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ストーリオブマイライフとラファエロ

こんにちは。今回は公開中の映画「ストーリオブマイライフ/私の若草物語」について書いていきたいと思います。いやー久しぶりに映画館でみたんですけど、やっぱり終始集中できて最高です。家でストリーミング映画を観ると、劇中に登場する知らない単語や気になったことをすぐ調べてしまう癖があって、いいシーンを見逃しがちなんですよね。映画館という場所の偉大さを再認識いたしました。

で今回は、グレタ・ガーウィグ(発音しづらい)監督の2作目となる作品「ストーリーオブマイライフ」。ご存知の方も多いと思いますが、これは「little women」という古典作品が題材とされていて、150年前にかかれたものなんですけど、今までに7回以上映画化されている、名作of名作ですね!僕もこの映画をみた後にジャネットリーが出演している49年バージョンを拝見しました。正直、、今回の方がよかったです笑 やっぱりそれぞれの時代で解釈の仕方や女性の描かれ方がちがっていて、今回の映画では昨今のフェミニズム運動の反映もされていたような描きかたでした。なので、すんなり内容が入ってきたのか今回の方がベターでした。

ここから先ネタバレ注意です!!

といっても個人的には映画を観る際に「ネタバレ」という概念が謎すぎて、毛嫌いをする人を理解できませんが、一応新作なので内容をしりたくない方はこれから先はご遠慮ください。

というかネタバレっていう概念は映画の内容にしか面白みを感じないからこそでてくる考えですよね。なんかそれだけに映画という形式を当てはめてしまうのはすごく勿体無いきが、、。ストーリテリング、作家性またはミザンセーヌを意識するとさらに映画がおもしろくなりますよ!って言いたいけどほんとにおもしろい映画ってどのレイヤーからでも楽しめる映画だからなんとも言えない。パラサイトとか、、

まず、今回の映画をみていてすごく感じたのが、「芸術のような映画」であるということです。この映画はキャラクターの表情や19世紀のアメリカの風景、雰囲気をこれでもかというくらいリアルに描写していて、その1つ1つのシーンがうっとりするくらい綺麗なんですよ。例えば、シークエンスごとにそれがどのような場所、環境で起きているのかを説明するように、毎回ロングショット(引きのショット)が挿入されます。そのロングショットがいちいち17世紀のオランダの風景画のような哀愁を放っているんですよ。空と大地の配置とか、あとは季節を表す紅葉だったり、雪景色だったりを絵的な美しさで捉えたショットが頻繁にでてきます。さらに、マーチ家の姉妹、お母さんがお互いに肩や頬を寄せるシーンが多く登場するのですが、そのショットがルネサンス期のラファエロやボッティチェリが描いた聖母マリアを彷彿させる神秘的なものになっているんですよ。例えばこのショット。

すとり

この角度だとすごくわかりにくのですが、実際の作中では暖炉をバックに父から届いた手紙を読むシーンで四人の姉妹と母親が綺麗な三角形に映るシーンがあるんです。このピラミッド型の配置はルネサンス期にキリストや聖母を題材とした絵によく使われた構成になってます。

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これはラフォエロの「ヒワの聖母」という絵ですが、聖母マリアとイエスとヨハネの構造がピラミッドになってますよね。なんとなく笑。なんでガーウィグがこの形式を使用したかというとこの物語の設定として、彼女たちの母親は敬虔なピューリタンなんです。実際、クリスマスの朝食を困窮している隣人に恵むシーンがあったりと。そういった聖人的なニュアンスをサブリミナルに映画に組み込んでると思います。あと、四女のエイミーが作中で「私はラファエロにはなれないの」となげいているシーンもあることからおそらく意識的につくりだした構造ではないかと思います。

もう一点この映画の面白かったポイントはその終わり方です。49年版の「若草物語」では最後、ジョーが教授と雨の中、傘の下でキスをして終わります。しかし今回の映画では、「若草物語」の著者ルイーザ・メイ・オルコットが編集部と折り合いをつけるために最後は結婚するシーンにするといった描写があるのです。つまり、この映画は「若草物語」とその著者であるオルコット自身のストーリーを組み合わせたものになっているんです。なので、ニュアンスとしてはジョーは仕方なく、最後の結婚という結末になったことを示唆しています。これはガーウィグなりの解釈だったのではないでしょうか?彼女は若草物語を読んだときにその物語で完結することなく著者のオルコットについても考えて、独身であるオルコットはもしかしたらこんな心情だったのではないかと考察した、それが今回の映画の要諦となった。やっぱり、芸術や文学を真に理解するにはその作家性や時代背景を考えることが大事なんですね〜。

しかも今回僕がこの映画の主人公ジョーをみて思ったことは「彼女はもしやレズビアンなのではないか?」です。誤解を与えてしまうような表現になってしまったら申し訳ないのですが、ジョーがローリーに告白されるシーンで気になったセリフがありました。それは「私は愛そうと努力したけど、あなたを愛せなかった。」これは49年版には存在しないセリフでした。49年版には「私はあなたにはもったいないわ」という理由でローリーをふっていました。たしかに、物語の設定上ボーイッシュなジョーをレズビアンとしてしまうのは安直な考えですが、なぜかそう見えてしまうのでこれは二回目みた時の宿題にしておきます。

兎にも角にも、「ストーリーオブマイライフ」最高でした!今だからこそ観るべき映画であると思います。フェミニズムやシスターフッドが前景化しすぎてないからこそ気づかされることもありますし、ディレクションしたガーウィグやキャスティングも完璧でした。しかもガーウィグのパートナーは昨年「マリッジストーリー」で有名になったノアバームバックって、どんな夫婦だよ!ってツッコミたくなるようなコンテクストもあって笑 

長文になってしまいましたが、最後まで読んでいただきありがとうございました。今後はトレンディーな映画をどんどん考察できたらと思います!!

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