ベジェリン×H&Mを始め、ファッションシーンでアイコン化するアスリート達| The influencing role of footballers has evolved during the pandemic.
この『SOCIAL ATHLETE MAGAZINE』では、ピッチ上に留まらず、社会というフィールドで活躍するアスリートの海外記事を和訳する形で、その取組みと思想を紹介していきます。
第2弾は、前回に続きアーセナル所属のスペイン代表サイドバック・ベジェリン(Hector Bellerin)。スポーツ界のみならずファッション業界やソーシャル文脈でも広く話題になったベジェリンとH&Mのコラボレーション「Edition by Héctor Bellerín | H&M」を中心に、ファッション業界で影響力を持ち始めたアスリートに関する英/Guardian紙の記事をお届けします。
Introduction
「僕がサッカー以外のことに取り組もうとする時、サッカーはその障壁になってしまっていた」とベジェリンが語るように、アスリートは競技以外で自己表現をしようとした時に各方面からバッシングを受けがちではある一方、コロナ禍でアスリートは世間からこれまで以上に多くの役割を求められるようになった側面もあります。
特に、今回のテーマでもあるファッションシーンの中でアスリートが影響力を持ち始めたことは非常に印象的です。この記事には書いていませんが、ファッションブランドが果たすべき社会的責任と新規層へのリーチの両方を実現する新しいファッションアイコンとして、Z世代のトップアスリートに続々と白羽の矢が立っているのだと感じます。
また、アスリートがブランドステートメントを受動的に言わされている訳ではなく、むしろアスリートが表現したいことをブランドが代弁し、広く世の中に届ける構図になっていることも大きな転換点です。
2年半前に書いた記事にはなりますが、Facebookのスポーツマーケティング担当の方が話していた「コミュニティスポンサーシップ」がコロナ禍で一層注目され始めているのだなと感じています。
コミュニティースポンサーシップ
既にアスリートとファンがSNSで直接つながっており、ピッチ外の生活や独自の哲学はファンに浸透している。ここにどう企業が関わっていくのか。
選手が掲げる理念や哲学、ピッチ内外での行動と、企業のブランドメッセージを親和させていくことが重要。アスリート本人の物語と親和するブランドコミュニケーションは非常に大きな支持を生むことが分かっており、選手のパーソナリティーと企業ブランドがシンクロする部分を探して、世の中に対して訴求していくことが求められる。
アスリートは皆ピッチ上でパフォーマンスを追求し続ける競技者であり、それが揺らぐことはありません。但し、彼らが伝えたいメッセージや信念を持ち、それを望むのであればピッチ外で世間から求められる役割は増え続けていくのでしょう。
それでは、記事内容をどうぞ!
ヘクター・ベジェリン、サッカーの新しいファッションインフルエンサーチームの一員に。
古くはジョージ・ベストやデビッド・ベッカム、最近ではミーガン・ラピノーやヘクター・ベジェリンなど、サッカー選手とファッションは近年とても良い関係を築いてきた。
一昔前のサッカー選手は彼ら自身が着ている服を流行させていたが、現代で求められるものはよりサステナブルで、且つ世間に対する誠実さが必要とされている。
ヘクター・ベジェリンは木曜日にH&Mとのサステナビリテイーコレクションを発表するなど、近年ファッションブランドと連携している選手の1人だが、実際そこには企業の社会的責任の観点が垣間見える。
パーカーやシャツ、ブレザー等、原材料にオーガニックコットンをはじめ、廃棄後は土の中で分解されるテンセル、再利用ポリエステルを用いて作られた彼のコレクションは、ファストファッション全盛の中でより環境に配慮した商品として非常に際立っており、その点で高級ストリートブランドと著名人のコラボレーションの中でも珍しい例となっている。
「100%サステナブルなブランドなんて存在しない。」
ビーガンでもあるベジェリンはそのように認める一方で、可能な限り100%に近づけることの重要性を強調する。
コレクションを宣伝するための質問に対して、ベジェリンは
「僕にとって他の選択肢は存在しない。服やファッションを通じた活動もまた、環境破壊に対する抗議であり、僕らが正しい方向に進むための方法のひとつなんだ。」と話す。
