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宅建士試験合格講座 建築基準法 > 単体規定

第3節 単体規定

■ 1 居室の採光

(1) 居室と照明
 
人は、まったく明かりのない状態で生活することはできません。そのため、従来は居室には必ず自然採光を得るための開口部(窓)を設けることが要求されていました。
 しかし、現在では照明設備の技術も進歩し、従来のように常に自然採光が得られることまでは要求されていません。居室であっても事務所や店舗の用途に使用する室については自然採光がまったく得られなくても人工照明だけで構わないとされています。
 ただし、建築基準法は、建築物の用途によっては人工照明ではなく、自然照明が得られる構造であることを要求しているものがあります。 

(2) 採光上必要な開口部
 
自然採光を得るためには、その室に採光上有効な開口部がなければなりません。開口部にも様々あり、建築物の南東側にある、空き地に面した窓もあれば、隣接するビルがすぐ側にあってほとんど自然採光が得られない窓もあります。
 つまり、開口部があればそれでよいというのではなく、その開口部の大きさと、その建築物が所在する用途地域や窓の位置によって決まる採光補正係数によって、有効な開口部かどうかを判断します。
 また、室の用途によって必要とされる自然採光の重要性・必要性も異なります。

(3) 居室の採光
 
居住のための居室、学校の教室、病院の病室等の一定の居室には、地階に設ける場合などを除き、採光のための窓その他の開口部を設け、その採光に有効な部分の面積は、その居室の床面積に対して、居室の種類に応じ、下記の割合以上としなければなりません。


■ 2 居室の換気

(1) 居室の換気
 
室内の空気を入れ替えることを換気といいます。まったく換気のない部屋では人間は生活することができません。また、有効な換気を行うことによって室内の不要な湿気を排出する必要もあります。さらに現在では建築材料や家具の材料としてさまざまな化学物質が使用されており、人体に有害なものもあるので、これらの化学物質の排出という視点でも換気は必要です。
 そこで、建築基準法は、一定の場合を除き、居室には換気のための窓その他の開口部を設けることを義務付けています。

一定の技術的基準に従って換気設備を設けた場合を除き、居室には換気のための窓その他の開口部を設け、その換気に有効な部分の面積は、その居室の床面積に対して、20分の1以上としなければならない。 

(2) 換気設備が必要な場合
 
採光と同じように、窓があれば一応の換気が図られるが、窓の配置によっては近隣の建物との関係などで有効な換気ができない場合もあります。このような場合には、機械によって強制的に換気を行う必要が生じます。
 建築基準法は一定の場合には、そのための設備(換気設備)を設置することを義務付けています。 

(3) 換気方式
 
換気方式には、大きく分けて自然換気と、機械によって強制的に換気を行う機械換気の2つがあります。また、機械換気はさらに3種類の方式に分類されます。

① 自然換気
 自然換気とは、室内と室外の温度差や風圧を利用するものです。単に窓を開放するような場合が自然換気です。

② 機械換気
 機械換気には次の3種類があります。

1. 第一種機械換気・・・給気も排気も機械によって行う方式
2. 第二種機械換気・・・給気は機械によって行い、排気は自然換気によって行う方式
3. 第三種機械換気・・・給気を自然換気によって行い、排気を機械換気によって行う方式。この方式は台所の換気方式として一般に行われている。


■ 3 石綿その他の物質の飛散または発散に対する衛生上の措置

 建築物は、石綿その他の物質の建築材料からの飛散または発散による衛生上の支障がないよう、次に掲げる基準に適合するものとしなければなりません。

① 建築材料に石綿その他の著しく衛生上有害なものとして政令で定める物質(石綿等)を添加しないこと。
② 石綿等をあらかじめ添加した建築材料(石綿等を飛散または発散させるおそれがないものとして国土交通大臣が定めたものまたは国土交通大臣の認定を受けたものを除く)を使用しないこと。
③ 居室を有する建築物にあっては、上記①②のほか、石綿等以外の物質でその居室内において衛生上の支障を生ずるおそれがあるものとして政令で定める物質の区分に応じ、建築材料および換気設備について政令で定める技術的基準に適合すること。

1. 「石綿その他の著しく衛生上有害なものとして政令で定める物質(石綿等)」は、石綿のみである。
2. 「石綿等以外の物質でその居室内において衛生上の支障を生ずるおそれがあるものとして政令で定める物質」は、クロルピリホスおよびホルムアルデヒドである。
3. ホルムアルデヒドを発散させる建築材料〔=ホルムアルデヒド発散建築材料〕は、ホルムアルデヒドの発散量の多い順に、第1種→第2種→第3種の3つに分類され、居室の内装の仕上げには、第1種ホルムアルデヒド発散建築材料を使用することが認められておらず、第2種ホルムアルデヒド発散建築材料および第3種ホルムアルデヒド発散建築材料を使用することができるが、使用面積が制限されている。

(1) 石綿問題への対処
 建築基準法では、石綿の使用が規制されています。吹付け石綿など、石綿を飛散させる危険性があるものについては、建築物の利用者に健康被害を生ずるおそれがあることが判明したからです。

(2) 化学物質とシックハウス症候群
 シックハウス症候群とは、建築物の建築の際に使用される塗料や接着剤などに含まれる化学物質が発散し、それらの物質に触れたり吸い込んだりした人が目の痛みや吐き気、めまい、頭痛、嘔吐などの症状を訴えるものです。
 シックハウス症候群の原因は建築材料や家具に使用された塗料や接着剤に含まれるこれら化学物質とされているが、それに加えて最近の住宅の気密性の高さや換気の不足等もあげられています。

(3) シックハウス症候群対策
 シックハウス症候群対策として規制対象とされる化学物質は、当面はシロアリ防除などに使用されるクロルピリホスと、防腐剤等として使用されるホルムアルデヒドの2種類とされています。

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