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子ども好きじゃない私が保育士になって愛を知る話。

「いいお母さんになれそう」
「幼稚園の先生とか向いてそう」
温厚な私が昔から友達によく言われた言葉。

私は別に子どもの好きでもなんでもないし、近所に小さい友達がいるわけでもなければ、兄弟はいるが、歳は近い。

進路で迷った時に『なにか資格だけ欲しい』と思った私が、その友人の言葉に背中を押され保育の世界に飛び込んだだけ。

専門学校に入ってしばらくは、周りとのギャップに戸惑った。なぜならみんな『子どもが大好き』だからだ。
スマホに入ってる、他人の子どもの写真をかわいいかわいいと言う。正直わからなかった。
無理矢理あわせて「かわいい」と言っていたが、感情はそこになかったと思う。

しかし、実際現場に行くと少し違った。
私が就職した先の同期は皆、『そんなに子どもが好きでなったわけじゃない』『進路に迷ってとりあえず』という人だった。もちろん、昔から子どもが大好きな人や、先生に憧れてなった人もいる。
だが、この仕事は『好きだけじゃできない仕事』なのである。

短大や、専門学校に行くと2年で知識を詰め込むため、大変忙しい。
子どもの特性、遊び、法律などを学び、そして未経験者は1番苦労するのがピアノ。
更に、寝る暇など無い実習がある。

そして、この中で1番挫折していくのが実習である。

毎日朝から夕方まで、勤務と同じように実習をし、帰ってから実習記録にまとめ、実習で行う指導案を書く。
正直寝る暇はほぼなかった。
皆口を揃えて、「午睡中意識飛ばす」と言う。
寝不足だ。

だが、園の先生方を見ていると、自分より早く園に来て、自分たちが帰る時もまだみんな仕事している。指導案だけじゃない書類仕事が先生方にはあることも習った。いつ事務仕事してんの?保育の準備っていつしてんの?この実習記録以上にしなきゃいけないことがあるの?
それに気付いて挫折した人は多かった。
これが現実である。

こうして子ども好きからのギャップで「好きだけじゃだめなんだ」と辞める人がいる一方、そうでもなかった人は、実習で子どもの可愛さを知ることとなる。

『せんせーすき!』と透明すぎる目で言われると好きにならない訳がなかった。
何かすると、純粋に反応してくれる。子どもたちの動きや反応は、これまで関わったことのなかった私にとっては新鮮で面白かった。

実習は2週間位が多い。せっかく関係が出来てきたところでお別れなのだ。
が、就職すればずっと一緒。毎日一緒。
子どもの成長をダイレクトに見ることが出来る。

就職して何もわからずパニック状態の私だったが、子どもにたくさん教えてもらって一緒に成長していく、人と関わる仕事の醍醐味を感じられる。

嫌いな食べ物を食べてもらうにはどうしたらいいかに頭を悩ませて、自分のせいだと落ち込んだり、人見知りがすごくお昼寝せず永遠に泣く子どもを何時間もずっと抱いていたり、まだまだ赤ちゃんだった担当の子どもが、名前を呼んでくれたその日は、勤務中でありながら半泣きで嬉しかったのを覚えている。

その時にふと、実習中に『保育士の魅力ってなんですか?』と先輩の先生方に聞いた時口を揃えて、『やりがい』と答えたことを思い出した。

子どもと一緒に、遊んで、喜んで、怒って、抱きしめて、悩んで、泣いて、距離をおきたくなったり、守らなきゃって思って、この子たちの楽しめることは何か考えて、喜んでくれるかなって思って、

今は辞めてしまったが、あの時私は間違いなく子どもたちを愛していたと言える。
子どもが好きでも何でもなかった私が。
家族以外で、愛を知ったのはこれが初めてだっだと思う。

で仕事をするって素敵だったと思う。


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