:感触、視覚、音、香り、味の五感を通じた体験のこと。製品やサービスとユーザーの精神的な結びつきを醸成し、強めてくれる要素。

Artist Thinking P66より抜粋

イノベーションを起こすためのアクション

他の人から盗む

偉大な芸術家も盗んでいる、という事例の紹介がありました。他の作品、ビジネスの場合はアイデア、他者のプレゼンなどから盗む。感動など、喜怒哀楽を引き起こすようなポイントを探していく。

時間の流れを捉える

私自身芸術に疎かったのですが、ピカソの絵の解説(p115)が端的で分かりやすかったです。時間の流れを表現した例として紹介されていました。これは普段本業で戦略を考えるときに軸を悩んでいるポイントの1つでもありました。

お金にならないものをビジネスチャンスにするには

知ってもらう、流通させることに加えて大事なのは「標準化」。そのためにも、いかに魅力的なサービスにすることができるのか、どうすればより多くの人に届けられるかを考え続けることが重要です。

ではどうすれば良いか。
アーティストは感性に基づき表現すると思われがちですが、全くもってそんなことはなく、
コンサル・アーティストもそれぞれ同様で、暗黙知化と形式知化の繰り返しが重要とのことでした。

(暗黙知化)非言語のものを経験で体得し、感じたものを感じるままに表現する
→(形式知化)それを言語化する
→(暗黙知化)言葉で説明できるものを経験で体得

Artist Thinking p153より抜粋

これらを現在のマルチ課題解決に当てはめると、まさにインタビューを通して考えた会員親族の苦しみを言語化し、それらを踏まえてまたインタビューを通して経験として得る。標準化して他の業界でも使えるようにする取り組みは意味のあることだと考えます。

いきなり異なる分野とはいきませんが、宗教2世問題、その前の旧統一教会の問題も、元を辿れば西田公昭先生の論文がきっかけでした。
今私が様々な研究者のお手伝いをしているのは、インタビューを経て得た暗黙知を多くの人に知ってもらうために、形式知化しようとしているのだと思います。

音楽はイノベーションの連続

話はそこからジャズの進化の歴史について触れられていきます。(P160付近)

プレイヤー自身の承認欲求や大衆の意向による変化こそあれど、時代を映しています。ジャズのルーツであるブルースの根底には、黒人差別に対する負の感情がありました。

そして、時代ごとに多様な人たちとコラボしイノベーションを起こす事例を解説されています。

それぞれのアーティストが、標準化のような大衆に広がる流れと、それに抗って考え抜いて、イノベーションを生み出し、今に至っているのだと実感します。

社会課題への意識の必要性

イノベーションを起こすには社会課題意識がなければなりません

Artist Thinking p223より抜粋

音楽の歴史とイノベーションについて触れられた後、話は社会課題への意識の重要性について話がされていました。社会課題への意識をもつキーワードは「痛み」

もっとも重要なのは、実際に行動することによって持続的なコミットメントと忍耐力を保つことです。社会課題の解決には時間がかかることがありますが、継続的な取り組みが変革を実現します。

Artist Thinking p229より抜粋

この一節に改めて背中を押されます。以前エリックさんに私の話を聞いていただいたとき、すぐさま私の感じる痛みを理解いただき、多角的な視野の必要性と、継続的な対応の必要性、そして、すぐにやったら良い、と当時考えていた行動を後押ししてもらいました。

少しでも、継続的に活動することで、少しずつ変化が見られてきたことを実感しています。

おわりに

1つ1つの文章が流れるように、とても読みやすい本でした。

そして、アーティスト思考、と言う本のタイトルからは想像できない展開でした。

音楽の詳細な歴史や、ジャンルの違いは私には正直馴染みがない内容でしたが、音楽は常にイノベーションの連続であり、その背景には社会への負の感情、個人としての憤りなど、様々な思いがあり、それをその時その時の今は偉大と評されるアーティストが打ち破ってきたことを知れたのは、とてもありがたかったですし勇気をもらいました。

苦しくなることがあっても、過去の偉人の戦いに想いを馳せ、仲間とコミュニケーションを取り、乗り越えようと思います。

イノベーションを起こし続けて、エリックさんへ報告し続けられるよう、頑張ろうと思います。

ありがとうございました!

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