ベジェリンとH&Mのコラボレーションは、恵まれない若者の救済を行う活動の一環で11月にバーバリーと連携したマルコス・ラッシュフォードや、2020年のLOEWEの表紙に起用されたアメリカ女子代表キャプテンでLGBTQの権威でもあるラピノーの流れを汲んだ動きでもある。ラピノーはこの起用について「"社会の中で抑圧されていると感じる"女性スポーツ選手に、この役割にチャレンジする機会が与えられたことを嬉しく思っています」とCNNのインタビューで語っている。
オランダ代表のメンフィス・デパイもまたイタリアのラグジュアリーブランドValentinoと雑誌Gafferでコラボレーションし、彼はそのインタビューの中でソーシャルメディアの悪影響について問題提起をしている。
影響力を持ったサッカー選手の役割はパンデミック中に更に拡張し、併せて彼らのファッションシーンにおける影響力もまた拡がっていくことになった。
Gaffar社およびサッカー選手と頻繁に仕事をする代理店False9社の共同創業者ジョーダン・ワイズは「昨年は戦略を考える時間が多く、新しい才能の起用も含め異なるアプローチをブランドは模索していた。」と話している。
ワイズは「サッカー選手からすると、トレーニングと試合の時間以外は家で過ごす自由な時間が沢山ある。」と言います。ベジェリンのH&Mとのコラボレーションを可能にするのも、その自由な時間の多さによるものです。
ベジェリンを担当しているスポーツマーケティング会社B-Engagedの創業者アーセン・シャーは「彼には、スウェーデンのデザインチームとzoomでミーテイングする時間は十分にあった。ベジェリンは一人暮らしだし、他にやらなきゃいけないこともそこまで多くはないんだ。」と話しました。
「逆説的だけど、サッカーはサッカー選手にとってスポーツの外の世界で自分の声を見つける障壁にもなっていた。」とベジェリンは考えていて、彼がファッションショーに出演し始めた頃にファッション業界から受けた「商業的に目立つ為に、ベジェリンは戦略的に服を着ている」といった類の大バッシングも記憶に新しい。
「ファッション業界がサッカー選手を真剣に受け止めるには、まだまだ長い道のりがあります。」と、今なおベジェリンは語ります。
しかし、ベジェリンらの世代のスポーツ選手が大きな影響力を持ちたいと望んでいる理由はいくつかあると考える。
「この世代はかつての時代のサッカー選手と比べてより表現的で、最近のアスリートやミュージシャンは彼らの専門領域以外にも興味を持っている。そしてサッカー選手はファッションの側面で徐々に自分自身を表現するようになってきている。」とワイズは言う。
ラッシュフォードやベジェリンのようなZ世代のサッカー選手は、これまでにはなかった手法で世の中に語りかける。
ワイズはデパイを良い例に挙げ「彼はスポーツよりもむしろ大きな特徴を持っている。最近彼は音楽のファーストアルバムをリリースしたばかりだが、アーティストとしての彼の功績に既に熱烈なフォロワーが集まっている。」と説明した。
そして、サッカー選手のSNSフォロワーはハリウッドの俳優やポップスターと匹敵しうる数だ。
ベジェリンのInstagramにおける300万フォロワーはモーガン・フリーマンやジョン・トラボルタと比較され、ラッシュフォードのTwitterにおける400万フォロワーは、プラットフォーム上では英国大統領のボリス・ジョンソンよりも権威性を持つ。
一昔前のサッカー選手はサッカー以外のことについて多くを語りたがらず、彼らがもしスポーツ紙面以外に掲載されるとしたら派手なスポーツカーかナイトクラブに入っていくところくらいのものだったが、新世代の多くの選手は既にSNSを通じて彼ら自身のパーソナリティーのより深い部分までファンに知られている。
「選手にとってマスコミは厄介な存在でもありました。でも今は、選手がよりファンと直接的に繋がっていますね。」とシャーは言う。
この情報伝達の変化は、サッカー選手達が自分たちの興味関心や社会課題を世の中に表現するチャンスを与えたのです。
fin.
著書『アスリートのためのソーシャルメディア活用術』http://urx.red/Fh0w|Revive Inc. PR manager◁電通ライブ◁電通テック◁東京学芸大学蹴球部 学連/全日本大学サッカー選抜主務|スポーツ×キャリアのNPO法人izm 代表理事|日本に40人の苗字、ゴカツデです。
いつも読んでいただきありがとうござます:)